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二話のつづき4




 ちょっとやり過ぎたかな……?

 なんかガイドアナウンスも、スゴくドン引きしてた感じの声音だった気がする。

 まぁ、チュートリアル戦闘で『武器を使わない』ってヤツは、あんまり見ないよな~。殴りたきゃ、ジョブを『格闘家』にしろって話だし。

 剣を使わない『剣士』って……どうなのさ。


 まぁ、敵の先入観や予測をぶっ壊すのも立派な戦術だし、……コレはコレでいいよね♪


「さてと、チュートリアルは終わったし……、あとはこのオープニングムービーとやらを見れば、晴れて自由の身か」


 場所は変わらず先程の草原。

 そこで体操座りして今後の予定を確認する。

 メニュー画面は開けないので、脳内で覚えている限りの情報で考えるしかない。


 それもこれも……


《……NOW LOADING……》


 かれこれ、30分以上もこの暗転画面に角張った字体で書かれた白の英字10個。

 この馬鹿デカいディスプレイの『読込中』とやらに……オレの貴重な30分が……無駄に潰されたのである。しかも、現在進行形で潰され続けているのである……。


「ふざけんなぁああああっ!! たかが数分程度のオープニングムービーのために何時間潰す気だボケェ! コッチはメニュー開けねぇからログアウトも出来ねえし、フルダイブゲームだから主電源ブチることも出来ねぇんだぞ!! なんだ、ちまたで流行りの『MMOデスゲーム』のつもりか!? オレをこのまま暇死させる気か? せめて、敵ギミックの配置ぐらいしやがれよおぉおおお!! 一昔前のレトロゲーでもココまで酷くないぞっ!!」


 そりゃ、叫びたくもなる。

 というか、オレが3年前にやってた時はオープニングムービーなんて無かったじゃねえか!

 なんだよ、アニメ化でも目指してんのか? オープニングなんてあろうがなかろうが、この手のゲームには関係ないだろ!

 つか、オープニング制作費に無駄な金使ってる暇があったら、もうちょいゲーム設定を見直すとか……。


 いや、まぁ……自称『完成されたゲーム』なんじゃ……仕方ないのかね?


「……あぁ、飽きた。クソゲーだクソゲー。やってらんねぇ……」


 だいたい、オープニングって何見せる気なんだよ……。このゲーム、ヒロインとか主人公とかないじゃん。どデカい城にお姫様NPCはいた気がするけど、普段から話せるようなキャラじゃないし……。

 みんなに馴染み深いキャラっていったら……教会の通称『髭モジャ神父』か、転移門前の名も無きクエスト受付嬢くらいなもんだろ……。

 ジジイと受付嬢だけのオープニング? えっ? 誰が観たいんだそんなクソ作品。


「または、いかにもな派手演出の作り物バトルシーンか? 実際に出来る筈もないモーションとか、バトル演出で登録ユーザーを稼ごうってか? んで、やってみたら出来ないことだらけってね。上げて落とすとかマジ無いわぁ~」


 ストレスと不満が積もりすぎて、愚痴からゲーム批判にレベルアップしてしまいそうなので、いったん目の前の『NOW LOADING』は無視して、今後の方針を固めよう。

 たぶん、今現在は夜の21時ちょっと前くらい。

 今日は一応、22時くらいに『中央広場・噴水前』で千秋と待ち合わせて、少しぶらつくなり、大量更新による変更点の確認。

 それから23時に『転移門前』で蒼馬と千里が合流。

 親睦会がてら、レベル30前後のクエストに4人パーティで行く。

 そんで、24時。


 オレの待ち望んだ『イベント』が始まる。

 その後は、イベントの内容による……かな。


《……データのロードが完了しました……》


「……やっとか」


 使用時間42分35秒。


 ……ハードの問題かな……。新型に買い換えるかな……。


 また完全に暗転したディスプレイに、動画が再生される。


「さてと、どんな動画なのやら……」


 期待せずに観るとするかね~。


『……ウェルカム トゥ《Re:GAME〈ゲート〉》!』


 高らかに告げられる女性の声。


「ブフゥッ!!」


 動画開始3秒。

 まぁ、当然吹きましたよ。……だって、すんごい聞き覚えのある声だったんだもん!


「まて、落ち着け……。聞き覚えがあるってだけで……アイツだっていう証拠があるわけじゃない! 他人のそら似ってだけだ……きっと……――」


『やぁやぁ選ばれし勇者くん! ボク達はかつて『最強』と呼ばれた勇者だよ♪ そう! 君とおんなじ勇者♪』


 画面に移る可愛らしい女の子。

 これ、確実にアイツだわ。

 他人のそら似とかだったら良かったのにな……。

 つか、コイツが出てるって事は――


『あえて、この場でボク達は自己紹介をしません! 実際に会ってみたかったら、自分の足で探さなきゃ! ねっ♪』

『おい、いつまで遊んでるつもりだ?』

『この動画って、あんまり長い枠があるわけじゃないんでしょ? アンタ一人で独占してんじゃないわよ……』

『ごめんごめーん♪ えっと、じゃあ本題に入りまーす!』


 少女の他に、一人の銀髪の青年と、それよりも少し色素の濃い銀髪の美女が一人現れた。

 それに、オレの予測が正しければ……画面外にあと4人。

 赤髪のオジサンと金髪の聖母、蒼髪のメガネくんと黒髪の猫耳娘が見切れているはずだ。


 時間が立てば案の定、計7人のプレイヤーが集まっていた。


 何故わかったかって?

 そりゃ、もと仲間ですもん! オレの元仲間達ですもん!

 つか、アイツ等なにやってんだよ!


 呆然とするオレをよそに、銀髪の青年が気だるそうに続く。


『俺達が最強だなんだと呼ばれていたのは昔の話だ。今はそれぞれ別々の道を歩む事にした。だが、状況が変われば……また最前線で剣を握るつもりだ』

『私達は、私達と共に戦ってくれる……8人目を待ってるわ』

『オープニング前のこの動画がまだ流れてるってことはぁ、まだ見つかってないって事なんだよ♪ ボク達と肩を並べて戦ってくれる勇気と実力が君にあるなら! 一緒に始めよう勇者くん! ボク等の物語を♪』


「……は、はは……。アイツ等まだこんなバカなことやってんのかよ」


 呆れた。


「絶対に8人じゃないといけない理由なんて無いくせに、……あの頃の日々に執着して……」


 ため息すら出る。


「もう3年も経ってるんだぞ? ちょっとは自分達だけで歩くとか、……オレの事なんて忘れる、とかさ……。やりようはいくらでもあるだろ。ガキじゃあるまいし」


 その想いが、ありがたくて……。


「……ほんと、バカばっかりだな」


 だからこそ、……やっぱり再会は出来ない。


『ちなみに、最低でもこのくらいは出来る人じゃないと願い下げだから♪』


 笑顔の少女から画面が切り替わり……、前もって録画されていたのだろう戦闘動画が流れ出す。

 それは、長い黒髪をなびかせ……たった一人で、ボス級のモンスター数十体を相手に、戦闘に興じる青年アバター。


 オレは言葉を失った。



 ……コレ、オレやん。


「ぬぁああああああっ! やめろぉぉおおおっ! 今すぐ、この動画を止めろぉおー! つか消せ! スキップ! 動画スキィイイイップ!!!」


 なんなのコイツ等?

 オレを辱しめたいの? 殺したいの?

 やめて! マジでやめて!

 リアルタイムで戦闘を見られるならともかく、録画されたオレの戦闘シーンをこんな場所で流すとか、なんの公開処刑だよ!?

 つかいつ録画したんだよ?

 誰が録っていいって許可したんだよ!? 肖像権侵害だぞゴラァ!



 結局……。

 小学校時代の運動会映像を公共の場で流された気分のまま、悲痛な叫びも誰かに届くことなく……。

 戦闘が終わるまでの数分間、いっそ殺してくれと叫びながらも、公開処刑に悶え苦しむ事となった。

 クソゲーだよクソゲー!

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