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気持ち

二日更新ぐらいには持っていきたいと思っているのでこれからもよろしくお願いします。


あれから一同は一旦グラディオの家に向かい、一日村の人々と宴を行いそしてもう一日置いてから町へ向けて出発した。だが、今この場の空気は最悪だった。


一人は羞恥に顔を伏せており、また一人はきょとんとしてなんなのか分かっておらず、そして違う一人は、どちらの立場にもなれずにその瞳を宙に泳がせ、そして最後の一人は気まずさのあまり話すことすらできていない。

なぜ、こんな状況なのかそれは遡ることグルタス村での宴会まで遡る。


「皆さん今回はお疲れさまでした。仁さんの協力もあり無事に作戦を遂げることができました。仁さん今回のゴブリン掃討作戦、あなたが居なければどうなっていたか想像するだけでおぞましいです。騎士団を代表してお礼を申し上げます。」


イザベラが騎士団を代表して宴会開始の挨拶と一人でゴブリンキングを倒した仁にお礼の言葉を告げる。そして、あらかじめ酌んでおいたお酒を手に取り手を高く上げる。


「乾杯!!」


その合図を皮切りにドッと盛り上がる。


そして、色々な場所で会話が盛り上がる中、仁は宴の中心には混ざらず手に持ってるお茶のような飲み物を少しずつ飲みながらこの世界に来てから今日までを思い返す。


「まだこっちに来てから一か月も経っていないんだよな…」


村の中央で誰かは分からないが、見たこともない踊りを披露している。それを見ながら仁は独り言をこぼす。

まず最初にライトニングベヒモスとの闘い、その時に出会ったアーレスという神、そしてグラディオ、エデル、イザベラ、ミリア何だかんだで色々なことがあって、沢山の人と関わり大切にしないといけない人が増えたなと思う仁。


そんなこと考えているうちにすっかり手に持ってる飲み物は空になっていた、新しいのを貰いに行こうと重い腰を上げると、ふと、仁はこっちの世界に来る前のことを思い出した。


「蓮は元気にしてるかな、、俺がいなくても蓮のことだから大丈夫だとは思うけど。」


考えれば考えるほどいろいろな思い出が仁の頭の中をぐちゃぐちゃにかき乱していく。


「帰れるのかなぁ、、」


やがてそんなことを呟くがその言葉の次に出てくるのは、あのショッピングモールで刺された記憶、大事な幼馴染を守ってその時に受けた確かな感触。

今の今まで蓮を守ることができたからそれでいいんだと、無理やり気持ちのはけ口を作って受け止めてきたが、こうやってゆっくりと考えてみるとやはり元の世界に戻りたいという気持ちが自分の理性とは関係なく何処からともなく押し寄せてくる。


家族に会いたい、仲の良かった学校の友達に会いたい、なんといっても蓮に会って安心させてやりたい。

目の前で仲間たちと大騒ぎしているこの世界の人々のように自分もあんな風にいつもの生活に戻りたい。


見ると仁の涙袋には自然と涙が溜まっていた、やがてそれは限界を超えて雫となって頬を伝う。


仁は持ち上げた腰を再び下ろし、視線を落としながら必死に涙を止めることに専念した、だが一度出てしまったものは止まることは無く無尽蔵にあふれてくる。


なぜ、止まらないのかと思った仁だが思考を変えて見れば簡単な話だった。要するに、それほどまでに仁は自分に対して嘘をつき続けてきたということ、たったそれだけだった。

合点がいったような顔をした仁だが涙は止まるどころか、気持ちに整理がついてしまったことでさらに勢いを増す。



こんなところ見られたくない仁は立ち上がり人気のないところに移動しようとした。だが、それはある人の声で遮られてしまう。


「仁さん、こんばんは、、好みがわからなかったので色々と持ってきてしまいました。」


そういいながら仁に近づいてくるのは作戦で指揮も務めたイザベラだ。どうもと素っ気なく返す仁に違和感を覚えたのか更に近づくイザベラ、そして仁の横まで来ると隣に腰掛けその顔を覗き込む。



「っ!?」


仁の泣いている姿を見たイザベラはどうしていいのかわからずその場であたふたし始める。


「(な、な、なんで仁さんは泣いているのですか、私が何かしてしまったんでしょうか、、取り敢えず移動しましょう変な疑いをかけられる前に!)」


そう思ってイザベラは仁の手を取りその場から離れる。だが、この行動こそがイザベラのことを見ている者たちにとっては返って逆効果になることは当の本人にはわかるわけもなかった。


移動した二人がたどり着いた場所は村の外れで、村を中心を一望できる小さな丘だ。二人は村が見えるように草の上に腰を下ろす。


「仁さん、どうしたんですか?何かあったのですか?」


イザベラが柔らかい口調で話しかける。


「イザベラさんありがとうございます。でもこれ以上迷惑をかける訳にはいかないのでもう大丈夫です。」


仁のそんな少しのプライドと恥ずかしさから出た返事にイザベラは少しむっとして言い返す。


「そんな涙を流すほどのことが大丈夫なわけないじゃないですか!」


イザベラは話すまでここにいますからね。と言ってプイっと顔をよそに向けてしまう。


「これは、、」


仕方ないっといった顔で仁は自分がここに来るまでの経緯を話し始めるのだった




「っていうのが全部で、少しホームシックなっただけです。ですが、もう大丈、夫って、、!?」


気づいたら仁はイザベラの胸の中に頭を埋める状態で抱きしめられていた。


「辛かったですね、、」


そんな震え声と共に聞こえてきたのは鼻をすする音。


「はい、」

「帰りたいですよね、、うっ、」

「はい」


それっきりイザベラは喋らなくなりうっ、うっ、とすすり泣く声だけが聞こえていた。

仁はなぜあなたが泣くのかと思ったが、口に出さずに静かにその場の流れに身を任すのだった。


しばらくするとスースと穏やかな呼吸が聞こえてきたので仁はイザベラの元から脱出し、その体を背負う。


「泣きつかれて寝るって子供ですか、、」


そういった仁の顔に思いつめた表情は無くどこか吹っ切れたさわやかな顔をしていた。


今回はイザベラと仁、二人の距離感を少し詰めたくてこう言う感じにしました。


誤字脱字等ありましたら教えてもらえるとありがたいです。

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