運命の白い花が咲き狂う悲しみの春、遥か。
愛に飢えた女ってどう?
こんや優しい声で子守唄を歌ってあげたわ。
外は寒いふゆでも、
ふたりの(ほんとの?)愛で
あたたまっている部屋で、
あなたとふたり薄い布団にくるまりながら。
あなたの髪を撫でつけながら、
マリア様より優しい微笑みを
あなたの前でだけならできていたと思うの。
寂しい涙を瞳いっぱいに貯めてあなたは
それをこぼさない努力を続けながら、
何とか笑おうとする努力を続けながら、
もう、泣いちゃってもいいんだよ。
誰もあなたのこと責めないんだから。
あの人だって、責められないよ、もう。
もう、泣いちゃってもいいんだよ、心から。
私も一緒に泣かせてもらうわ、
あの人の死をいたんで。
私の心はずるいんだ。
あの人の事、
それはそれは好きだったのに、
いなくなると、
想い続けることができないんだ。
あの時、
あなたに会ってしまわなければ、
あの人が殺された場所で、
あの人を殺したあなたに会ってしまわなければ、
あの人を殺した奴を憎み続け、
いっそそいつを探し出して、
憎しみのたけをぶちまけてやろうとその、
熱く暗い情念を持ち続け、
不幸の道を歩いて行くのも、
バカげたことではないと
思えたかもしれない。
でも、あの、動かない昔愛した人の亡骸が
横たわっていた地獄の部屋の静寂を、
一瞥は、した。
あとは、あなたをみつづけた。
返り血をその白い小さな顔に浴び、
愛する人をその手にかけた冷たい頬、
こきざみに、
震えた。ほほえみ。
震え、つづけた。ほほえみ。
ああ、その美しい立ち姿に私の時は止まり、
もはや、愛をさがす時間も無用の、
毒の姫に惚れてしまった瞬間だった。
そのあと、
私は毒の姫の笑顔を見せて頂くために、
狂った七色の激流の中へ、その身を飛び込ませる。
その冷たい狂気のなかに、
私の埋めちまったガラクタな悲しみは、
どこを探せば、ほんとうに、あるのか?
いったい、それば、ほんとうに、あるのか?




