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プロローグ
春空の下、今にも尽きてしまいそうな[命]が一つ。
その目に映るのは、青空に流れる白い雲… 大きな木… 赤い鳥居…
しかし、[命]にはそのすべてが何なのかわからない。
ただ見つめるだけの物。
自分が何者なのか、なぜここに在るのかさえもわからない。
ついさっきまで確かにあった、あの温もりは… もうない…。
「ごめんよ…」
最後にそんな声を聞いたのを覚えている。
意味はわからないけど、大好きなあの声…。
[命]は小さく泣いた。
小さく… 小さく… 誰にも聞こえないくらい小さな声で…
寂しいよ…
悲しいよ…
苦しいよ…
[命]は静かに目を閉じた。