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閑話ⅩⅢ:作戦会議の翌日は、だいたいこうなる

昨夜。


 王都の命運を左右する(かもしれない)作戦会議が行われた。


 緊張。

 覚悟。

 沈黙。


 ――そして翌朝。



「……眠い」


 ルカが言った。


 それだけで、場の空気が一気に崩れる。


「お前、徹夜か?」


 アランが聞く。


「だってさ」

 ルカは机に突っ伏したまま続ける。

「作戦立てた後に寝れる神経してたら、俺は今ここにいない」


「分かる」


 なぜか即同意するアラン。



 一方、リディア。


 普通に甘そうなココアを飲んでいる。


「……よく眠れました」


「なんでだよ」


 ルカが顔を上げる。


「普通逆だろ」

「作戦立てた後は寝れないだろ」


「慣れてますので」


「慣れんな」



 書類の山。


「で、これが今日やること」


 ルカが指で叩く。


「巡回表の見直し」

「物資補充」

「通行証の再確認」

「……あと」


 紙をめくる。


「“殿下の囮行動に伴う注意事項”」


 アランが目を逸らした。



「囮って言うな」


「じゃあ何て言う」

「“戦略的存在感の発揮”か?」


「余計腹立つな」



 リディアが、少しだけ首を傾げる。


「……殿下」


「ん?」


「囮役の注意事項に」

 紙を指す。

「“勝手に前に出ないこと”とあります」


「誰が書いた」


「私です」


「……はい」



 ルカが低く笑った。


「信用ないなぁ」


「当然です」


 即答。



 その時、扉の外から声。


「失礼します」

「朝食の準備が――」


 侍女が一瞬、空気を読みかねて固まる。


「……お邪魔でした?」


「いや、ちょうどいい」

 ルカが手を振る。

「殿下が囮やるって話してたとこ」


「言うな」



 朝食は静かに始まった。


 ――はずだった。


「……殿下」


 リディアが言う。


「火が起きたら、合図は鐘で?」


「いや、騎士の伝令で」


「鐘の方が分かりやすくないですか」


「混乱するだろ」


「では、私が走ります」


「それが一番困る」


 即座に二人同時。



 ルカは、スプーンを置いた。


「なぁ」


「何だ」


「作戦の話してる時だけ、まともなのやめろ」


「失礼ですね」


「失礼なのは事実だ」



 沈黙。


 そして。


 なぜか三人、同時に笑った。



「……変だな」


 アランが呟く。


「命の話をしてるはずなのに」


「こういう時ほど」

 ルカが肩をすくめる。

「笑ってないと、頭が持たない」


 リディアは、ココアを飲み干して言った。


「では」


 二人を見る。


「今日も、生きて帰りましょう」


「当たり前だ」


「その前提で動いてる」



 こうして。


 王都を揺るがす作戦の裏で、

 三人はいつも通り、

 どうでもいいことで言い合っていた。


 ――これもまた、

 戦場に立つ者たちの日常だった。

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