よくある「妹の具合が悪いからキャンセルで!」と婚約者が言う話
なろう界隈で、よくある話…よくある?
今回も名前借りました。
ありがとうございます
兄に、婚約者ができたらしい。
彼女…パルシィは私の部屋まで、婚約者になった、と挨拶に来てくれた。
私ゼノンは、身体が弱く、しょっちゅう熱を出す。
ベッドからほぼ出られず、社交もしていない。
だから、友だちもいない。
そんな私に、わざわざ挨拶に来てくれるなんて、なんて優しい人なんだろう…。
兄レックスと並ぶ、婚約者のパルシィ様。
お義姉様と呼んて良いと言ってくれた。
また見舞いに来るね、と言ってくれた。
社交辞令だとしても、嬉しい。
季節の変わり目などに、手紙をくれる。
本当に優しい人。
早くお兄様と結婚しないかなぁ…?
私は、ベッドにほぼ寝たきりのお荷物だけど、優しいお義姉様なら、このまま家にいても良いって言ってくれるかなぁ?
ある日、お義姉様がお見舞いに来た。
「具合が悪いって聞いたわ。大丈夫?」
「お義姉様!ありがとうございます!」
私がお礼を言うと、お義姉様はキョロキョロしながら
「…レックスは?」
と、聞いた。
「お兄様?一緒じゃないの?」
「今日は、デートの約束していたのに、ゼノンが具合が悪いから、キャンセルって連絡が来たの」
「え?私今日は、そんなに具合悪くないよ?…どこ行ったか知ってる?」
私は、側にいたメイドに聞いてみた。
「少々お待ちください。他の者に聞いて参ります」
メイドは、部屋を出ていった。
しばらくして戻ってくると
「坊ちゃまは、お洒落してお出掛けされたようです」
と、言った。
「どういう事?」
私もお義姉様も、首を傾げる。
「他に何か用事ができたとか?」
「でも、それなら私が具合悪いからなんて言うはずはないし…」
しばらく考えたが、分からなかった。
「パルシィ!お前とは婚約破棄する」
とある夜会会場の真ん中で、レックスが叫ぶ。
レックスの隣には令嬢がいた。
婚約者のパルシィは、冷静に
「理由をお聞かせください」
と言った。
「理由だと?お前がポルカをいじめたからだ!」
「ポルカとは誰です?」
パルシィは、首を傾げた。
「惚けるな!ここにいるポルカだ!この性悪女め!俺に愛されなかったからと、ポルカをいじめやがって!」
レックスは、ポルカの肩を抱いた。
「婚約破棄はお受けします。ですが、有責はそちらです」
パルシィはレックスに手先を向ける。
「はぁ?何を言っている。有責はお前だ!」
レックスは、パルシィを指差す。
「レックスの婚約者は、私です。レックスは、そちらの方と浮気をしました。つまり、レックスが有責です」
「ポルカをいじめたお前が有責だ!!皆もそう思うだろう?」
レックスは、周りの貴族達に呼び掛ける。
呼び掛けられた貴族達は、戸惑い半分、興味半分だが、何も言わない。
「レックスは何度も、私との約束がありながら『妹が具合悪いから今日はキャンセル』と、当日にキャンセルの連絡をしました」
パルシィの発言にレックスは
「病弱な妹が大切だからな」
と、良い兄の振りをする。
「その妹さんのお見舞いに行ったら、レックスはいませんでしたよ」
「は!?お前!ゼノンが具合悪いから見舞いはやめろと言っただろう!」」
「どうしてお見舞いはダメなんです?」
「人に会えない程に具合が悪かったからだ!」
「ゼノンは、起き上がってましたよ」
「はぁ!?」
「レックスはどこへと聞いたら、お洒落してお出掛けしたとメイドが言ってましたよ」
「用事が、用事ができたんだ!」
レックスは、しどろもどろになった。
周りの貴族は、怪しむ目をしてレックスを見ていた。
「妹の具合が悪いとキャンセルしたのに?」
「キャンセルした後に、急用ができたんだ」
「具合が悪い妹を置いて?」
「そっ…そうだ…どうしても外せない用事で…」
「そちらの令嬢と会ってた訳ではないのですね?」
「!!」
「そちらの令嬢と会ってた訳ではないのですよね?」
焦るレックスとは対照的に、パルシィは冷静だ。
「それは…」
「それは?」
「それは…」
「レックスがよく行くカフェの店員さんが、レックスと令嬢が仲良くお茶してたって言ってましたよ」
「は…?」
「店員さんを連れてきて、その令嬢かどうか確かめてもらいましょうか?」
「ななな何で…?」
レックスの顔が青くなる。
「先にあった私との予定をキャンセルしておきながら、出掛けていたのです。具合が悪いはずの妹を放置して出掛けた急用は、どこのどなたか…ハッキリと皆様に申告していただけますか?」
「そそそそれは…」
「やましいことはないのでしょう?」
「ももも勿論だ」
「では、どうぞ」
レックスは、周りの貴族達をキョロキョロと見回す。
どう見ても、挙動不審だ。
「言えないのなら、レックスが有責でしょう。浮気したのだから、慰謝料は払ってもらいますね。そちらの令嬢にも」
パルシィは、冷たい目でレックスを見る。
「「慰謝料!?」」
レックスとポルカは目を見開く。
「それから、私に、そちらの令嬢をいじめたと冤罪をかけたのですから、賠償金も払ってもらいますね」
「「賠償金!?」」
「実は、浮気の件は、両家に報告済みです。レックスが婚約破棄を宣言するであろう事は予想済みだったので、レックス有責で既に婚約破棄されています」
「は!?」
パルシィの言葉に、驚くレックス。
「レックスは、廃嫡されるそうです」
「廃嫡!?」
「このような場所で婚約破棄宣言されるような非常識な人に、領主は無理ですもの」
「そんな…」
レックスは、膝をついた。
「え?レックスは当主になれないの?ならもう付き合わない!」
ポルカが叫ぶ。
「は!?ポルカ、何を言ってるんだ?」
「跡継ぎだから付き合ったのに、廃嫡されるならいらないわ!」
「なんだとっ!」
レックスとポルカが掴み合う。
主催者の侯爵が
「このような場所で問題を起こして…連れて行け!」
護衛に言い、レックスとポルカを会場から連れ出した。
「侯爵様!皆様!大変失礼いたしました。お騒がせして申し訳ありません」
パルシィは、侯爵や、周りの貴族達にお詫びする。
「いや。君は悪くない。大変だったね」
侯爵が慰めた。
「皆様、気を取り直して…そして、こちらの令嬢の勇気ある立ち回りに敬意を評して乾杯しましょう」
会場の人々が飲み物を手に取り、全員に飲み物が行き渡った所で
「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
全員で乾杯した。
パルシィは、浮気男の婚約破棄宣言を切り返した才女として、社交会で評価が上がった。
浮気男ことレックスは、領地の片隅で、細々と暮らすことになった。
持っていた財産は、パルシィへの慰謝料になった。足りない分の慰謝料と賠償金は、家が払った。
レックスという跡継ぎはいなくなったが、レックスとゼノンの従兄弟が養子に入り、跡継ぎとなった。
ポルカは、婚約者がいる男に手を出した挙げ句、相手が廃嫡になった途端に別れた最低女として有名になり、婚約の申し込みがなくなった。
社交会で爪弾きにされたので、これ以上の家への悪評を避けるため、借金してパルシィへ慰謝料を払い、ポルカは修道院へ送られた。
「もう、お義姉様と呼べないのね…」
ゼノンが、寂しそうに言う。
「その事なんだけど」
ゼノンの見舞いに来ていたパルシィは、ベッド近くの椅子に座りながら
「貴方の従兄弟のメテオが跡継ぎになったでしょう?」
と話しだした。
「うん」
「メテオと、婚約することになったの」
「え?!」
「だから、また、お義姉様と呼んでもらえるわ」
「本当に!?」
「えぇ」
ゼノンとパルシィは抱き合った。
「ゼノンが、レックスが浮気しているかもって言ってくれなかったら、私は酷い目にあっていたかもしれないわ」
「メイドがね、香水の匂いがするって言ってたから…でも、本当に浮気していたなんて…酷い兄でごめんね…」
「大丈夫よ。お陰で浮気男と結婚せずに済んだし…メテオは…優しいから」
頬を染めるパルシィ。
「そうだね!メテオ兄様は、1日1回は私のお見舞いに来てくれるし!全然お部屋に来てくれないお兄様とは大違い!小さい頃も、よく遊んでくれてたし、メテオ兄様大好き!」
「メテオのこと、教えてくれる?」
「うん!」
執務室で、父に領地経営を教わっているメテオに知られないように、2人でこっそりメテオの話をした。
読んでいただきありがとうございます




