私が映っていた
家に帰った瞬間、スマホが鳴った。
家に帰った瞬間、スマホが鳴った。一件』
再生すると、水の音が響いた。
映っていたのは、トイレで虐められている私だった。
「虐められる方にも悪いところがあるから、虐められるんだよ」
そんな台詞何回も聞いた
じゃあどうすればよかったの?
応えてくれる人はどこにもいない。
最初は無視から始まった、くすくす笑われたり、昨日まで友達だと思っていた子にも無視された。
次は教科書に落書きされたり、破かれたり、挙句の果てには捨てられたりした。
靴を隠されるなんて当たり前、そのうちどんどん悪化してきて、殴られたり蹴られたりお金を盗られるようになった。
今では裸の写真を撮られて、毎日ネットで晒すと脅されている。
素直に従っていれば、そのうち収まるだろうと鷹を括っていた頃の自分を殴りたい。
自分の子が虐めに合うような子だと、悲しませたくないから、親にはもちろん言えないし、兄妹にも言えない。
親友はもう親友じゃなくなってしまった。
毎日毎日虐めてくる奴等を呪っている、見捨てた親友のことも呪っている。
担任に相談したこともあった、もちろん今の現状を見ればわかる通り、何一つ解決に動いてくれなかった、私が自殺でもしたら世間から叩かれろ!
これぐらい思っても問題ないだろう。
やっと下校時間が来た、いつもの後は誰よりも早く教室を出て、家に帰れるようにしている。
私は家が大好きだ、家しか安心できる場所はない。
帰り道家の近くまで来たところで、私の好きな里芋の甘辛煮の匂いが仄かに漂ってきた。
玄関を開けるともっと強く香る、母の
「おかえりなさい」
の声に思わず涙が出そうになる。
「ただいま!今日の晩御飯は里芋の甘辛煮でしょ?」
そういうと母は
「ばれたか、黙って喜ばせたかったのに」
と舌を出した。
やっぱりここだけは私の安全地帯だ。
手を洗って階段を昇る、私たち兄弟の部屋はみんな二階にある。
私は部屋のドアを開けて鞄を放り出して、ベッドに飛び込む。
布団からはお日様の匂いがした、ふとベッドの隅を見ると、鞄から取り出していないはずのスマホが置かれている。
あれ?と思いながらロックを解除する。
録音が一件入っている。
「あははは それ以上やったらばれるっしょ、どうせばれても誰もなんにも言わないって!」
なぜこんな音声が入っている?
私は録音などした覚えがなかった、記憶を消すように思いっきり頭を振って、シャワーを浴びることにした。
シャワーの後部屋に戻るとスマホは消えていた、あれ?と思い鞄を開けてみると、そこにはスマホがあった。
ストレスのせいで錯覚したのかもと思い直す。
晩御飯の時間になったので階段を降りていくと、すでに家族は揃っていた。
父、母、兄、妹、私。
我が家は五人家族だ、家族仲はとてもいい。
両親はいい意味で放任主義、兄は妹たちに優しく、私達妹は兄を慕っている。
「いただきます」
みんな揃って言うと、大好きな里芋の甘辛煮から食べた。
甘辛くていつもの母の味で、とても美味しい。
「お母さんの里芋の甘辛煮はやっぱり美味しすぎる!」
みんな賛同するようにこくこくと頷いていた。
部屋に戻ると大好きな推しのインスタをチェックする、今日は更新されていた。
それだけで少し幸福度が上がる。
そのままスマホを触っていたら、いつの間にか寝てしまっていた。
~♪
推しのいるグループの曲が大音量で流れる、慌てて止めてから時間を見ると午前三時
設定した覚えのないアラームが鳴っていた。
頭に疑問符を並べながら、そのままもう一度眠った。
翌朝母はいつもの通りお弁当を作ってくれている。
私は、いつも通り手早く身支度を整える。
お兄ちゃんと妹も降りてきた。
「おはよう」
と声をかけると、
「おはよう!」
と返ってくる、こんななんでもない瞬間が、嬉しくて仕方ない。
脚は重いが、学校へ行く時間だ。
登校するなり虐めっ子達に机の周りを取り囲まれた。
くすくす笑い合っている、どうせろくでもないことなんだろうけど。
椅子に座ると大量の画鋲が貼られていた、あまりにも痛くて思わず、
「つっ」
と声を出すと、教室中で手を叩きながら大笑いしている声が聴こえる。
こんな幼稚な真似よくできるね!
言いたいけどやっぱり言えなかった。
とにかく画鋲が刺さった場所が痛くて堪らない。
休み時間に慌てて傷を見ようとトイレに駆け込んだ、そこには虐めっ子達がいた。
有無を言わさずトイレの水を飲ませようとしてくる、逃げ出そうとしたが数人に頭や手を抑えられて、逃れられない。
すると突然担任の声がした。
「何を騒いでるの?」
ちらっと私の姿を見た後、視線を外に戻し、
「程々にしておきなさいよ」
という声だけを残して去って行った。
誰も助けてくれない、私はトイレに思いっきり顔を突っ込まされた。
やっと放課後だ、今日はいつもよりましだった。
帰宅すると母のメモがテーブルに置いてあった。
「買い物に行ってくるね お母さんより」
私はトイレに汚染された制服を慌てて洗濯機に放り込むと、自室に干した。
その時スマホが鳴った。
「一件」
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