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Episode #03「First Impression」

  一週間後の朝

  

  前日の試合後にランスはアインを連れ

  K・Bにある地点に来るように言われていた


  K・B

 「一週間後、ネオプトレモス市にある

  自然公園の池の傍で待っている。

  そこで気絶している奴も連れてきて欲しい。

  後はコレを見れば分かるだろ?」


  そう言ってあるモノをランスに手渡す


  ランス

 「ん・・・これはこれは・・・なるほど了解した」


  現在そこへ向け、車を走らせている


  アイン

 「・・・・・」


  アインは持ち前のタフさで

  常人ならば、5日は病院の天井を見上げている様な

  怪我を負いつつも2日で全快。

  3日目には退院していた。が・・・

  

  ランス

 「おい、いつまで呆けてるんだよ

  負けたのは今回が初めてじゃないだろう?」


  そうだ、負けたのは初めてじゃない

  過去にも数度、アンティスやゲインに

  負けてはいた・・・だが・・・

  アレほど弱い、無能と罵っていた存在に負けた

  それが、許せなかった


  アイン

 「・・・・・・・・畜生なんで俺があんな奴に」


  たまに口を開いたかと思うと、悔恨の詞を漏らす


  ランス

 「はぁ・・・だめだこりゃ・・・前のより酷いな」


  

  数十分後・・・


  ランス

 「よし、着いたぞ。ここの中央の池に居るらしい

  ・・・ほら、いくぞ」


  アイン

 「なんで俺が・・・奴に・・・」


  ランス

 「やれやれだ」


  動こうとしないアインをおぶって連れ、

  池の方へ歩いていくと

  池の畔で赤い長い髪が特徴的な女性が

  こちらに向け、手を振っている


  こちらが気づくと女性はボートを指でさした


  ランス

 「乗れってことかな?」


  ボート乗り場まで着くと

  すでに彼女は乗り込んでいた


  ???

 「ここで話すのも何だから乗ってくれ」


  言われたとおり乗り込むと

  池の中央へ漕ぎ出した


  元々、人の多い公園では無い

  ましてや、ボートに乗っている人間など皆無だ


  程なく、中心に着いた


  ???

 「ここならいいでしょう」


  彼女は座ったまま敬礼をし、


  ???

 「カレン・ブラッド少尉であります

  本日より、貴隊の所属になります」


  ランスも敬礼で切り返す


  ランス

 「ランスロット・ファーガソン中尉です。

  で、こっちが・・・おい、アイン」


  アイン

 「・・・・・」


  アインは相変わらず、

  ぶつぶつと文句をたれていて

  周りが見えていないようだ


  カレンは淡々と

  今回の任務の内容を語りだした  


  カレン

 「現在、火星では帝国政を布いていますが

  帝国建立から20年たった今、

  警務執行官や役人の腐敗が進み

  民衆は不平を疎み、反帝国運動を激化させています

  皇帝は『反するもは万死に値する』と宣言

  それに伴い、警務執行官による市民の虐殺が

  横行しています」


  ランス

 「ほう、結構な程、荒んでるんだな

  で、俺たちは何をすればいいんだ?」


  カレン

 「次の月に、オデュッセウスで

  都市の代表を決める大会があります

  そこに皇帝が視察と任命式のために

  訪れる予定になっています

  この時に皇帝の誘拐もしくは

  暗殺を実行しますので

  襲撃を援護してもらいます」


  ランス

 「!?

  要人の襲撃だと?上層部の許可は下りてるのか?」


  カレン

 「問題ありません

  そのために火星まで

  来てもらったのですから」


  ランス

 「そうか、了承済みなのか」


  カレン

 「今後の予定はオデュッセウスで

  潜伏中の協力者達と合流、

  多方面からも数組織合流予定です」


  ランス

 「結構な規模なんだな。

  俺たちは具体的に何をするんだ?」


  カレン

 「皇帝の周囲を護衛する

  親衛隊を引きつけてください

  出来れば、殲滅してもらいたい」


  ランス

 「エースの面目躍如ってところか

  よし、他にすることも無いし、

  断る理由も無い、了解」


  カレン

 「本日、火星時間で18時頃、

  正式な辞令が追って通達されます

  質疑はそこで聴くそうです」


  ランス

 「そりゃ末端のあんたに

  聞いても仕方ないからな

  今後ともよろしく」


  ランスは軽く敬礼をとり、一礼をした

  カレンも一礼で返す


  カレン

 「そこの彼はどうなんです?」


  アインはまだ、空<くう>を見つめ

  心ここに在らずと言わんばかりに呆けている


  アイン

 「・・・・なんで俺が・・・・」


  ランス

 「おい、アイン

  おいってば」


  ランスが肩を掴み、揺するが

  払うわけでもなく首を左右に反復させている


  カレン

 「・・・失礼」

  

  カレンはスッと立ち上がり・・・


  アイン

 「!?」


  アインは拳で殴られ、宙に浮き

  池に音を立てて落ちた


  ランス

 「お、おい大丈夫か!?」


  状況を飲み込めず3秒ほど呆けて居た

  ランスが池を覗き込む

  

  池は浅く水深1.2m前後でおぼれる程、

  深くは無かったがいきなり殴られ落とされた為、

  水中でジタバタと、もがいている


  アイン

 「ゲホゴホ・・・何をしやがるてめぇぇ!」


  なんとか自力でボートにしがみつき、

  カレンを睨みつける


  カレン

 「少しは頭が冷えたかしら?」


  アイン

 「ん?ここはどこだ?

  俺は確か・・・試合の最中で・・・あれ?」


  ランス

 「またか・・・」


  ランスは何度もこの光景を見ている、

  今回で記憶を失うのは三度目だ

  最初は地球軌道上でアンティスに追い詰められた時

  二度目は月面開発基地での

  襲撃者追撃戦で撃墜された時だ


  ランス

 「ホラ」


  ランスは手を差し出し、

  アインをボートの上へ引き上げる


  アイン

 「ランス?ここはいったいどこだ?」


  ランス

 「あーやっぱり飛んでらっしゃる・・・

  どこから話せばいいかな」


  ランスは目の前に居る彼女が対戦相手だったこと

  先ほど聞いた今後の動向について説明した


  アイン

 「俺はコイツに負けたのか・・・」


  コブシを握りしめ歯を食いしばり、

  カレンを睨みつける


  カレン

 「コイツではなくカレンです。」


  アイン

 「この野郎ッ!」


  ランス

 「オイッ!止めろって!」


  ランスは咄嗟に殴りかかろうとするアインを

  羽交い絞めにして止めに入った


  アイン

 「殴らなきゃ気がすまねぇんだよ!」


  ランス

 「殴ってもどうにもならないし、

  何よりこの上で暴れたら転覆するだろうが!」


  ボートは左右に振れ、両端から飛沫を上げている


  カレン

 「泣いているのですか?情けない人ですね」


  アインの目は薄らと歪み揺らめいている


  アイン

 「うう・・・」


  暴れるのを止め、コブシで目を擦った


  カレン

 「過去、幾度と対戦した中で

  あそこまで戦えたのはあなたが初めてでした」


  ランスに抵抗する事もなく、

  うな垂れる様なかたちで

  カレンの言葉を身に受けている


  カレン

 「もし、戦力にならない様なら抹消して構わないと

  上から言われていましたが、あの戦争を

  生き抜いただけあって的確な判断力、

  行動力のある優秀な人物と思っていたのに残念ね」


  アイン

 「・・・」


  ランス

 「落ち着いたか?」


  アイン

 「ああ・・・」


  羽交い絞めにしていた腕を解き、

  自由になった右腕をカレンに

  向かって突き出すと・・・


  アイン

 「前回は油断したのと機体の整備が

  完璧じゃなかったから負けたんだからな!

  次は絶対負けねぇ!」


  ランス

 「相変わらず立ち直り早えぇ・・・」


  毎度の事とは言え、

  その立ち直りの早さは一級品。

  唯々、あきれるばかりである。


  カレン

 「では翌朝、2番ゲート前で待っていますので

  今後ともよろしくお願いします」


  そう言い、会釈をした


  カレン

 「用件は以上です。では戻りましょうか」


  ボート乗り場へ向け、オールを漕ぎ出す


  ランス

 「前途多難かな・・・こりゃ」



  

  翌朝、2番ゲート前


  

  ランスとアインはカレンの運転してきた

  中型の移動用トラックに乗り込んでいた。


  運転席、助手席、後部に4席

  その後ろにメタルスーツ用の

  コンテナブロックが付いた一般的な車両だ


  ランス

 「ところでオデュッセウスには

  何をしにいくんだ?」


  助手席に居るランスが尋ねた


  カレン  

 「とある組織の人間と合流する

  手筈になっています」


  ランス

 「その後は?」


  カレン

 「まだ分かりません

  情勢が不安定で不確定要素が多すぎるんです」


  手を顎に置き・・・

  

  ランス

 「行き当たりばったりか」


  アイン

 「あの時と似てるな」


  後部に乗り込んだアインが顔をヒョコッと出した


  ランス

 「あの時?ああ、最終作戦の時か

  もう懲り懲りだけどなぁ・・・

  それに嫌な予感がするしよぉ」


  神妙な面持ちでランスが身構える


  アイン

 「何とかなるだろうさ、

  とりあえず火星くんだりまで来たんだ

  悪の火星皇帝やらをとっとと倒して

  ゆっくり観光でもしようぜ」


  ランス

 「ハァ・・・お気楽なこって・・・」


  カレンがアインを見て囁く


  カレン

 「万が一、野盗に襲われたらまずいので、

  アインさんはスーツコンテナで

  スタンバイしていて下さい」


  アイン

 「お・・・おう、了解だ」


  アインはそそくさとコンテナへ入っていった


  カレン

 「では行きますよ」

 

  車のエンジンを唸らせ

  オデュッセウスへ向け、走り出した


Episode #03「First Impression」 完


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Episode #04「Silence of Silence」

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