Take.4 アリス
溜まってたシナリオ順次大放出していきまっしょう!
「おい、だからお前の事だ! 聞こえておるのか!?」
「えッ!?」
少女に叱咤され、ハッと気づく俺。太陽が雲に隠れて光の量が少なくなったためか、少女の顔がはっきりと目に入ってくる。俺はその端正な顔立ちに心底見とれていた。金髪の髪が風になびいて心なしかキラキラと輝いているように見える。我を忘れてボーっとしていたのはそのせいだろう。
謎の少女に怒鳴られて慌てふためく俺は、傍から見るとすごく情けないと思う。そんな状態のまま、俺はその少女に尋ねる。
「え、ええと……。確か、ここの住所のことだよな?」
「住所………まぁ、そんなところか。『現世』ではそう呼んでいるのならそうなのだろうな。」
「『現世』?」
「ん? それがどうした?」
「いや、なんでも…。」
現世というのは、なんなのだろうか。『現世』といえば、単にこの『世界』のことを言うのだろうか。もしかしたらこの謎の少女の文化特有の呼び方なのかもしれない。と、思考をしながら携帯をいじくりながらここの住所を検索する。学校の住所は記憶済みなのだが、彼女は「座標」と言ったので北緯と東経を調べる必要があったからだ。
一通り検索し終わった俺は彼女にそれを伝えると彼女は言った。
「う~ん……。随分と座標を誤ってしまったな……。標的が遠ざかってなければいいんだけれど……。」
ひとり言のように呟く彼女の言葉の真意は俺には理解できなかった。彼女はしばらくブツブツとつぶやいた後、踵を返して言った。
「礼を言う、少年。こちらのミスだったとはいえ、これで予定を狂わせずに済む。」
「あ、あぁ、いや、俺はただ住所を教えただけであって………。特に何も…。というより、ミスって?」
「おお、スマンスマン。あまり気にするな、こっちの事情だ。」
いや、気にするなと言われても、気にしてしまうのが人間の本能なのであって……。要するに「このボタンは押してはいけないよ」と言われてどうしても押したくなってしまう原理と同じものだ。しかし俺は空気む男。無理に深追いはしない。
「それじゃあ私は行くとする」
そう言って彼女はすたすたと歩いてい……った先は校内へと通じる扉ではなく、なんと周囲に張り巡らされているまだ真新しい緑色のフェンスだった。俺は彼女が一体どこへ向かおうとしているのかが理解できず、彼女を一旦引きとめた。
「お、おい! お前、行くって言ったって何処に行くつもりだよ!? 降りるならあっちの扉からだぞ!?」
と、彼女に呼びかけるが、彼女はこちらを振り返り、「心配いらんよ」と言うだけで、しかし、俺はそこであることに引っかかる。
彼女は一体どうやってこの学校に、この屋上にやってきたのだろうか?
俺が眠っている間に来たのなら分かるが、彼女はどう見ても、どこをどう見ても、この学校の生徒ではないことは一目瞭然。それにこんな格好の子が校内を歩いていたならいくらなんでも教職員の誰かが呼びとめるはずだ。それなのに、彼女は一体どうやって、ここに侵入してきたのだろうか?
と、俺がそこまで思考を巡らせていたところ、気付くと彼女はフェンスの上に凛としてたたずんでいた。そこで彼女は言う。
「悪いが、席を外してくれないか?」
「え……? なんで…?」
俺が聞き返すと彼女は、「ん~……、やっぱいいや」と一言。一体なんなんだ。こいつには謎が多すぎる。と、俺が思っていると、風がいっそう強く吹き付けた。いきなりすぎてバランスを崩しかけてしまう。そこで俺は彼女のことを心配した。不安定なフェンスの上に立っている彼女がバランスを崩して落ちてしまわないかと思ったのだ。が、そんな心配はなかった。彼女は依然変わらずフェンスの上に立ったままで、足が縫いとめられたように、微動だにしていなかった。風の影響で髪が靡き、ドレスのミニスカートがひらひらとはためく。幸い、中にはスパッツのような、競泳水着のような感じのものを穿いていたので期待していたようなサービスはなかった。しかし、そんな感情を一気に押し流すような出来事が、目の前で展開された。
謎の少女の背後に、漆黒の翼が出現したのだ。
否、出現ではなく、あれは背中から“生えて”いると言った方がいい。しかも鳥の様な羽毛に包まれた翼ではなく、コウモリのような、例えるなら、悪魔の背中に生えているそれに近かった。よくみると翼膜のようなものが見てとれるが。
「な……なっ……!?」
俺は目の前で起きたあまりにも『非現実的』な出来事に言葉もろくに発せられないまま固まった。しかし、これで謎は解けた。彼女は、翼を使って、ここへと降り立ったのだ。どういう理由なのかは不明だが。
その時、フェンスの上で悠々と立っているさらに謎の深まった少女が、硬直している俺に向かってこう言った。
「見苦しいものを見せてしまって申し訳ない。ただ、私の『現世』での移動方法はこれしかなくってな。」
見苦しいだなんて、と俺は一瞬そう思った。ただでさえ美しい彼女が、漆黒の翼の出現によりさらに引き立てられている。天使と、悪魔のような、そんなものを連想させた。
「基本的には『現世』の者には見せてはいけないものなのだが…………」
「……それで……さっき俺にああ言ったのか?」
「ああ。でも、なんだかお前には見せても何ら問題ないと見たのでな。」
「そんな理由で!?」
「それに『基本的』だし、ばれなきゃ問題ないし☆」
天真爛漫だなコイツ……。
俺が半ば呆れていると、何か、よくない、そんな『異様なモノ』を感じ取った。ふと彼女を見ると、彼女も俺と同じように、何かを感じたのか、さっきまで会話をしていた時の笑いは消え、鋭い目線で周囲を見渡していた。
「チッ! またか………ッ! 私の現世転移に干渉した挙句、連行まで邪魔する気か!?」
彼女の言っていることが一体何を意味しているのか、僕には理解が追いつかない。彼女は依然何者かに話しかけているように何もない虚空へと言葉を発している。しかし、次の瞬間、はっきりとした変化が起きた。
空間が、歪んだ。
青と白い雲が一面に広がる空のほんの一角に、空間の歪みが生じたのだ。何か渦を巻いているかのように見える。そして次の瞬間、その歪みの中心から同心円状に亀裂が入った。ビシィっという音まで聞こえてきそうな感じだった。そして亀裂が避け、暗い、どんよりとした、濁った色の空間が姿を現したのだ。そして気付くと、いつ現れたのか分からない少女が、フェンスの上の少女と対立するように空中に浮かんでいた。
「見つけた見つけた見ぃ~つっけた☆ 異質の王族連行者。貴方さえ抑えれば、あとはフレイア様の肩の荷が一つ落ちることになる」
少女は歌うように言い、しかしその言葉には明らかに悪意と言えるものが込められていた。
「アリス・クェーサー。悪いけど、ここで潰されて頂戴ねぇ☆」
アリス・クェーサー。フェンスの上に立っている謎の少女はそう呼ばれたのだ。
The ☆急・展・開☆!ww
なんだかむりくり話を進めましたが、こうでもしないと話進まないんですよ(^_^;)(そんな小説がいつまで続くのかどうか……w)
次回はいつになるか分かりませんが、極力近日執筆しようと思っています。
それでは、スタコラサッサ(((((((((((((;・ ・)