閑話IV:殿下の恋路は監視対象
宮廷魔導師団の執務室。
朝一番から、なにやら空気が騒がしい。
「…………なぁ、聞いたか」
「聞いた聞いた。殿下、ついに“想い人”ができたらしいぞ」
「マジかよ!相手は誰なんだ!」
耳をそば立てているのは、ルカ・ヴァレンティン。
薄い青髪がぴくりと揺れた。
(想い人……?ま、まさか……リディア……!?
あの鈍感姫、何か言われてないよな!?
ていうか殿下、告白したのか!?)
内心、大炎上。
「いや〜、聞いた噂だと、宰相府にいる才色兼備の令嬢らしいぜ?」
「おい待て、それってまさか――」
ガタッ、とルカが立ち上がった。
(才色兼備で宰相府所属……リディア以外に誰がいる!
ちょっと待て、殿下!?何勝手に先越してんだ!?)
剣を掴みかけたところで――
「何をそんなに殺意マシマシな顔してるの?」
背後から、さらりと金髪。
いや、光を含んだ淡い金――王太子アランが立っていた。
「お、お前……!リディアに何をした!!」
「何も?まだ?」
「まだ!?ってなんだまだって!!」
ルカが殴りかかろうとした、その時。
「落ち着いて。
もし僕が彼女に無体なことをしたら、
あなた、泣いちゃうでしょう?」
「だ、だれが……っ!!」
そこへ――薄い紫の瞳をした青年が、
ひょい、と書類を抱えて乱入。
「おや、何の修羅場です?僕も混ざりましょうか」
セラフ・ノア=リュミエール、にこやかに参戦。
「混ざるな!!てか距離が近ぇ!!」
「ふふ、嫉妬ですか?」
「ち、違ぇよ!!」
ジリジリと壁際に追い詰められ、
距離2cmのところで――
「君たち、朝から仲がいいね」
当の噂の中心人物、
白い書類束を抱えたリディア・アルヴェーヌ本人登場。
……そして、しっかり誤解した。
「あっ……その……その……
アラン殿下……セラフ様……
ルカ……さん……その……
そういう関係、だったとは……」
「違う!!!」
三者三様に声が揃った。
「リディア、安心して。
僕は“誰にも邪魔されずに君を愛する”覚悟だから」
「お前が一番火種撒いてんだよ!!」
「では、殿下の恋路は――僕が監視しますね」
「監視すんな!!」
こうして。
恋と誤解と政局(?)が絡み合う
三つ巴どころでは済まない騒動が、
また一つ始まったのだった。
殿下の恋路は、常にライバルと誤解に監視されています。
誰が一番最初に“一手”を指すのか――
作者はポップコーン片手に見守る所存です。
次回、真面目な本編に戻る予定です(予定は未定)。




