1話 この世界の全てが憎い
この世界は狂っている。
俺が“吸血鬼”だというだけで、蔑まれ、忌み嫌われ、差別された。
……それに、俺には幼い頃の記憶がない。
この世界には「五体の創造神」が存在する。
その中でも有名なのが二柱──混沌の神、秩序の神。
犬猿の仲として知られる、相反する存在だ。
俺は、その秩序の神ブレイブが設立した組織──
Luminous Security Keeping。略して《LSK財団》の名を、憎んでいる。
なぜなら、俺の両親は“人間保護”を最優先に掲げるその連中に殺されたからだ。
……理由は知らない。ただ、俺に残ったのは血と怒りだけ。
人類の全滅と破壊を目指す勢力も存在する。
名を《Ruin Destruction》。人々は恐怖を込めて、それを《RD》と呼んでいる。
そして今の俺は──謎の車の中にいた。
窓は黒く閉ざされ、外もわからない。誰に連れて行かれているのかも知らない。
ただひとつ言えるのは、LSKの連中ではなさそうだ。じゃあ、RDなのか?
……いや、それすらも分からない。
どうして俺みたいな吸血鬼を、生かしておく理由がある?
存在してはいけないはずの俺が、なぜ?
分からないことだらけだ。
でも、ひとつだけはっきりしている。
どうせなら──生きて、生きて、生き抜いて、
悔いなく死んでやる。