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行方⑥


「三条いつきと共にもう一人の正体もすぐにわかったの。それがこの神谷崎玲音」


 そう言ってノートパソコンを操作し画面を向ける。そこにはスーツ姿でグラスを傾ける神谷崎玲音の姿があった。


「これひょっとして同じ店ですか?」


「そういう事。ただ神谷崎さんの場合はホスト側だけどね。情報によると三条さんは神谷崎さんを指名してた訳じゃないみたいだけど二人は既に顔見知りだった。そして二人の共通点。お金に困っていた。神谷崎さんお店でも一応ナンバー十ぐらいにはいたみたいなんだけど、売り掛けの子に立て続けに飛ばれたみたいでお金には困ってたみたいでね」


「売り掛けって何ですか?ツケみたいな感じですか?」


「そうそう、ツケ払いの事。指名してくれた子がツケでホストクラブで遊ぶ事よ。ただその指名してくれた子がお金を払わない場合、指名されたホストに支払いが行くの。だからホストは必死になって回収する訳。ただ犯罪紛いな回収をする奴もいて、一時期問題になって売り掛け禁止って所も増えたみたいなんだけどまだそういうシステムでやってる所は沢山あるみたいね」


「なるほど……二人がお金に困ってたってのはよくわかりました。でもここに辿り着くにはまだ何かが足りないと思うんですが?」


 真剣な表情のまま問い掛けると、志穂も静かに頷いた。


「私もそう思ったのよ。だからちょっとお金はかかるかもしれないけど、今回の登場人物全員の写真を送って調べてもらったの」


 したり顔で言う志穂だったが、叶はすぐに立ち上がり話を遮る。


「ちょっと待って下さい。話の腰を折りたくはないんですが、全員の写真?また盗撮したんですか?私は含まれてませんよね?」


「またって何よ?いつも盗撮してるみたいに言わないでよ。さすがに鬼龍ちゃんは今回は含まれてないわよ。あと倉井君もちょっと悩んだけど鬼龍ちゃんの彼氏だしさすがにないかと思って今回は除外しといたわ」


「……昔、私の事盗撮しましたよね?」


「あはは、まぁそれは今はいいじゃない。そんな昔の事は水に流してさ。それより話を戻すわよ。送った写真を元に聞き込みしてくれたらすぐに二人を繋ぐピースが見つかった。それが朱里さんよ」


「朱里さんが?」


 叶が聞き返すと志穂はゆっくりと頷く。


「そう、店の従業員が朱里さんの写真を見て何度か店に来ていたと証言したらしいの。そして指名していたのが神谷崎さん。因みに来店した時にたまに大人しい小柄な女の子も一緒に来ていたって言ってたみたいなんだけど」


「まさか華月さんも?」


「多分ね。でも従業員も華月さんの写真見てもそんな子だった気もするって言ってたらしいけど印象が薄くてこの子に関しては、はっきりとはわからなかったみたい」


「なるほど……でも三条さん、神谷崎さん、それに朱里さんは顔見知りだった。だけどここでは互いに他人のフリをしていた。とりあえずもう黒じゃないですか?この人達」


「そうよね、私もそう思うわ。それともう一つ見つけた事があるの」


 そう言って志穂はノートパソコンの画面を再び叶に向けた。そこには三条がホスト達に囲まれて満面の笑みを浮かべている画像だった。

 

 この画像に何か意味が――?

 

 わざわざ志穂が見せるには意味があるんだろうと、画像をくまなく注視していると三条を囲むホスト達の中にもう一人見知った顔がある事に気付いた。


「えっ?これって西園さん?」


 叶が少し戸惑いながら問い掛けると、志穂がニヤリと笑う。


「御明答。今回情報屋には使用人の人達の写真は送ってなかったから彼に関する情報はなかったんだけど、たまたま写ってる画像が出てきてね。髪は金髪で長髪だけどここに写ってるのは多分使用人の西園さんで間違いないでしょうね」


「ちょっと待って下さい。使用人として入り込んでるとなるとかなり練られた計画なんじゃ?」


「そうなのよ。でもその割には脇が甘い所もあるのよね。だから当事者にお話を聞こうかと思ってるのよ」


 そう言って不敵な笑みを浮かべる志穂を見て叶は少し不穏な空気を感じた。


「志穂さん、それ誰に聞くつもりですか?」


「ふふ、三条さんよ」


「……三条さんの行方、知ってたんですね?」


「まぁね。まだ皆に言っちゃ駄目よ」


「わかりました……あまり無茶はしないで下さいね」


「あら心配してくれるんだ?」


「別に心配はしてません。今回は幸太君もいるんです。あまり無茶して厄介事に巻き込まないで下さいって言ってるんですよ」


「何よもう、一人で幸せになっちゃって……まぁ彼氏と早くいちゃいちゃしたいでしょうからそろそろ終わらせましょうか」


 志穂が口角を釣り上げ立ち上がると、叶も一緒に立ち上がった。


「えぇそうですね、この馬鹿げた悲劇には付き合いきれませんから」


 叶が皮肉めいたセリフを口にし、二人揃って部屋を出て行く。

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