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自分ズ

作者: 毒虫小僧

今僕の隣には僕がいる。

え、意味が分からないって??

僕だって意味が分からずパニクってる状態なんだよ。


隣にいる人物は、僕とまったく同じ顔、同じ体型、同じ服装をしてる。

これはもうそっくりさんというレベルではない。

僕そのものなんだ。


その人物が僕自身なんだと確信したのは、お互い話を交わした時。

彼が名乗った名前は、僕と同じ名前。

おまけにそれを言った時の声も僕とまったく同じだった。


あまりにも現実離れした事が今起こっている。

それだけは分かっていた。


僕たちがまず頭に浮かんだのは、

ある1人の友人だった。

彼は超常現象マニアなので、きっと今僕たちに起こっているこの現象を理解し、うまくいけば解決に繋がるかもしれない。


友人宅のドアを叩くと眠そうな顔で彼はドアを開けた。

僕たちの顔を見るなり一気に眠気が覚めた顔になり、そして次の瞬間にはものすごく興味を持った目で僕たちを見始めた。


とにかく彼の家にあがらせてもらい、

僕たちはこうなった経緯を話し始めた。


ふと立ち寄った本屋での出来事だ。

新刊のコーナーを見ると、読みたかった本が二冊並んでいた。

しかし給料日前とあって、財布の中には一冊分のお金しかない。

どちらを買おうか散々悩んだ末にやっと決まりその本に手をかけた瞬間だ。

誰かが同時にその本に手をかけた。

手をかけた人物を見てびっくり!

自分と同じ顔をした人、

つまり今隣にいるもう1人の僕だったというわけだ。


彼に経緯を話終えると、僕も少しだけ落ち着きを取り戻せた。


しばらくの沈黙の後彼はこう答えた。


これはあくまでも僕の想像にすぎないけど、、、。


パラレルワールドって聞いた事があるかい??


君が二冊の本のどちらかにしようか悩んで二冊の内の一つを選んで買った時に、

Aという本を選んで買った君と、Bという本を選んで買った君の二つの世界が生まれたんだ。


こんな感じで他の場面でも、君と違う人生を選んだ君の世界がどんどん生まれて行く。

簡単に言うとそれがパラレルワールドと言われるものなんだ。


けどその二つの世界は全く別の世界として存在するので交わる事はない。


ここからが僕の推測なんだが、君が二冊の本を悩んで一つを選んだ時に生まれた二つの世界が、なんらかの原因によって一つの世界になってしまったんだと思う。


本来ならば君たち二人の内の一人は、Aと言う本ではなく、Bと言う本を選ばなければいけなかった。

それが二人とも同じAを選んでしまったので、そこに世界の歪みが起こり二つの世界が一つになってしまったのかもしれない。


僕たちは首をかしげた。


彼の言っている事がほとんど理解出来なかったからだ。

だけど彼の話は妙に説得力があり、彼ならばなんとかしてくれるんじゃないかという期待感もあった。


友人はハッ!と何かを思いついた顔で勢いよく話し始めた。


そうか!もしそれが原因ならば、その逆の事をすればもしかしたら元に戻るんじゃないのか!?


彼は少しニヤリとしてキッチンに向かった。

そしてしばらくして二つのマグカップに入った飲み物を差し出した。


コーヒーと紅茶、二つともお前が好きな飲み物だし、いつもどちらにするか悩んでるだろ?


俺の考えはこうだ。


コーヒーと紅茶を君たち二人がそれぞれどちらか一つに決めて、

同時にその飲み物を手にする。


君がコーヒー、君が紅茶で行こう。

もう決めたのでここからは決して悩む事はしないように。


3、2、1、ゼロ!の掛け声で二人同時に飲み物に手をかけるんだ。


決して迷わずお互い一直線にその飲み物の事だけを考えるようにね!


悩んで生まれた世界ならば、

それぞれが悩まずに別々のものを同時に選べば、もしかしたらまた世界に歪みが生まれて、うまくいけばそれぞれの世界に戻れるかもしれない。


一か八かやってみよう!


僕らはまだよく理解はできていなかったが、とりあえず彼の言うとおりにしてみる事にした。


それじゃあいくぞ!


3、2、1、ゼロ!!


その瞬間もう一人の僕がパッ!と消えた。


今ここにいるのはコーヒーを手にした僕一人。


やった!成功だ!!


友人の声で僕もようやく成功したと実感できた。


何が起こったのかは未だに分からないが、とにかく元には戻れた。

とりあえずホッとした。


その後お礼に友人に何かご馳走する事に。


いつも一緒に飲みにいく居酒屋に来た。


まずは生ビールにするか、それともウーロンハイにしようか。

いつもはウーロンハイだが、この日は生ビールも飲みたい気持ちも芽生えた。


よし!生ビールに決めた!


居酒屋の店員を呼び注文する。


「生ビール一つ!」

「生ビール一つ!」


同じ声が同時に響いた。


そして目の前の友人と店員の驚いた顔、、、、。



THE END














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