閑話ⅩⅢ:作戦会議の翌日は、だいたいこうなる
昨夜。
王都の命運を左右する(かもしれない)作戦会議が行われた。
緊張。
覚悟。
沈黙。
――そして翌朝。
◆
「……眠い」
ルカが言った。
それだけで、場の空気が一気に崩れる。
「お前、徹夜か?」
アランが聞く。
「だってさ」
ルカは机に突っ伏したまま続ける。
「作戦立てた後に寝れる神経してたら、俺は今ここにいない」
「分かる」
なぜか即同意するアラン。
◆
一方、リディア。
普通に甘そうなココアを飲んでいる。
「……よく眠れました」
「なんでだよ」
ルカが顔を上げる。
「普通逆だろ」
「作戦立てた後は寝れないだろ」
「慣れてますので」
「慣れんな」
◆
書類の山。
「で、これが今日やること」
ルカが指で叩く。
「巡回表の見直し」
「物資補充」
「通行証の再確認」
「……あと」
紙をめくる。
「“殿下の囮行動に伴う注意事項”」
アランが目を逸らした。
◆
「囮って言うな」
「じゃあ何て言う」
「“戦略的存在感の発揮”か?」
「余計腹立つな」
◆
リディアが、少しだけ首を傾げる。
「……殿下」
「ん?」
「囮役の注意事項に」
紙を指す。
「“勝手に前に出ないこと”とあります」
「誰が書いた」
「私です」
「……はい」
◆
ルカが低く笑った。
「信用ないなぁ」
「当然です」
即答。
◆
その時、扉の外から声。
「失礼します」
「朝食の準備が――」
侍女が一瞬、空気を読みかねて固まる。
「……お邪魔でした?」
「いや、ちょうどいい」
ルカが手を振る。
「殿下が囮やるって話してたとこ」
「言うな」
◆
朝食は静かに始まった。
――はずだった。
「……殿下」
リディアが言う。
「火が起きたら、合図は鐘で?」
「いや、騎士の伝令で」
「鐘の方が分かりやすくないですか」
「混乱するだろ」
「では、私が走ります」
「それが一番困る」
即座に二人同時。
◆
ルカは、スプーンを置いた。
「なぁ」
「何だ」
「作戦の話してる時だけ、まともなのやめろ」
「失礼ですね」
「失礼なのは事実だ」
◆
沈黙。
そして。
なぜか三人、同時に笑った。
◆
「……変だな」
アランが呟く。
「命の話をしてるはずなのに」
「こういう時ほど」
ルカが肩をすくめる。
「笑ってないと、頭が持たない」
リディアは、ココアを飲み干して言った。
「では」
二人を見る。
「今日も、生きて帰りましょう」
「当たり前だ」
「その前提で動いてる」
◆
こうして。
王都を揺るがす作戦の裏で、
三人はいつも通り、
どうでもいいことで言い合っていた。
――これもまた、
戦場に立つ者たちの日常だった。




