⑦泣いても泣いても、終わらない。
ささやかなあたしの反抗に対する姫の報復は、それはそれは見事だった。まず、自分用に確保していた数人をチームから外し、ひとつに集め出した。
性格がきつくてみんなから恐れられている野球部男子を筆頭に、サッカー部のもてもてエース、女子嫌いで有名な水泳部の新鋭などをつぎ込んで男子だらけの最強チームを作り上げた。あげく、六人目に選んだのは運動音痴の水嶋花梨……つまりあたしだ。
「なんで水嶋?」
またしても、あたしの大っ嫌いなことばでホームルームは終了。なんで水嶋、だって。なんで? そんなのあたしが聞きたいわ。
「あのさ、その……ごめん。ぼくのせい……だよね?」
クラス委員の徳島祐が、目も合わせずにうつむいた。
「ううん。違う。だってそっちのほうも……ヒドイもんでしょ」
ほんの少しあたしに構ったばっかりに、徳島祐はギャル系女子ばかりの恐ろしくはでなチームに黒一点として入れられた。びくびくしながら彼女たちに付いていく後ろ姿を見送りながら、あたしはこれから待ち受けている練習を思って、ため息を取り落とした。
「カジ君! 練習して帰ろうよぉ」
姫の甘ったるい誘いをけって、梶間は「ごめん」と片手を上げた。
「まだ引越しの整理が終わってないんだよね」
「あ。じゃあ、手伝うよ?」
いいって、と梶間はするりと教室を抜け出していく。手馴れたものだ。梶間はクラスじゅうと仲良くやっているように見せかけて、それでいて深いところにはけっして踏み込ませることはしない。
「水嶋! おい、聞いてんのか! 行くぞ、練習だ」
太い声音の野球部男子が、あたしの首根っこをつかむ勢いで腕を伸ばした。首をすくめながら慌てて駆け出そうとするあたしに向けて、今度はサッカー部のもてもてエースが口をはさむ。
「ちょっと、おまえさ。そのかっこうでバレーする気? マジで? かんべんしてよ」
くすくすくす、と梶間に逃げられた姫が意地悪く笑った。
「おれたち先に行ってるから、着替えてこいよ。すぐにな!」
水泳部の新鋭が、にこりともせずに命じてきた。
その後の練習は最悪だった。ジャージに着替えたあたしに向けて、わざわざ水の入ったバケツを抱えた姫の手下が体当たり。びしょぬれになって再び制服に着替えたころにはずいぶん時間が経ってしまい、さらに「着替えていない」あたしを見た男子らの怒りは頂点に達した。
「なんなの、おまえ? 何がしたいの?」
「ごめ……」
「いいから、さっさとコートに入れよ」
唇をかみ締めながら白球を目で追ったが、彼らは一様にあたしなんかにボールを回すことはしなかった。