第二話 再生
「大丈夫?凄くうなされてたよ」
「ああ…」
「マジで大丈夫か幸?」
僕はどうやら寝ていたらしい
起こしてくれたのは同じクラスの東山 由理と乃木 悟だ
二人は中学の時からの友達で、友達がいない僕に声をかけてくれた
「……由理…今、何時限目?」
「えっ…今、二時限目の終わりだけど……」
……………
さっきの夢のせいか余り考えられない
「……また寝るよ……」
「え〜!また寝るの〜?」
「うん…」
「先生にはオレから言い訳しといてやるよ」
「ありがと」
そう言ったきり僕は寝てしまった
◆
「おい!起きろよ幸!」
「んっ」
目を開け、頭を上げると前に悟がいた
「飯食おうぜ!」
悟は右手に購買部の焼きそばパン、左手にはコーヒー牛乳これも購買部で買った物だろう
「今…昼か……」
「そうだぜ!」
相変わらず飯どきになるとハイテンションだな
「あれっ?由理は?」
「んっああ由理は愛しの人の応援だよ」
「またあのヒモのか……」
僕がヒモと呼んでいるのは隣のクラス…2年2組の朝無 皆斗髪が黒くってまぁ僕と変わんないが何を考えているのか分からないやつだ
しかし
背が高く、イケメンで毎月行われる[モテ男ランキング]は絶対一位を取るってやつ
「今日は誰と戦ってんの?」
僕は前の席、名前は確か……忘れた……が座ろうとする悟に訪ねた
「今日?えっとなぁ…下登高校の矢野と戦るみたいだな」
下登高校はこの学校から北にある高校で特に不良が集まる高校だ
(矢野っていうと下登高を仕切るあいつか)
「どうする、あとで行ってみるか?」
スクールバックからパンとコーヒー牛乳を取り出した僕に悟は聞いてきた
「…べつにいいけど…どうせまたヒモが勝つだろ」 「けどあの矢野がやられる姿、見たくないか?」
「…まぁ多少は…」
「じゃあ決まり!早く食おうぜ、終わっちまうかもしれね〜からな」
「早く食えよ」
僕は悟が話していた時、全部食ったから、悟が食い終わるのを待つだけだった
◆
飯を食い終わった僕たちは体育館に向かっていた
縦横が60メートルあり高さが30メートルある体育館だ
悟が中を覗いた
「おお〜やってるやってる!」
「早く入れよ!」
悟は中に入った、そのあとを続くように僕も中に入る
奥の席が空いていたので指を指し、悟にアイコンタクトをとった
悟は頷き移動する
席を見ると後ろの席に由理がいた
「なんだ幸たちも見に来たんだ」
由理はふーんという顔でこっちを見ている
「矢野の最後を見に来た」
悟は返事をしてから席に座った
僕も無言で座った
皆斗の戦ってるのを観戦していると少し不自然に思ってきた
(皆斗…本気で戦ってない?)
そう思っていると周りから歓声やら悲鳴やらが聞こえてきた
「キャアァァァァァァァァどうしよう幸、悟、皆斗様がやられちゃった…」
!!!!
「へ〜あの皆斗が珍しいな」
「…だな…」
「ちっなんだよ天草最強がこの程度か、話しなんね〜な」 ヒモを倒した矢野は威張った
(よく言うよ、息切らしてるくせに…)
観客席から矢野の部下と思われるやつが矢野の横に立った
「じゃあ約束通り女は貰ってくぜ」
この喧嘩は何かを賭けていたようだ
「そ・う・だ・な、あの女なんてどうだ」
矢野は僕の方に指を指す
(僕は女じゃないから…僕の後ろか…)
今、座ってる席は2列しかないから前という選択肢はない
僕は後ろを確認した
………
(由理じゃあないか…)
「へい、ただいま」
どこに潜んでいたのか分からないが由理の後ろに、下登高の不良が由理を掴んで矢野のとこまで持って行く
「いやっ嫌ぁ!助けて幸、悟…」
「待って下さい!」 僕の声が体育館全体に響き渡る
「彼女は僕の…友達なんです。彼女を返して下さい」
僕は言いながら矢野のとこまで歩み寄る
おかげさまで下登高、ギャラリーからはがん見だよ
「オレと戦ろうってのか」
「返してくれないっていうのなら」
「おもしれ〜いいぜけど戦るなら賭けだ」
「お前が勝てば、この女はやる、だがオレが勝てば…お前、オレの奴隷にでもなってもらうか」
「いいでしょう」
「んなっやめろ幸!リスクが大きすぎる」 悟が止めてくれたが、僕は止まらなかった、止まりきれなかった。 理由なんて分からないけど、友達が…他のやつの賭け事なんかで取られるってなんだよ…
(ふざけるな!)
前は用意ができたらしく、矢野は僕が構えるのを待っていた
「…悟……ごめん…けど…戦るからには…勝つ!」
僕は多分100人以上いるギャラリーの中、なんの恥ずかしがりもなく断言した
グッと僕が構えるのを確認した矢野は右肩を突き出し、こっちに突進してきた
「別れの言葉はあれだけでよかったのか?」
「………」 矢野の突進は遅く、誰でも避けられる程の速度だ
右に避けた僕だが、矢野は止まらない
壁に激突した矢野は、激突した衝撃で舞った砂ぼこりに埋まってしまった
徐々に矢野が見えていくにつれて僕の驚きも増す
(なんだあの穴は?)
そう矢野がぶつかった壁に穴が空いていた、そう大きくはないが貫通していた
(あの速度で穴が空くってなんだよ…けど避けたのは正解だった)
もしガードしていたらと思うと恐怖感が……いやまず勝つことだけを考えよう
矢野は僕が恐怖を払っていると矢野は殴り掛かってきた
「うおおおぉぉぉぉ」
大振りだが速い拳が僕の顔面目掛けて飛んできた
紙一重で避けるが風がまた恐怖感を覚えさせられる
それは顔に出ていたらしく矢野の口元がニヤつく
一旦、距離をとったが矢野は右肩を突き出して突進してきた
(最初にしていた時より遥かに速い!)
足が着くと僕は高く跳ぶ
だが
矢野の右肩が僕の左足首に当たる
!!!
左足首にかなりの激痛が走った
「うああああぁぁぁぁぁ」
顔面から地面に落ちた僕は直ぐさま左足を見る
足には何もなってなかったが指に力が入らないほか、何もかも動かない
立ち上がろうとしたが左足に激痛が走り崩れ落ちてしまう
「けんは切ってないから安心しろ」
矢野が話し掛けてきた
「多分グチャグチャにはなったと思うからもう立てねーかもな」 そう言い残すと矢野は左手を拳に変える
走ってきた矢野は僕の目の前で止まり握った拳を下から上に上げる
右足で後ろへ跳び、ぎりぎりで避けた
しかし
矢野はそれを見破っていたのか右手に拳を作り、風を巻いて飛んできた
先程の突進同様、最初に比べて遥かに速い
(なっ!避けられない…) バキッベキッボキ……
無意識に右手で拳を押さえ込むようにガードするが、嫌な音が鳴りあまない
3秒ぐらいだったか、嫌な音は鳴りあみ矢野が後ろへ距離をとった
が
僕は右手を押さえながらその場で崩れた
激痛…そんなものより遥かに痛い
右手を見ると骨が少し露出していた
「ははっ俺のフルを受けきるやつがいるとはな」
もう勝ちを確認したみたいにニタニタ笑う矢野に僕は睨みつけた
「そう怒るなよ、そうだ耐えた褒美に一つ良いこと教えてやる」
「?」僕が首を傾げると矢野は勝手に説明を始めた
「オレはな…初めの一撃は充填の攻撃…次にフルの一撃をやるやつなんだよ」
よく…解らない…
横にいた下登高のやつは三人でサンドバックを持ってきた
「つまり…最初の一撃で充填し、次の一撃でキメる!」 サンドバックで説明してくれたのはよかったが中身の砂?が床に流れ落ちた
サンドバックの中身を見た瞬間また恐怖感が増した
僕は目を瞑る
そうすると殺られるイメージしかできなかった
………
目を開け、由理の方へ目をやると………由理は………拝んでいた…
それは自分の心配なのだろうか、それとも僕の心配なのかは……
!!? 由理の瞳から雫が落ちる、けど驚いたのはそのことじゃない
由理の顔があの夢の女の子と重なったことだった
僕はまた目を閉じ、鼻で笑った…そして…決意を改めた
その時、下から赤紫色の光が目に入った
?
下を確認すると負傷していた右手と左足首にゲームで言う魔法陣が光る
このことに周りのギャラリーはきずいていないようだ
数秒…その魔法陣は消える
!? 今日は驚くことが多いがこれは驚かずにはいられなかった
再生していたのだ右手も左足も…グチャグチャだった右手も元通り、それよりか身体が軽い
そんなことを思っていると矢野を右手を拳に変え、突っ込んできた
「おいおい何よそ見してんだよ」 大振りを一撃を僕は跳んで矢野の背後へ避けた
そして両手を拳に変える
「これからが僕の反撃です」
矢野は瞬発的に振り向くが僕の攻撃が矢野を襲う
左パンチを矢野の横腹に当て、跳んでからの右回しげりを顔面に叩きこんだ
着地する僕に対し、矢野は顔を押さえながら後ろへ引いていた
元通りになった右手を拳に変えた
(よし!)
次の瞬間、その拳を矢野の腹にぶち込んだ
拳を振り切った時、矢野はぶっ飛んで背中を強打する
「ぐっ」 背中を強打した矢野は牙を剥いてこっちを睨んできた
その威圧感にさっき矢野が潰したサンドバックの横へ距離をとった
立ち上がった矢野はまだ睨み続けながらこちらへ突撃してくる
! 手を下にすると一つの手段を思いつく
(くそっ迷ってる暇はない) 下にあるサンドバックの中身を握り、矢野の顔面目掛けて投げ付けた
当然、矢野はガードするが少しだけ、けれど大きなスキができる
その瞬間、僕は矢野の首元に飛びつき、遠心力を使って倒れこませる
足で矢野の喉笛を押さえ、その場に叩きつけた
起き上がり矢野を見ると白目むいて気絶している
下登高の奴らは矢野の所まで寄り添ってきた
「ああ、早く病院に連れていった方が良いよ」
忠告聞いたのか携帯を取り出し電話する不良共
由理の方を見ると一人ポツンと座っていた
ゆっくりと由理に近く僕にギャラリーはガン見だ
実際には分からない、けど多くの視線を感じる
「……えっ…と……ただいま…」 照れ臭くてなんて言おうとしたのか自分でも分からない、ただ出て来た言葉がそれだった
「…………おかえりぃ」
由理は泣きながら僕に飛び込んできた
ギャラリーも拍手とか歓声等で盛り上げる
(えっ、何このノリ…由理を抱きしめれば良いのかな?)
僕は思ったことをなんの躊躇もなく実行した
した瞬間周りのギャラリー共は先程以上に歓声など奇声など悲鳴?などで盛り上がった
なんとなく心地良く、その日はあっとゆうまに過ぎていった
◆
放課後
夕日がもう見えなくなりかかっていた頃
僕は悟が「もう棚がいっぱい余ったからやる」と言われたAVを見ていた
普通の作品でこれと言って特徴のないAVだ
だが、僕にとってはかなり興奮する作品だった
(…興味本意で貰ったがこれほどとは…)
悟からは色々と貰うのだがAVは初めてだった
目を泳がしていると時計に目がいった
7時48分だった
時間を見た僕は悟が言いだした[幸の初勝利パーティ]のことを思い出した
(あれって確か8…時……)
会場は悟ん家でこの家からは50分はかかる
それがわかると制服のまま飛び出していた
(あっ…鍵かけんの忘れた…まぁいいか)
家に誰かいるわけではない
只、我が家は天草高がある天無町に属してないという理由だけだ
天無町に住んでいる人はそこそこの金持ちぐらいだ、狙うならそいつらを狙うだろう
待て待て説明にひたっている暇はない
今はあと10分ちょいでどうやってたどり着くかが問題だ
タクシーを使っても30分はかかるというこの状況の打開策を走って考えていた
ここから天無町に行くには川原にある橋を渡らなくてはならない
天無町は町の周りに川が円のように囲まれていて、その円の内側が天無町だ
しかもこの橋、長さ4.5mという長……ん…
橋の中間辺りに黒い影が2つ…この時間では有り得ないのだが…
近くにつれ影ははっきりしてくる
!!
余りにも予想外過ぎて驚いた
一人は女性、年齢は20〜30歳ぐらいの女性だ
もう一人?はデーモン…多分オス…かな?
僕が近くのにきずいたのか女性はこっちへ走ってきた
「た…助けて…」
女性は助けを求めるが自分も急いでる立場だ
てかそんな絶望の果てみたいなのを押し付けないでほしい
女性は僕の目の前までくる、がそれは首がない身体だけの人…死体だ
女性の身体は前へ…俯せの状態で倒れる
そして背中の心臓辺りから蒼い魂が出て来て
デーモンはそれをわしづかみし口へ放り込んだ
しりもちをついた僕に絶望の果てはきずいていない
クチュックチャックチュックチャッ……
デーモンは口の動きを止めた
「うえっまずっ……」 (吐いたー!)
デーモンは多分、胃の中まであったものまで吐いた…のだと思う
(うえっ気持ちわりっ) 吐いたものを見たが目玉とかが余裕で3つ見つけられるぐらいだ
「あの女、俺に何喰わせやがるんだ」
(殺したのはあんただけどねー)
「んっもう一人いるじゃねーか」
こっちにきずいたデーモンはどこと無く懐かしく思った
(…あ……れ……)
「なんだお前逃げないのか?」
そう言ったデーモンは口を開いた
と言っても人の顔を丸呑みできるぐらいだ
「うわぁぁぁぁ!」 恐怖感…確かにそれもあるけど矢野戦の時よりはない…
何故?
(いや考えるより走れ!) 自分に言い聞かせ走ろうとするが、後ろから冷たい刃物のようなものが心臓を貫いた
(う…腕っ!?) そうそれは手刀というものだった
貫かれた腕は冷たかった、手にはさっき女性から出て来た魂の形をしたものがわしづかみされていた
しかし
それは女性と同じ蒼い魂ではなく紅く輝いた魂だった