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第六十三話:答えを奪う者



 沈黙は、破られた。


『……やっぱり』


 どこからともなく、声が落ちる。

 近くもない。

 遠くもない。

 耳ではなく、意識に直接触れる声。


『答えは、出ないよね』


 火の向こう。

 屋根の上。


 金色の瞳が、夜に浮かんだ。


『だって』

『大人は、選びたい』

『でも、責任は取りたくない』


 ルカの背筋が、強張る。

 来る。

 分かっていた。


『だから、こうする』


 次の瞬間。


 火が、跳ねた。


 今度は、見せるためではない。

 明確な方向を持っている。


「――っ!」


 アランが叫ぶ。

「防御陣形! 子どもを――」


 だが、間に合わない。


 火は、子どもの足元を舐めるように走り、

 逃げ道だけを、正確に塞いだ。


 囲う。

 閉じる。


『ほら』


 金眼は、楽しそうに言った。


『もう、考える必要はない』

『選択肢は、一つ』


 リディアの呼吸が、乱れる。


「やめて……!」


『やめないよ』

『だって、これは』


 一拍。


『君たちが、決めなかった結果だ』


 子どもが、小さく息を呑む。

 涙は、まだ出ていない。

 だが、震えが止まらない。


『守るなら』

『今』


『選ばないなら』

『失う』


 その視線が、

 三人を、順に射抜く。


 王子。

 宰相の器。

 覚えている者。


『さあ』


 金色の瞳が、細まる。


『誰が、責任を取る?』


 その瞬間。


 ルカの中で、

 何かが、はっきりと形を取った。


(……違う)


 これは、

 問いじゃない。


 選択ですらない。


(これは――)


 強制だ。


 誰かが、前に出なければならない。

 誰かが、火の中に入らなければならない。


 時間は、与えられない。


 夜は、もう、

 逃げ道を残していなかった。

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