第二十三話:王女の静かな介入
第二十三話:王女の静かな介入
学院の中庭。昼下がりの柔らかい陽光が落ちる。
リディアは授業を終えた帰り道、
隣を歩くアランの横顔をちらりと見上げた。
「殿下……お顔が、少しお疲れでは」
「問題ない。気にするな」
(気にしますとも!!!)
心の叫びは飲み込む。
そんな二人の前に――
風を切る軽やかな足音。
「――アラン」
凛とした、どこか鋭いその声。
振り返った瞬間、
「姉上!? なぜここに……!」
「あなたの様子が芳しくないと聞いたの」
微笑む女性は、アランとよく似た
深い金色の髪に、碧眼を持つ。
アスティリア王国 第一王女
アルヴィナ・アスティリア。
「学院視察という名目は一応あるけれど……
本命はそちらよ」
すらりと伸びた指先が――
リディアを指し示す。
「……っ!」
「ごきげんよう、リディア嬢。
弟の“運命の相手”」
天地がひっくり返った。
「ちょっ……!?」
「姉上!!!?」
「何か間違っているかしら?」
一切悪びれずに、王女は首を傾げる。
「そ、そんな……! 私と殿下は、その……!」
「アランは人のために無茶をする子よ。
あなたを庇って怪我をしたと聞いたわ」
「そ、それは……」
「あの子が誰かのために傷を負う時、
それが“選んだ相手”の証」
静かに、しかし断言する声。
アランの耳まで赤い。
「アラン」
「……はい」
「顔が真っ赤よ?」
「う、うるさい!」
姉弟のやり取りに、
リディアの心臓は限界値へ。
「ふふ。可愛いわね、リディア嬢」
「えっ!? か、可……!」
「アランをよろしくね」
「待て、誰もそんな話は――!」
「大丈夫よ。あなた、アランのことが好きでしょう?」
「~~~~っっっ!!!!」
盛大に破裂音が聞こえた気がした。
「おい姉上。勝手に決めつけるな」
「決めつけてないわ。“確信”よ」
その余裕しかない笑みに、
アランはぐっと言葉を詰まらせる。
「弟が泣いたら、私が責任持って攫って差し上げるから」
「攫うな!!!」
「攫われても困ります!!?」
そこへ――いつもの三人が遠巻きに見物。
「……俺の胃がもたれる要因が増えた」
「感情が渋滞している」
「姉さん、相変わらず強い……」
「そこの三人、聞こえてますわよ?」
ぴたりと視線が向けられ、一同硬直。
(……この人、敵に回してはいけない)全員の結論。
アルヴィナは微笑む。
その瞳は、優しくも鋭い。
「政治も恋も、盤上よ。
弟の未来は国家の未来」
アランの肩にそっと手を置き――囁いた。
「……あなたが誰を選ぶのか、楽しみにしている」
リディアの胸は、高鳴りすぎて息が苦しい。
(姉上……頼むから余計なことを……!)アランの悲鳴も虚しく。
――王女の静かな介入は、
恋の盤面に大きな波紋を投げ込んだのだった。
【後書き】
アラン最大の味方であり、最大の敵……
姉上がついに参戦しました!!
外堀どころか、埋め立て工事が始まったので
アランが逃げ道を探す暇はありません!
次回――「三つ巴宣戦布告」
恋と政治の火花が、ついに盤上で燃え上がる!!




