ヒーローは遅れてやってくる!!
やっぱり遅れて登場するヒーローてかっこいい!
では本編どうぞ。
「おい!グラディオこれはどういうことだよ!」
「すまんが分からん!」
二人がたどり着いた戦場は混戦状態と化していて、状況はあまり良くないようだ。
部隊はグルタス村を背に北西方向からゆっくりと攻め込んでくる数の多いい敵軍隊と東側より攻め込んでくる別部隊によって、完全に指揮系統は失われている。
そして、部隊の奥の方に一人頭を悩ませている女の人を仁が見つける。
「グラディオ!村に一番近いところに指揮官らしき人がいるんだが!?」
「よし、間違いなくそこが本部だ!」
ついてこいと言ってグラディオは先を走りだした。
目の前に広がる無数のゴブリンを蹴散らしながら進むとほどなくして指揮官がいると思われる場所に到着する。
すると、そこには、中年の男と滅茶苦茶美人な青髪の女性が立っていた。
「誰だっ!」
隣にいる男が声を荒げる、青髪の女性もこちらに気づいたのか顔を上げる。
「っ!?」
顔を上げたとたん青髪の女性は目を見開くと同時に自分たちと言うかグラディオに近づいてきた。
「グラディオなのですか!?」
「ああ、俺だ。」
その返事を聞いた青髪の女性は安堵の表情を浮かべ、そして次に視線を俺に向けてきた。
グラディオに目線を向け目で合図をやりそれにグラディオがうなずく。
「イザベラ、紹介する八雲仁だ。「絶界」で死にそうなところを助けてもらった。」
「どうも、八雲仁です。宜しくお願いします。」
「イザベラです。こちらこそ宜しくお願いします。」
それで、とグラディオが聞くとイザベラは総数100体からなるゴブリンの軍勢が攻めて来たことを話した。グラディオはそのことを聞くと俺も戦うと言って来た道を引き返そうとするが目的を見失てはいけない。
「おい!グラディオまて今は妹さんを助けることに集中しろ!」
「っ!?そうだったすまない。イザベラ俺は妹を助けてやらないといけない、だから、もう少し耐えてくれ!」
イザベラは顔を歪めながら渋々といった感じで了承した。
「できるだけ早く戻ってきてください、こちらにもう戦える戦力は残っていませんので。」
「ああ、、すぐ戻ってくるそれまで何とか耐えてくれ!」
「ちょ、ちょっとお二人さん俺のことを忘れてませんかね?」
イザベラが何を言っているんだと言う目で見てくる。
「何を言っているんですか?」
「ほんとうに言っちゃったよ!?いやいや、あくまで助けに行くのグラディオだけだからね!?」
またしても奇怪な目が向けられる。
「だから、俺が戦うって言ってるんですけど…」
イザベラは胡散臭さが取れないらしくグラディオに助けを求めている。
「ああ、、仁なら大丈夫だ、俺なんか比じゃないぐらいに強い。」
「分かりました。グラディオがそこまで言うのです、なのでお力添えをお願いします。」
「任されました。それとグラディオ、激薬草だ。早く妹さん安心させてやれ、」
「本当にお前には頭が上がらないな、助かる。」
グラディオは仁から激薬草を受け取ると村の方へ消えていった。
「さてと、俺は何をすればいいですかね?」
そうですねと言ってイザベラは俺に東から来ているゴブリンエンペラーを相手にして欲しいといった。
そして、俺は言われたとうりに東に展開している軍のところまで移動する。
ステータスのおかげでありえない速度で移動する俺を認識できる人はいない、なのですんなり目的の場所まで来ることができた。だが、その場所にあったのは人やゴブリンの死屍累々と言ったあまりにも無残な光景だった。
「こ、これは結構くるな、、」
日本の学生だった仁にとってはこの状況はあまりにも現実離れした光景だった。姿が人に近いことがさらに滑車をかける。
それでも、幸いにもこの数日の間である程度魔物を狩っていたこともあり何とか踏みとどまることができた。
取りあえずまだほかに戦っている人たちがいないかを探すため魔眼と探知を発動させる。そして、少し離れたところにまだ五人ほど戦っていることがわかり急いでそこに向かう。
「ちっ!なんでこんなところにゴブリンエンペラーなんかいるんだ!」
戦いながら文句を言っているのは、ゴブリンロードとメイジの奇襲を担当していた部隊の一人、がたいのいい男だ。
「口動かす元気があるならもっと早く手動かせ!!」
この奇襲部隊のもう一人の男が間髪入れずに言い返す。
そうこの者たちはゴブリンロードとメイジを討伐しゴブリンの本隊からはかなり離れた安全な道を行っている筈だった。
だが、もうすぐ本部に着くそう思った矢先にゴブリンエンペラーの軍勢と鉢合わせし、そして今は残り少なくなったゴブリンといまだ何の手傷も負っていないゴブリンエンペラーの相手をしているというわけだ。
「これで最後っ!」
隊で一番元気な女兵士が最後のゴブリンを片づける。
「み、みなさん!回復します!」
おどおどした様子の女兵士が周りの仲間の傷を癒すべく魔法のヒールを唱える。
すると、わずかだが体力の回復と擦り傷などが癒えていく。
「お前たち、くっ! 休んでいる暇はないぞエンペラーのやつが完全に威かってやがる、、」
一人ゴブリンエンペラーの相手をしている男がそう叫ぶと、残りのメンバーも気を引き締め最後の敵に向かっていく。
だが、ゴブリンエンペラーの強さは圧倒的だった。
四人も連携を取りながらも攻撃するがそのすべてを軽くあしらわれている。そして、連携が少しでも乱れるとすかさずそこへ強烈な攻撃が飛んでくる。じりじりと体力だけが消耗していき、遂に限界が訪れる。
「きゃっ!」
回復担当の女兵士が近くに立っている木の根元に足を取られてしまいしりもちをつく。
ゴブリンエンペラーはこれを待っていたとばかりにそこへ自分の持っている剣を振りかぶる。
「うらああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
声をあげながらもう一人の女兵士が助けに行こうと地面をけるが振り返ったゴブリンエンペラーの剣に吹き飛ばされてしまうそして、転んでしまった女兵士は迫りくる死に完全に腰が抜けてしまっていた。
「お父さんお母さんごめんなさい、もう私ここまでみたいです。」
涙を流しながらそうつぶやく彼女、何かを叫びながらこれまた涙を流す吹き飛ばされた女兵士、そして険しい顔をする男三人、もう駄目だその場にいる誰もがそう思った時だった。
「うをおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
そんな誰かが叫ぶ声が聞こえたと思ったら次の瞬間ゴブリンエンペラーを殴り飛ばしている男が現れた。
初めてスーツを着ました、似合わな過ぎて困る。