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華月

華月


――

 私が小学校低学年だった時、父親がいつも母親に暴力を振るっていた。

 喧嘩の理由は私にはわからなかったが、母親がいつも泣きながら謝っていたのを覚えている。

 

 私もたまに殴られたりして怯えていたのだが、ある時父親が階段を降りて行くのを二階から見つめていて

『今こいつを突き落とせばこの地獄から解放されるんじゃないか』

 と子供ながらに思い、私は父親の背中を後ろから思いっきり突き飛ばした。


 案の定父親はバランスを崩し階段を転がり落ちて行ったが大怪我までは至らず、父親は階段下で立ち上がると凄まじい形相で私の事を睨んでいた。


「何しとんじゃ!貴様はぁ!」


 父親の怒声が響き渡り、私は恐怖で体が強ばり動く事が出来ずにいた。父親は階段を駆け上がって来ると怯える私を容赦なく殴りつけた。

 一撃で私は床に叩きつけられたが、その後も父親は必要に殴りつけてきた。どれ程暴行が続いたかはわからなかったが気が付くと私は駆け付けた人に保護され、父親は警察に連行されて行く所だった。

 どうやら父親の怒声と衝撃音を聞いた近所の人が警察に通報してくれたようだった。


 私は保護され治療を受けながら

 『次はもっとちゃんとやらなきゃいけない。じゃないと今回みたいに痛い目にあってしまう。やるならもっと計画的に物事は進めなきゃいけない』

 と子供ながらに思った。


 母親はその後離婚し、私と母親は父親から逃げるように知らない土地へと引っ越す事になった。


 見知らぬ土地で私は自分を殺して周りを観察する事にした。転校してきた私が珍しかったのか色々な人が私に話し掛けて来た。

 その中で朱里ちゃんという女の子が印象に残った。

 朱里ちゃんは何かにつけて私に絡んで来ては世話を焼いてくれた。

 母子家庭で決して裕福じゃない私に対してお菓子をくれたり服をプレゼントなんかもしてくれた。

 その度に「ありがとう」と礼を伝えると、「別にいいわよ、大した事でもないから」と得意気な顔をしていたのを覚えている。

 そして周りから「朱里ちゃんは凄いね」「朱里ちゃんは本当に良い子だね」と言われてはいつも満足気な笑みを浮かべていた。


 私はそんな朱里ちゃんを見て、あぁ私をダシにして承認欲求を満たしてるんだな、と気付き人知れずほくそ笑んでいた。

 だから私は朱里ちゃんを逆に利用してやる事にした。私が何も出来ないような素振りを見せていると、しゃしゃり出て来ては世話を焼いてくれる。その小さな自尊心を満たす為に。


 何時しか私と朱里ちゃんはいつも一緒に過ごすようになっていた。


 その後、私達は高校生になっても関係はあまり変わらなかった。

 朱里ちゃんは彼氏が出来るといつも私に自慢してきて、如何に自分が愛されているかを私に話して優越感に浸っているようだった。

 そんな朱里ちゃんが少し鼻についた私は朱里ちゃんの彼氏を軽く誘惑してやる事にした。

 結果、呆気なくその男は私の誘惑に乗り朱里ちゃんに隠れて私との関係も続けるようにもなった。

 私に寝盗られてるとも知らずに変わらず彼氏の自慢話ばかりする朱里ちゃんが滑稽に映り、私は笑いを堪えるのに必死だった。


 その後も朱里ちゃんが彼氏を変える度、私はこっそり寝盗ってやった。だいたい朱里ちゃんが付き合う男はだらしない人達ばかりだったので簡単に関係は持てた。


 そして朱里ちゃんは斗弥陀義人という御曹司と付き合うようになった。

 私も朱里ちゃんに着いて行き、色んな斗弥陀の恩恵を受ける事が出来た。

 

 ずっと小さな頃から朱里ちゃんと一緒にいてストレスがない訳じゃなかった。だから何処かで利用して切り捨てるつもりだった私は、ここしかないと思い計画を練る事にした。


 まずはいつも通り誘惑してみると、今までの人達と同じように義人も簡単に乗って来た。

 あとはこのまま義人を自分のものに出来れば、後から朱里ちゃんが怒り狂おうが切り捨てれば関係ないと思っていた。


 だけどそんな時、義人に秋義さんという弟がいる事がわかった。

 秋義さんは義人に比べると誠実で見た目も私好みだった。

 私は義人ではなく、秋義さんに乗り換えようと決意する。だけど秋義さんには奏音さんという婚約者がいる事がわかり、私は悩んだ。

 

 どうすればいいのか?


 そして私はすぐに気付いた。奏音さんを排除すればいい。そして邪魔な朱里ちゃんや義人もついでに排除すればいいと。

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