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風の使い手

目の前に4つ。

左から4つ右から4つ。

そして、上空からも4つ。


合計16の風刃輪ウィンドカッターが、私へと殺意の軌跡を描いて迫ってきた。


背後には逃げ場のない風牢エア・ケージ

もはや逃走という選択肢は、理論的に存在しない。

ならば、唯一の手段はーー模倣による迎撃。


目の前の風刃を、私が創り出した“パクリ風刃輪ウィンドカッター”で相殺するしかありません。


目前に迫る死の軌道。

そこで、ふと脳裏をよぎる。


突然ですが問題です。

私の魔力量は、吸収した分だけ。

つまり……風牢に触れただけで魔力を吸収できたのならーー


私は、全身の筋肉を低く沈め、前傾姿勢で地面を蹴った。


ーーいきます!


風を裂く。

私の放った四枚の風刃輪が、バルドルの4枚を正面から迎え撃ち、

金属のような音とともに空間を裂き、四つを粉砕した。

衝撃で砂塵が舞い上がる。


…そう、これが狙いです。


魔力は形を成して初めて目に見える。

つまり壊れた直後なら、まだ“形を失ったエネルギー体”…吸収が可能な状態にあるはず。


私は、割れ散った風刃の残骸へ手を伸ばした。

見えない。

けれど、勘で掴むしかない。

逃げるよりもーー魔力を。


ーーーピピ。

『同一波長のマナを検出。吸収プロセス開始。

現在のエネルギー値:80% → 100%。

20%のマナを再獲得しました。

補足:再構成可能ユニット数+1。』


……やっぱり!


理屈は正しかった。

攻撃を捌きながら魔力を回収できるーーこれならいける。


でも……あれ? 冷静に考えたら、いくら魔力を集めても勝てるわけじゃ……


そう思った瞬間、地鳴りとともに風が唸る。


バルドル「ーー…見事だ。

だが、それで終わりだ。

“風”とは本来、従えるものではない。

創るものだ。」


バルドルは両腕を広げ、笑いながら叫んだ。


「この俺様、上級魔法使いバルドル様が四十八年かけて極めた究極奥義ーー

《エアリアル・カタストロフ(Aerial Catastrophe)》!!」


空気が悲鳴を上げた。


4「おおおッ!! 出たァァァ!!バルドル様の神話級魔法だァ!!

周囲の酸素と圧力差を操り、真空嵐を形成する究極魔法!

風刃は数万層の流体で構成され、触れた瞬間に原子単位で切断される!

あれを喰らって生き残った奴はいねぇぇぇッ!!」


1「ぎゃはは! 終わりだな嬢ちゃん!」

5「兄貴マジで容赦ねぇっす!あの風に巻き込まれたら肉も骨も消し飛ぶっすよ!」

2「(……しかし、なぜバルドル様があのような大技を……ただの反逆者アウトローに……?)」


ーーーピピ!!

『危険レベルΩ。生存確率0.1%。

対象の衝撃波はあなたの肉体を粒子レベルで分解します。

復元不可能。再生限界を超過。

また、風牢により逃走経路は完全封鎖済み。』


……いいえ。行けますよ。


ルミは静かに息を吸い込んだ。


真正面から来るなら、都合がいいです。


体内の魔力をすべて一点に集束させる。

“風”を圧縮し、極限まで鋭利に…一本の線となるまで。


あの技……軌道を操れない。なら、正面を斬れば……


ーーーピピ!!

『理論的不可能。エネルギー差:1,000倍以上。』


……ですよね。

でも、私は笑った。


後ろに…魔力の塊がありますもの。


ーーーピピ。

『解析不能。対象は背後の風牢。だが吸収までの時間的猶予はゼロ。

到達は物理的に不可能です。』


……いつ、“後ろに戻る”って言いましたか?


ーーーピピ?

『??』


次の瞬間、ルミは圧縮した風刃輪を地面へ叩きつけた。


ーーードガァァンッ!!


爆風。

大地が裂け、地面に穴が空き、その中にルミの姿が消えた。

砂埃とと共に消えた姿。


バルドル「な……!? 馬鹿なッ!」

1「ど、どこ行きやがった!?」

4「おいおい、俺は見たぞ!!

逃げ場ゼロの状況で“下”を作りやがった!! そんな発想、ありえねぇ!!」


バルドルの“真空嵐”は風牢に直撃し、轟音とともに砕け散る。


ルミは地中から飛び出し、両手を伸ばした。

「ーー吸収!!!」


ーーーピピ!!!!!

『莫大なマナエネルギーを検出。

吸収プロセス成功。

現在のマナ値:400%オーバー。

再現可能スキル:《エアリアル・カタストロフ(Aerial Catastrophe)》取得。』


……そうですか。

ならーー使わせていただきますね。


ーーーピピ。

『発動承認。』


彼女の周囲の空気が歪む。

圧力差がうねり、酸素が音を立てて悲鳴を上げた。


「《エアリアル・カタストロフ》!」


形成された真空嵐は、バルドルのそれを凌駕していた。

流体層は倍、魔力密度は三倍。

もはや“風”というより、“存在そのものを切断する理”。


え、えっ?! ちょっと多くないですか?!


ーーーピピ。

『魔力量が倍化したため、自動で拡張構築しました。』


バルドルたちは、その圧力に膝を折った。


バルドル「……バカな……見ただけで真似できるはずが……」

5「兄貴の技が……コピーどころか進化してる……!」

4「精度も分配も完璧だ……魔力流動の偏りゼロ。完全体じゃねぇか……」

2「な、なんなんですか……あの方は……魔法を……超越している……」


……なんだか、申し訳ない気もします……


ーーーピピ。

『感情パターン“同情”検出。非合理的行動の兆候。抑制を推奨。』


は、はいはい……わかってますよぉ……


バルドルは震える声で手を挙げた。

「ま、待て! 待ってくれ! 

女性の方ーー!いや、“貴婦人”!

貴女の力……その再現性……貴族階級の血統魔法でなければありえん!

俺様の非礼をお許しくださいっ!

 無登録者…ましてや無断入国アウトローなど、きっと何かの手違いだろう! なっ、そうだろ?!」


1「そ、そうだよ!そうに決まってる!無断入国アウトローはそれは俺達の勘違いですよ!」

2「左様です……あの完成度は、ただ者ではございません。」

4「センスも戦闘理論も完璧……天賦の才ですぜ!」

5「きっと本当の無登録者はあの茶髪の兄ちゃんだ! 天使様も勘違いしてんすよ!」


……え? え、えぇ……強いだけで突然扱い変わるんですか?


ーーーピピ。

『高エネルギー反応接近。敵対フラグ上昇中。警戒モード推奨。』


えっ? な、何ですか?


4「おっ、天使様! この方、身分めっちゃ高ぇっす!再調査を…」


その瞬間、天使の赤い瞳が、4の顔を映した。

声は冷たく、どこか悪魔的だった。


天使「……庇う……無登録者……身分……

ーーーーー剥奪ストリップ。」

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