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幕間Ⅶ:王家に刻まれた禁忌

それは、王国でもごく一部の者しか知らない記録。


 王宮の地下三層――

 誰も立ち入らない古い書庫で、一人の学者が

 埃の積もった文献をめくっていた。


「……また、金眼の報告が出たか」


 金眼――

 王家においては“あり得ない”特徴。


 本来、王族は灰青か蒼の瞳を宿すのが

 “血の証”とされていた。


 だが、古文書にはひっそりと

 こう書かれている。


『かつて王家に、異質な光を宿す子が生まれた。

 金の瞳を持つ者は、“風”に嫌われ、

 “魔”に愛される』


「忌子の記録……本当に存在していたのか」


 学者は震える手で次の頁を開く。


『金眼の子は、王統に混乱をもたらすため

 歴史から消された』


「だが、消された“はず”だったのに……

 どうして今になって現れる?」


 学者は震えを抑えながら、

 最新の情報報告書を開く。


――“黒フードの男、金色の瞳を所持。

   リディア・アルヴェーヌ嬢を執拗に追跡。”


「……これは、偶然では済まぬ」


 ページの端に、誰かが走り書きした文字があった。


『彼は王家の“影”。

 だが、正統な継承権は持たない』


「影……?

 では何のために生かされた?」


 学者の問いに答えるように、

 風がひゅう、と書庫の奥で鳴る。


 古文書の末尾には、ひとつだけ言葉が残っていた。


『金眼の者は、“鍵”を求める。

 それを宿す者の魔力を――』


 最後の行だけ、黒く塗り潰されていた。


「鍵……まさか」


 学者は顔を上げ、つぶやく。


「“鍵を宿す少女”とは……

 リディア嬢のことなのか?」


 その瞬間――

 背後で、ふっと灯りが消えた。


「何者だ……!」


 振り向いた時には、

 すでにそこには誰もいなかった。


 ただひとつだけ、

 床に落ちていた黒い羽根だけが、静かに揺れていた。


(――金眼の男が動き出した。

  彼の目的は、リディア・アルヴェーヌ)


 そしてもうひとつ、

 学者は知らなかった。


 “王家の影”にだけ許された

 特別な任務が存在することを。


『鍵を手に入れた者は――

 王を超える』

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