閑話Ⅺ:新年という名の、どうでもいい一日
新年。
それは、昨日まで山積みだった問題を、
なぜか一斉に「来年考えよう」にしていい日である。
◆
王立学院では、なぜか「初詣」が開催されていた。
「……ここ、どこだ?」
ルカが見上げた先には、
それっぽく飾られた中庭の一角。
「初詣用特設祈願所」
と書かれた紙が、風に揺れている。
「誰が許可出したんだ、これ」
「風紀委員長」
「俺かよ!!!」
◆
並ぶ学生たちは、なぜか真剣だった。
「何お願いする?」
「平穏」
「わかる」
「試験免除」
「現実的すぎない?」
リディアは少し考えてから、
静かに手を合わせた。
(……無事に、一年が終わりますように)
誰よりも切実だった。
◆
一方、セラフ。
なぜか賽銭箱の前で、
風が妙に落ち着いている。
「……?」
「大吉が確定している気がする」
「何その理不尽」
実際、引いた札は大吉だった。
「納得いかない……」
◆
ルカはというと。
「……凶」
「ですよね」
周囲の反応が温かすぎて、逆に腹が立つ。
◆
午後。
今度は「書き初め」が始まった。
「今年の抱負を一文字で!」
誰が言い出したのかは不明だが、
なぜか全員参加になった。
最初に書いたのは、リディア。
『責』
「……重くない?」
「現実ですので」
アランは少し悩んだ末、
『護』
「……殿下、ブレませんね」
「うるさい」
セラフは、迷いなく書いた。
『風』
「説明はいらないね」
「腹立つな」
最後にルカ。
しばらく筆を握りしめてから、
『無』
「今年もそれか」
「生きてるだけで上出来だ」
◆
夕方。
王宮では正月料理が振る舞われていた。
「……これは?」
「雑煮、に相当するものだ」
「何で透明なんですか」
「縁起がいい」
「誰基準で」
誰も深く考えないことにした。
ルカは無言で食べ、
一拍置いて言った。
「……今年も耐えた」
◆
その頃、年始手当の話題が出ていた。
「功績者に支給、だそうだ」
「計算大変そうですね」
書類の山を見て、全員が目を逸らす。
「減らないな……」
「正月ですから」
「そうだな……」
正月は魔法の言葉だった。
◆
夜。
一日の終わりに、皆で外を見る。
雪はない。
星は見える。
世界は、ひとまず静かだった。
「……今年も、色々ありそうだな」
誰かが言う。
「そうですね」
誰も否定しない。
でも。
今この瞬間だけは、
選択も、責任も、覚悟も、
少しだけ脇に置いていい。
正月だから。
それだけで、十分だった。
新年一発目の更新です!
というわけで、
正月はとことん遊びました。
本編は一切進みません。
安心してください。
初詣も書き初めも料理も、
深く考えてはいけません。
正月なので。
今年も、
選択と政治と恋が待っていますが、
今日は忘れていい日です。
改めまして、
今年もどうぞよろしくお願いいたします。




