閑話XVIII:白兎と侍女は、今日も主を甘やかす
午後の陽射しが、学院寮の一室をやわらかく照らしていた。
机の上には書類の山。
政治史、経済論、魔法法規。
そして、その中央。
「……あまい……」
リディアは、幸せそうな顔でカップを抱えていた。
湯気の立つココア。
砂糖たっぷり。
さらに、これでもかと浮かべられたマシュマロ。
完全なる糖分の暴力である。
「お嬢様……それはもう飲み物ではなく、液体菓子では?」
呆れ半分、微笑半分で言うのはミリエルだった。
「いいの。頭を使うと、糖分が必要なのよ」
「それは存じておりますが……限度というものが」
「大丈夫よ。三杯目だから」
「十分アウトです」
即答だった。
◆
足元でもぞ、と白い影が動く。
ふわふわの毛玉――ソラスだ。
ぴょん、と軽やかに跳ね、
当然のようにリディアの膝へ乗る。
「……ソラスも飲む?」
「お嬢様、うさぎにココアは駄目です」
「冗談よ」
くすっと笑い、耳の後ろを撫でる。
ソラスは気持ちよさそうに目を細めた。
金と銀のオッドアイが、光を反射する。
「……本当に、懐いていますね」
「ええ。私が座ると、必ず来るの」
「完全に主だと思われていますね」
「光栄だわ」
そのやり取りを見ながら、
ミリエルは小さく息を吐いた。
(……昔から、変わりませんね)
前世の記憶を持ち、
大人びて、
誰よりも理知的で。
それなのに。
甘いものを前にすると、
年相応どころか子供みたいな顔をする。
そして、小さな動物を抱くと、
とても優しい顔をする。
それが――
(私の、お嬢様)
◆
「ミリエル」
「はい」
「この後、購買に行きたいのだけれど」
「また甘味ですか?」
「……どうして分かるの」
「長年の勘です」
図星だったらしい。
視線が泳ぐ。
「期間限定の焼き菓子があるって聞いて……」
「……」
「……半分こする?」
「買いに行きましょう」
「早い」
結局、甘い。
主に甘い。
世界で一番、甘い。
◆
立ち上がった瞬間。
ソラスがぴょん、と肩に乗った。
「きゃっ」
「……同行する気満々ですね」
「ふふ、一緒に行く?」
白い毛玉が誇らしげに胸を張る。
まるで「当然」と言わんばかりに。
ミリエルはくすりと笑った。
「では、今日も三人で参りましょうか」
甘党の主と、
過保護な侍女と、
世界一ふわふわな白兎。
今日も、平和で。
今日も、穏やかで。
きっとこの時間こそが、
彼女にとっての――
いちばん大切な日常なのだろう。
はい、というわけで。
政治どこ行った。
陰謀どこ行った。
宰相令嬢とは???
……な、閑話でした。
だってさ。
だってさ???
リディア、
・激甘ココア一気飲み勢
・マシュマロ山盛り派
・うさぎ(オッドアイ)飼ってる
・侍女が過保護
とかいう属性盛り盛りセットなんですよ???
可愛いの暴力では???
書かない方が罪では???
そして我が家の癒し枠・ソラス。
まさかの「主の膝が定位置」系うさぎです。
完全に猫ポジ。
ちなみに作者の脳内では
ネザーランドドワーフの丸っこいフォルム+短い耳+もふもふ
=尊死兵器
です。
あれは生物兵器。
存在が可愛い。
あと地味にミリエル。
気付いたら「実質お母さん」になってました。
有能。
常識人。
ツッコミ担当。
でも最終的に主に甘い。
この人がいないと寮生活たぶん崩壊してます。
にど恋世界、
政治家と騎士と重感情男ばっかりなので、
この人が最後の良心です。
大事にしましょう。
さて。
次回はたぶんまた本編に戻ります。
(戻るよね?作者?)
糖分補給したので、
そろそろ金眼とか国家とか情緒破壊とかやります。
温度差ァ!!!
ではでは、
ここまで読んでくださってありがとうございました!
ソラスを撫でたい作者より。




