グラディオの使命
昨日は雪が降って大変でした。
今回は少し長めですいつもに比べたら。では、本編どうぞ。
「魔人と来たか、」
正直この世界の魔人の立ち位置はわからないが、同じ人種なんだ助けないわけにはいかないだろう。
そう思い、急いで魔人グラディオのもとへ近寄る。魔人グラディオが見えるところまで来ると俺はポケットの中から、激薬草を取り出す。
「おい!大丈夫か!?」
「だ、れ、だ…、ヒューマン?ハァハァ…いや、違うな、お前は…何だ。」
「そんなこと今はいいだろ!とにかく、ほら!激薬草だ!生憎使い方はわからんがこれでどうにかなるんだろ?」
「すまない、体が動かないんだゲㇹゲㇹ…、それをすり潰してくれるか?」
「すり潰せばいいんだな?わかった!待ってろ!」
魔人グラディオに言われたとうり近くにあった石ころで激野草をすり潰していく、そうすると表面から透明な液体が出てきた。
「なんか液体が出てきたぞ!この後どうしたらいい?」
「あぁ、そしたらそれごと俺にくれゲㇹゲㇹ…」
「あぁ、ほら!」
魔人グラディオに葉っぱごと激薬草を渡すと、彼はそれを舐め始めた。そして、舐めるのをやめたかと思うと今度は自分の傷口に当て始めた。
「お、おい。そんなんで大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫だ、大丈夫だから少し落ち着け。」
「わかった、」
返事をしたと同時に魔人グラディオの体の傷がみるみる治っていく。
「まじですか…」
「な!言ったとおりになっただろ?」
改めて見るとさっきまで死にそうだったとは思えないほど、体から傷一つなくなっていた。
「なぁ、あんたに聞きたいことがいっぱいあるんだがここは危ないから一旦落ち着ける場所に移動しないか?」
「かまわないが、移動するって言ってもここが何処だがかわかってるか?」
「あっ、場所なら問題ないぞこの近くに俺の住んでいる家があるから。まぁ、住み始めたのは昨日だけどな!」
『…』少し間をあけて何かを疑う目を向けながら魔人グラディオは口を開く。
「悪いが、お前はバカなのか?いや、ただの命知らずなのか?あ、でもそれもバカだな。」
「バカバカうるせぇんだよ!取りあえず行くぞ!家は本当にあるし、俺はそこまで馬鹿じゃない!」
「でも、バカなことは認めるんだな…」
この出会いが後にこの世界を動かしていく二人の出会いになるのだがこれはまた先の話。
今、二人は第五層 最深部にある仁の家(仮)に向かって歩いている。
「な、なぁ…本当にこんなところに家なんてあるのか?」
「もう何回目だよ!あるから向かってんだよ!もう少しで着くから我慢してろ!」
「だってよ!ここ五階層だぞ!森の最深部だぞ!!俺のステータスでもこんなところ絶対に助かりやしないぞ!」
「もし戦闘になったら俺が全力で戦ってやるから安心してろ。」
だが、そんな啖呵を切ってはいたが結局戦闘など一度も起こらず家の前までたどり着いた。
実際家が見えるとグラディオは呆気にとられたような顔をしていた。無理もない、本来ここ「絶界」は第一層ですら入ったら間違いなく死ぬとまで言われている場所だが、今いるのは「絶界」の最深部第五層でしかも、そこに家があり人が住んでいるとなれば驚かない方が無理である。
「まさか、本当に家があるなんてな…」
「だから言ったろ、あるって。」
「俺はてっきり洞窟やなにかを家だと言っているのだと思っていたが、丸太造りの普通の家があるなんてな。」
魔人グラディオは周りを見渡す、すると更におかしな光景が目に飛び込んできた。
「なぁ、あれは何だ?」
指をさしながら、仁に問いかける。
「あ~あれはな、この最深部で生息しているライトニングべヒモスだ!」
何故か返事が返ってこない。
少し待ってみたが、魔人グラディオ動く気配すらない。どうしたのかと、顔を覗き込んでみると放心していた。
「お~い、黙られると話が先に進まないんだけど!」
声を大にして話しかける。すると魔人グラディオは、はっ!とし一言すまない。と言って再びべヒモスに視線を戻した。
「あれは、お前が倒したってことでいいんだよな?」
「ん~、厳密には違うけどだいたいあってる。」
神が俺に顕現することは言わない方がよさそうだ。おれvs人類なんて御免だからな。
家の中に入り、魔人グラディオを机の椅子に座らせる。何から話そうかと悩んでいると、グラディオの方が先にしゃべり始めた。
「俺は、グラディオっていうんだ、呼び方は好きにしてくれ。それと、今回は助かったありがとう。」
感謝の言葉と同時にグラディオは俺に向かって頭を下げた。
頭が上げるように促すと、今度は俺をガン見してきた。
「おい、そんなに見られると気持ち悪いんだが、早く話を進めようぜ。」
「いや、ずっと思っていたんだがお前の名前ってなんだ?」
「あ、」
そこで、俺は助けた時から今まで自分の名前すら言っていないことに気づいた。
「すまん、忘れてた。」
それから、俺は自分の名前とここに来てからの簡単ないきさつを伝えた。もちろん、大事になりそうなことは伏せて。
「仁、お前の話から察するにお前は超越者で間違いないと思う。」
「超越者…確かに俺は違う世界から来たがそこは、転生者や転移者じゃないのか?」
なんで、そんなことを聞くかというとこの世界には時たまこういった風に別世界から紛れ込んでくる人がいるそうだ。
「なんで俺は超越者なんだ?」
「転生者や転移者そして超越者これらは、同じようなものだが厳密には違う、なんで違うかはニホンジン?にカンジ?を文字に当てればわかると聞いているが、そんれがなんなのかは俺にはわからん。」
確かに、漢字の意味を考えると何となくだが違う気がする。結論ほとんど同じという事で済ませた。
「本題に入るが、なんでグラディオは第四層なんかで倒れていたんだ?」
「話すと長くなるが大丈夫か?」
「あぁ…どうせ何もすることないしな!」
それから、グラディオの話は中々壮絶な物だった。
グラディオは、グルタス村というところに妹と二人で暮らしているらしい。十年前に起こった戦争に巻き込まれ、その時に両親を失ったことを話した。グルタス村は当時ボロボロだった自分たちを魔人と知っていながらもとても親切に手当をしてくれたという。それからは、二人で身を寄せ合いながら懸命に生きてきたそうだ。だが、十日前に唯一の家族の妹が良くわからない病に侵され最初二日はずっと看病をしていたが治る気配は一向になく、体はやせ細る一方だった。そこで、八日前にこの「絶界」に生えていると言われているどんな病でも治す激薬草に藁にも縋る思いで探索に出たが、第四層に着いた頃に三メートルほどの狼に襲われ何とか追い払ったはいいが自分も大けがを負ってしまいここまでかと覚悟をしたところに俺が現れたとのことだ。
「それじゃ、今も妹さんはグラディオお前の帰りを待っていると。」
「あぁ…生きていればの話だがな、」
グラディオは俯きながら呟く。
「それじゃあ!ちゃっちゃと妹さんのところまで行って安心させてあげないとな!」
グラディオは何を言っているのかと言うように顔を上げる。
「そうか最後くらい俺が傍に居てやらないとな」
そうつぶやくと椅子から立ち上がり玄関に向かって歩き出す。
だが、
「何言ってんだよ!激薬草を持って行って早くその病気を治すんだよ!」
グラディオの動きが止まる。そして、
「そんなもの今から見つけるとなるとどれだけ時間がかかると思ってんだ!!」
少し怒気混ぜながらそう話す。
「何処って?ここにあるだろ!」
手に見せびらかすように握る。
そうすると今度はきれいなお辞儀をしてきた。
「頼むそれを俺の妹ためにくれないか?俺にできることなら何でもする!!」
「何言ってんだ!もともとそのつもりだろが!」
グラディオは目を見開くとありがとうと言って後ろを向いてしまった。ほんの少し彼の声が震えていたことは、言わないでいた方がいいだろう。
「良し!早いことに越したことはないからそうと決まればさっさと行こうぜ!」
「あぁ、宜しく頼む。」
その声と同時に俺たちはグラディオの妹を救うべくグルタス村にいそぐのだった。
話が中々進まなくてすみません。
もう少し簡潔に書けるよう頑張りますので宜しくお願いします!