南海のスイートハニー・欄外
こんな結末を、俺は認めない。
あいつが寂しがりやなのを、よく知っている。
あいつがどれだけ人間を愛しているのか、よく知っている。
あいつが照れ笑いをするときがどんなときか、俺はよく知っている。
報われない。報われない。あまりにも報われない。
殺意を向けられ、呪われ、火を投げられ、挙句の果てにはその存在を口にすることすら憚られる。それでもあいつは、心の底から人間が好きなんだろう。
そうなるようにあいつを駆り立てたのは、俺だ。俺の無責任な一言が、あいつを動かした。
でも俺は、あいつに何もしてやれなかった。
調子を合わせて、なんとなく退屈を凌いでいただけだった。
そんな俺を美しい思い出にして、あいつは笑うんだ。
自分を憶えていてほしいと、忘れないでいてほしいと、青い真珠を形見にしたんだ。たかだか百年も生きられれば御の字のこの身体が朽ち果てるまでの刹那、たった一人、俺だけがあいつを記憶していればそれでいいのか?
そんなわけがない。良いわけがない。
だけど今更、俺に何が出来る?
……いや、なんだって出来るさ。
そうだ、小説を書こう。
そうだ、漫画を描こう。
歌を作ろう。
舞台を起こそう。
そして、映画を撮ろう。
彼女の可愛らしさを、いじらしさを、ひたむきさを、健気さを、切なさを寂しさを馬鹿らしさを温かさを……誰もが胸に刻んで語り継ぐ。甘酸っぱい恋の話も、悲しい星の神話も、みんなまとめて残そう。
それは永遠だ。永遠にだ。
百年経っても希望を胸に。
千年経っても手を繋いで。
万年経っても忘れるな!!
俺が世界を変える。
そうすれば、ハニー。
だから、ハニー。
いつか俺達の子孫が、手に手を取って、お前を星の世界に連れて行く。
それでこそ本当のハッピーエンドだ。そうだろう?