けっして、あしたのためでは、なく(ガラクタなんて、呼ばせない改題)
その夜は、月無き闇。
かつていっしょに暮らした
お手伝いロボットのエイコが
廃棄処分されることとなる。
見て見ないふりをすればいいのに
それができない白い心の翼さんの
心を持たない機械へのやさしさ?
でもね、みんな、知ってる、
機械だから、
なんの感情も持っていないんだ。
エイコって名前だって、
アルファベットのA子なんだって。
個別の人格を持っているわけがないのは、
みんなが知っていることさ。
本来なら、この世界の最後の宝といっていい
すみれ子ちゃんの窮状を見捨てて、
自分勝手な探し物をすることは、
大きく汎人類的な考え方でみてみても
最優先すべき順位を、まちがえているんだろう。
そして、常識という正しさを
ねじ切ったままで、
かつていっしょに暮らしたという
それだけの理由で、
翼は、エイコを探す、この世界を見もせずに。
かつていっしょに過ごした
機械人形エイコを溶解から救い出すために
ゴミの海に身体を飛び込ませ、
狂った瞳を鋭く光らせながら探す
「カノジョをガラクタなんていわせない、
カノジョが私の青春だったから」
すべてを捨て去って、
人類と世界と、輝く未来を捨て去って、
ただひとつの機械人形如きに愛を捧げるのですね?
それが、貴女なのですね、翼さん?




