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行方⑤


 叶が頭を悩ませていると、志穂がすっと歩み寄る。


「ねぇ鬼龍ちゃん。ひとの部屋にずっといるのもなんだしさ、とりあえず出ない?」


 志穂に言われ、確かに、と思い頷き全員で三条の部屋を後にした。


 部屋を出た所で全員で顔を合わせると志穂がまず口を開く。


「三条さんが何処行ったのかわからないけど私は調べものしたいから部屋に戻るわね」


「では私達は三条様を捜索させていただきます。今他の者が朝食の準備をしていますので、皆様は朝食をお取りください。陸奥方様もよろしければまずは朝食でもどうでしょうか?」


 部屋に戻ろうとする志穂に池江が問い掛けるが、志穂は眉尻を下げて頭を振った。


「有り難いけどあまり食欲もないのよね。ただ一息入れたいから後で珈琲だけ頂きに行くかもね」


 志穂の言葉を聞き、池江は丁寧に頭を下げると堀と共に去り、屋敷の外へと出て行った。

 二階の吹き抜け部から池江達を見送るように見つめていた叶達は互いに顔を合わせる。


「じゃあ私は部屋に戻るわね」


 志穂が笑みを浮かべながら部屋に戻って行くと、叶は幸太を見つめて微かに微笑む。


「じゃあ幸太君も部屋に戻っていて。何かあったらすぐに連絡するからさ」


「叶さんは?」


「私は、少し確かめたい事があるから……だから君は部屋に戻っていて」


「……わかったけど危ない事はしないって約束してほしいな」


「わかった約束するから大丈夫、何かあったら君にすぐ知らせるからさ」


 少し寂しそうに渋る幸太を部屋に戻すと、すぐに振り返り志穂の部屋の前に立った。


「志穂さん、ちょっとお話があるんですけど」


 扉を軽くノックしながら呼び掛けるが、中からの応答はなかった。

 軽くため息を吐き、それでも軽快に扉をノックしながらしつこく呼び掛ける。


「志穂さーん、出てくるまでドア叩き続けますからねー」


 リズムよく扉をノックを続けていると、暫くして眉を八の字にして志穂が顔を出した。


「鬼龍ちゃん、しつこいのは良くないよ。ひとの迷惑も考えてね」


「迷惑かけられる人の気持ち、少しはわかりましたか?」


 叶がしたり顔で問い掛けると、志穂は僅かに笑みを浮かべて叶を部屋に招き入れる。


「何よ、私がいつも迷惑かけてるみたいな言い方して」


「嵯峨良さん普段から注意しなさそうだから、私がたまには教えてあげてるんです。ひとに迷惑かけてる認識はないんですか?」


 少し嫌味を言いながら部屋に入り、目に付いたソファに腰を下ろす。

 志穂はそんな叶を見ながらノートパソコンが置かれた机の前にある椅子に腰掛ける。


「それで話って何かしら鬼龍ちゃん?」


 笑みを浮かべながら問い掛ける志穂に対して、叶は真剣な眼差しを向ける。


「単刀直入にお聞きします。何か隠してますよね、志穂さん?」


 叶の質問を受けて、志穂は一瞬考えるように視線を上に泳がせたがすぐに一息つくと笑みを浮かべて無言のままノートパソコンを開けた。

 志穂はそのままノートパソコンを操作して、すぐに画面を叶の方に向ける。


「本当はもうちょっと私の中で整理したかったんだけどね。まぁ仕方ないし、どうせだったらこの写真みて鬼龍ちゃんの感想教えてもらえる?」


 そう言って見せたパソコンの画面にはスーツ姿の若い男性に囲まれ、酒が入っていると思われるグラス片手に満面の笑みを浮かべる三条の姿が映っていた。


「……これは三条さんですかね?そして周りの雰囲気からしてホストクラブとか?」


「そう、正解。三条いつき、神谷崎玲音。二人共あまりに霊能者としての情報が無さ過ぎだったのよ。だから私は知り合いの情報屋に三条さんと神谷崎さんの画像を送って調べてもらったの」


「なるほど、それでこの画像が見つかったと?」


「まぁ、そういう事。高いお金払っただけあってすぐに見つかったわよ。そして少しは調べがついた。三条いつき、本名、丸太(まるた)京子(きょうこ)。祖父の遺産が入ったとかで夜の街で結構派手に使ってたみたい。だけど使い果たしたのか、最近はホストクラブに払うお金とかで困ってたみたいなのよ」

 

 叶は志穂の説明を聴きながら画面に映る楽しそうな三条を見つめて軽く頷いていた。


 お金に困り霊能者のふりをして斗弥陀家に近付く。わかる気もするけど何かが足りない。ここに辿り着くにはあまりにとっぴ過ぎる――。


「……まだこれだけじゃないですよね志穂さん?」


 真剣な眼差しを向け問い掛けると、志穂はニヤリと笑う。

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