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赤い月なのに……猫のくせに…… 2




赤い月なのに、

猫のくせに。


私に構うな、と、

言ったきのうもある。


ちょっとかっこつけてさ、

寂しい心を隠してさ、

ただ本当はありがたかったけれど、

猫のくせに、とか、嫌なこと言ってごめんね?


私は本当は猫なんか好きじゃないんだ。


子供の頃から、犬派だったし。

と言うより、実家では犬を飼っていたし。

コロって名前で、白い柴犬で

お手や、おかわりや、

待てや、伏せ、

お座りも、

ちゃんと言うことを聞く、賢い犬だった。


寒い夜、暖め合おうとかいって

くるまって寝たこともあったよ。

そして老衰で死んだときには、

一晩中泣き明かした。

一緒に過ごした日のことを、今でさえ

深い夢の中でも鮮やかに見ることもある。


猫は、違うでしょう?

こちらの言葉が通じているかどうかもわからない。

遊んでいるときの動作や表情は確かに可愛いけれど、

私と一緒になって遊んでるんじゃなくて

勝手に1人で遊んでるだけだもんね。

ちょっと、コロとは違うなぁと、

ずっと思ってたものよ。


そんな私がだよ、

なんの因果か猫に惚れられ、

好かれまくって、寝取られるなんて。

寝取られる?

言葉遣い変だった?

一緒に寝たっていう意味です。

いまや、

あのコロと一緒に寝た回数より

あのこと一緒に寝た回数のほうが多いもの。


愛情は、回数じゃ測れないと言うけれど。

一緒に寝てると、情も移ります。

(いったい何の話してる?)


猫のくせに、私に惚れるな。

猫のくせに、私に妬くな。

猫のくせに、私を寝とるな。


猫のくせに猫のくせに猫のくせに

猫のくせに、私を堕とすな。


だって、言うこと全然聞いてくれないけど、

見ないふりして、見てくれていたり、

心の奥は優しいんだもの。


両脇の下に手をやり、

かあるく抱え上げ、

目と目を見つめあわせて、

その可愛すぎる湿った鼻を

ペロペロと舐めてあげる……


あ、こら、逃げるな。

これが私の

一線を越えられないゆえの

愛情表現だって

わからないの?


猫だねぇ。


それとも嫌がるふりして、

私の気を引いてるの?

なら、


上手だねぇ。


猫のくせに、


こんなに好きにさせて、

どうするつもり?


責任取れるの?


て、どんな、よ?




猫のくせに…………




赤い月の夜だから、

人間と猫が通じ合える奇跡もあってもいいだろう?



赤い月の夜だから、


それがたとえ、猫であっても……


それがたとえ、猫であっても…………








(通じ合うって、言葉が、へんだよ?)

(まさか、へんなこと、考えてないよね?)



へんなのは、あなた。

あなたなの!









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