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真相②


 叶が食堂全体を監視する中、まずは華月が席を立った。

 別々に動かれる事を危惧していた叶だったが、朱里は義人と歓談したまま動かず、神谷崎もテーブルで一人スマホを手にしたまま動こうともしなかった為、さり気なく幸太にメッセージを送る。


 (幸太君、今華月さんが食堂を出て行く。外に出て行かないか見ていて)


 メッセージを送り珈琲をゆっくりと口に運ぶと、すぐに幸太から返信が来る。


 (了解、今の所誰も外には出て来てないよ)


 まだ誰も動かないかな?――。


 叶が食堂全体を気にしながらゆっくりと珈琲を飲んでいると、十分程して朱里と義人が二人揃って席を立った。

 神谷崎はいまだスマホを見つめたまま席を動こうとはしなかった為、少し悩んだが朱里と義人に続いて食堂を出る事にした。

 食堂を出ると二人揃って階段を登って行く朱里と義人を目で追いながら、叶はゆっくりと正面玄関から外に出る。


 外に出た瞬間、灰皿のある方から視線を感じ振り向くと、凄い形相でこちらを見つめる幸太と目が合った。


「あっ、叶さん」


 少し安心した様な表情を見せる幸太に叶がゆっくりと歩み寄る。


「あのさ幸太君、今すっごい顔してこっち見てなかった?」


「えっ本当?ほら叶さんが誰か外に出て来ないか見ててほしいって言ってたからさ、誰か出て来た!って思ったら叶さんだったよ」


 そう言って笑う幸太を見ながら、誰も出て来なくて本当に良かったと、密かに叶は胸を撫で下ろしながら苦笑いを浮かべる。


 そのまま煙草をふかしながら幸太と談笑をしていると、暫くして叶のスマホが鳴り響く。

 慌ててスマホを手に取り画面に目をやると、そこには『着信、嵯峨良』と表示されていた。


 嵯峨良さん?――。


 叶が首を傾げながら電話に出る。


「嵯峨良さんどうしました?」


「あの、鬼龍君、ちょっと困った事になってるんだ。申し訳ないんだが少し部屋まで来てくれないかな?」


「……わかりました。少し待ってて下さい」


 電話の向こうから嵯峨良の少し戸惑った様な声に少し不穏な空気を感じた叶は電話を切ると幸太を見つめ微笑む。


「幸太君ごめん、ちょっと行かなきゃいけなくなっちゃった。申し訳ないんだけど君はもう少しここにいてくれない?誰か出て来たら()()()()()私に連絡してくれたらいいから」


「OK、わかった、任せといて」


 少し不安な気持ちを抑えながら、それとなく幸太に告げてその場を離れると、急いで嵯峨良の部屋へと向かった。


 嵯峨良の部屋の前に着くとまずは軽く扉をノックすると、すぐに中から嵯峨良が顔を出した。


「やぁ鬼龍君、すまない、さぁ中に入って」


 急かされる様に中に招き入れられると、そこには頭を垂れて椅子に腰掛ける華月が目に入った。

 まさか華月がいるとは思っていなかった叶は慌てて嵯峨良を見つめた。


「嵯峨良さん?」


 目を見開き、疑念を含んだ様に問い掛ける叶に対して、嵯峨良は慌てて首を振った。


「いや、違う。この子が突然僕の部屋を訪ねて来たんだ」


 狼狽しながら弁明しようとする嵯峨良を、叶は冷ややかな目で見つめた。


「何も言ってませんよ嵯峨良さん。ただこの状況を志穂さんが見たら最高な笑顔を浮かべるでしょうけど」


 口篭る嵯峨良に冷笑を浮かべて、冷たい視線を送ると、ゆっくりと華月の元へと歩み寄る。


「さてと華月さん。貴女はここで何をしてるんですか?」


 努めて冷静に叶が問い掛けると、俯いていた華月がゆっくりと視線を上げる。


「……あの、鬼龍さん助けてくれますか?」


 問い掛けに質問で返す華月に少し呆れた叶だったが、すぐに笑顔を作る。


 「……ふぅ、いいですよ。私に出来る事ならお助けします」


 叶の言葉を聞き、華月がゆっくりと口を開く。

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