閑話Ⅹ:王立学院と王宮の、とてもどうでもいい大晦日
大晦日。
それは、どんな国でも「何となく全部を後回しにしていい日」である。
◆
王立学院では、年越しの鐘を鳴らす準備が進められていた。
「百八回、だな」
「誰が数える?」
「……ルカでいいんじゃない?」
「なんでだよ」
即座に却下されるが、
最終的にルカが数えることになった。
「納得いかねぇ……」
◆
鐘は鳴る。
「一!」
「二!」
「三!」
「……今、何回目だ?」
「二十七」
「いや二十八だろ」
「風が一回多く鳴らした」
「風のせいにするな」
途中で完全に分からなくなり、
最終的には「多分この辺」で終わった。
◆
一方、王宮。
年末大掃除が行われていた。
「これは?」
「機密」
「これは?」
「もっと機密」
「これは?」
「それ去年の地雷案件」
誰も触りたがらない箱が、隅に積まれていく。
リディアは黙々と整理していた。
「……これは廃棄で」
「それも廃棄で」
「これは分類ミスです」
周囲が静まり返る。
「……君、こういう作業得意だな」
「普通です」
◆
夜。
年越しの宴(という名の軽食会)。
「これが、年越し料理だ」
「何で緑色なんですか」
「縁起が良い」
「誰基準で?」
ルカは一口食べて、静かに箸を置いた。
「……今年も生き延びた」
◆
アランは、窓の外を見ていた。
「静かだな」
「嵐の前、かもしれませんね」
リディアの言葉に、誰も否定しなかった。
◆
そして、鐘が鳴る。
何回目かは、もう誰も気にしていない。
ただ、年は越えた。
◆
「……来年も、色々ありそうだな」
「ですね」
それでも今夜だけは、
誰も剣を抜かず、
誰も選択を迫られず、
誰も血を流さなかった。
――大晦日だから。
それだけで、十分だった。
今年最後の更新です!
本編があまりにも本編なので、
大晦日は「何も起きない回」にしました。
鐘の回数は数えてはいけません。
料理の色も気にしてはいけません。
来年のことは、来年考えます。
今年も読んでくださって、本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、良いお年を!




