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真相⑩


――数日後。

 その日、朝から叶は部屋で電話を掛けていた。


「――はい、そうですね、今日のお昼頃にこちらを発つ予定です」


「そうか、ならそれまでにそっちに戻って挨拶ぐらいはさせてもらうよ」


 電話の向こうからは秋義の落ち着いた声が聞こえていた。


「はい、私もお会い出来ればと思います。それで秋義さん、お願いしていた奏音さんの背中の件、確認してもらえましたか?」


「ああ、もちろん。鬼龍さんの言った通りだったよ」


「そうですか、わかりました。では後ほどお会い出来るのを楽しみにしています」


 電話を切ると軽く一息をついた。


「……やっぱりそうだったか」


 一人部屋で呟きソファで少し横になった。暫くの時間横になりながらスマホを触っていると部屋の扉をノックされ部屋の外からは池江の明るい声が聞こえて来た。


「鬼龍様、食事のご用意が出来ました。またいつでも食堂までお越しください」


「ありがとう、また後で伺います」


 叶が扉越しに伝えると池江の足音が離れて行くのがわかった。叶は鏡の前に座ると手早く支度を始める。

 暫くして支度を終えた叶はスマホを手に取り、幸太にメッセージを送った。


 (やっほう。ご飯食べに行こうかと思うんだけど支度出来てる?)


 幸太から返信を待つ間、叶はソファに座り思慮を巡らせる。


 今日もうすぐここを発つ訳だけど、志穂さんの情報、それに秋義さんの証言もふまえたら――。


「……やっぱり怪しいよね」


 一人ぼそっと呟くと同時に叶のスマホから電子音が響く。画面に目をやると幸太からの返信が来ていた。


 (ごめんいつの間にか二度寝してた。もうちょっとかかりそうだから先に食堂に行ってて)


 幸太からの返信を確認すると、思わず笑みが溢れる。


 (了解。夜更かししてた?じゃあ先に行っとくね)


 幸太にメッセージを送り一人食堂へと向かって行く。

 食堂に入ると既に何人かは揃っていた。軽く会釈しながらいつものテーブルに歩いて行くと既に志穂が座っており笑顔で手をひらひらと振っていた。


「志穂さん、今日は早いですね」


 軽く声を掛けて椅子に座ると志穂も笑みを浮かべる。


「ええ、まぁね。あら、今日は一人?」


「幸太君は少し寝坊しちゃったみたいです」


「あら、昨日遅くまで二人でいちゃついてのかしら?」


 ニヤニヤとしながら問い掛ける志穂に対して、叶は眉根を寄せて頭を振ると呆れたように小さくため息をつく。


「クライアントの屋敷で仕事中にそんな事しません。まぁいい加減飽きてもきたんで早く終わらせたいんですけどね」


「まぁそうね、何もないこんな森の中に閉じ込められるのもいい加減飽きたわよね」


 志穂が同調しながら頷いていると、叶が少し周りを見渡し、近くに誰もいない事を確認するとそっと顔を近付ける。


「そういえば志穂さん、少し確認したい事があるんですけど」


「あら、何かしら?」


「三条さんの遺体が朱里さんの毛髪や髪止め握ってたって本当ですか?」


 叶の問い掛けに志穂は意味深な笑みを浮かべて首を傾げる。


「どういう意味?」


「いくら朱里さんが激高してたとしても髪を掴まれたり髪止めを取られたら気付くんじゃないかなって思いましてね。あの日、皆が食堂で朝食を食べていた時、志穂さんだけいませんでしたよね?あの隙に三条さんの遺体の所に行って握らせたんじゃないですか?」


「ふふふ、それじゃあまるで私が証拠を捏造したみたいじゃない」


 笑みを浮かべる志穂に対して、叶も含み笑いを見せる。


「ふふ、確かにそうですね。まぁ私はどっちでもいいんですけどね。結果犯人はあの人達だし、そこに至るまでの道筋に私は大して興味無いですから」


「じゃあ、そんな事聞かないでよ。因みに鬼龍ちゃんその迷推理誰かに話したかしら?」


「言う訳ないじゃないですか。ただあの時、志穂さんの指先とズボンの裾に微かに土が付いてたから気になっただけですよ」


「ふふふ、なるほど……気を付けなきゃね」


「ふふふ、何をですか?」


「ふふふ……」


 二人揃って笑みを浮かべていると、少し遅れてようやく幸太が現れる。


「すいません、遅くなっちゃって。二人で何か楽しい事でもあったんですか?」


 笑みを浮かべる二人を見て、何か違和感の様なもの感じた幸太が問い掛けるが叶がすぐに満面の笑みを浮かべて首を振った。


「ううん、今日で最後だからちゃんと皆さんにお礼伝えてお別れしなきゃねって話してたのよ」


「ああ、確かにそうだね」


 納得した様に幸太も頷きながら腰を下ろすと、池江がすぐに歩み寄り配膳の準備を始めた。

 やがて食堂では義将や貴之夫妻に一人ぽつんと座る華月も加え、皆静かに食事を進めて行く。

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