閑話Ⅷ:それぞれの平和(※なお本人不在)
リディア・アルヴェーヌが静かに部屋で思索に沈んでいる頃。
——学院は、いつも通り壊れていた。
「聞いた!?」
「何を!?」
「リディア様の婚約話!!」
「え、誰と!?」
「え、誰じゃないの?」
「全員」
「「全員!?」」
◆
中庭では、真剣な顔で議論が行われていた。
「つまり、殿下ルートと伯爵ルートが存在する」
「隠しルートは?」
「ルカ」
「「ルカ!?」」
その瞬間、遠くでくしゃみをしたルカが、
嫌な予感に背筋を震わせていた。
◆
一方、風紀委員室。
「……どうしてこうなる」
机の上には山のような書類。
『恋愛騒動に伴う秩序乱れ報告書』
『派閥抗争(※恋愛)』
『廊下での妄想会話禁止令』
「恋は取り締まれないのか……」
そこへ、ふらりと入ってくるセラフ。
「ルカ、疲れているね」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「?」
(無自覚!!!!)
◆
王宮・上層階。
「最近、学院が騒がしいな」
「若いというのは良いことだ」
「ところで、刺客の件は?」
「今はそれより、殿下の婚約の噂が……」
「誰とだ?」
「ええと……」
書記官、資料を確認。
「“不特定多数”です」
「………………」
「不特定多数?」
◆
購買部では謎の商品が増えていた。
・金色リボン
・青いスカーフ
・なぜか黒い羽根のチャーム
「これ何用?」
「“推し”用」
「誰の?」
「全部」
◆
図書室。
「リディア様って、どんな人?」
「優しい」
「強い」
「政治の獣」
「最後なんか混じってない?」
◆
その頃、当の本人。
静かな部屋で、机に向かい、
一人、真剣に考えていた。
(私は、どうしたいんだろう)
外の騒ぎなど、知る由もない。
◆
「ルカくん!」
廊下から声。
「中庭で“相関図”が完成しました!!」
「燃やせ!!!!」
◆
こうして今日も、
学院と王宮は平和だった。
——少なくとも、表向きは。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
……本編があまりにも重かったので、
作者が耐えきれずに息抜き回を挟みました。
完全に回復用です。
なお、
・婚約はしていません
・派閥も存在しません
・相関図は燃やされました
一番の被害者はルカです。合掌。
次回からは、また本編に戻ります。
恋と政治と選択が、ちゃんと続きますのでご安心ください。
深呼吸、できましたか?
できていれば幸いです。




