幕間Ⅰ 静かな夜の独白
夜会から三日。
王都の空は穏やかに晴れていたが、リディアの胸の中は落ち着かなかった。
王太子アラン・アスティリア――あの人の言葉が、耳の奥で何度も反芻される。
「君の理想を笑う者などいないさ。少なくとも、俺は。」
思い出すたびに、胸が締め付けられる。
政治的な駆け引きではなく、ただの一人の少女として、彼に見られたような気がした。
――その視線が、怖かった。
理想を掲げる自分が、揺らいでしまいそうで。
「私は、誰かに心を委ねるような人間ではない。」
自分に言い聞かせるように、リディアは窓辺に立つ。
王都の灯りが遠く揺れ、夜風が頬を撫でた。
その冷たさが、わずかに思考を取り戻させる。
王国にはまだ多くの問題がある。
陰謀の影、腐敗した制度、そして――王家の内部にも。
感情に流される余裕など、本来はないはずだった。
それでも。
アランの声を思い出すと、心が温かくなるのを止められない。
「……私は、何をしているのかしら。」
呟きが夜に溶けていく。
答えは出ない。
けれど、その小さな迷いこそが、リディアという人間を確かに形作っていた。
――理想と心の狭間で、彼女は静かに立ち尽くしていた。
【あとがき】
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今回の幕間は、リディアの“理想と感情の狭間”を描きました。
彼女はいつも冷静で理性的に見えますが、心の奥では確かに揺れています。
それは決して弱さではなく、人間としての温かさ――
前世で失ったものを、今世で少しずつ取り戻している証でもあります。
アランの存在が、リディアの中にどんな変化をもたらすのか。
そしてこの小さな迷いが、後にどんな選択へと繋がるのか。
物語はまだ静かに動き始めたばかりです。
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