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狙われたのは?⑧


 少し張り詰めた様な雰囲気の中、叶が逆に問い掛ける。


「そうね。少し不可解な感じはするけど、今は事故なんじゃないかなって思ってるかな。貴女は違うんですか?」


「私は……分かりません……ただ……怖くて……」


 再び俯き震える華月だったが、叶は歩み寄り震える華月の両肩にそっと手を添えた。


「ひょっとしたら自分があんな目に会ったかもと怯える気持ちは分かりますよ。だからもし何かあったら何時でも言って下さい」


「……ありがとうございます」


 俯きながらも叶の方を向いて頭を下げる華月を見つめ、叶も微笑みながら頷いていた。だが首を傾げて更に問い掛ける。


「ねぇ華月さん。一つ気になってる事があるんだけど聞いても大丈夫かな?」


「……何ですか?」


 一瞬戸惑い、警戒感を見せる華月に対して、叶はあえて真剣な眼差しを向けて問い掛ける。


「何時も一緒だった朱里さんはどうしたの?」


「朱里ちゃんは義人さんと一緒にいて『少しは二人にしてくれない?』って言われて、私は鬼龍さんの所にお邪魔したかったから丁度良くて」


「なるほどね。貴女と朱里さんの関係。貴女達は幼なじみとか言うけど、はたから見たら普通の幼なじみとは思えないの。幼なじみや友人と言えば普通は対等な関係を思い浮かべるけど、貴女達二人はどう見ても対等な立場とは思えないんだよね、主従関係があるというか……華月さんは納得出来てるの?」


「……私と朱里ちゃんは幼なじみですよ。確かにはたから見たら対等には見えないかもしれないけど、私は朱里ちゃんがいてくれたから今の私がいるんです。何の取り柄もない私なんかと一緒にいてくれるのは朱里ちゃんだけだし、それにこうして斗弥陀の人達と知り合えたのも朱里ちゃんのおかげだし……だから私は大丈夫ですよ」


 そう言って華月は立ち上がった。それはまるでそれ以上の詮索を拒む様にも感じられた。

 華月はそのまま扉の方へと歩いて行き、叶も慌てて歩み寄る。


「あの、ありがとうございました」


 華月が俯きながら礼を伝えると叶は華月の肩に手を添え優しく微笑む。


「いえ、こちらこそ。華月さん、私はこれ以上深く踏み込むつもりはないから。だけどもし貴女が何か話したくなったら何時でもどうぞ。話聞くぐらいしか出来ないかもしれないけど」


 叶がそう言って微笑むと、華月もようやく儚い笑みを浮かべて一礼し部屋を後にした。

 叶は扉から顔を出し自室の方へと歩いて行く華月の背中を見つめる。


 本当に大丈夫かな、あの子――。


 叶が華月を案じながら見送り首を引っ込める。扉の閉まる音を聞き華月は振り向き憂いを帯びた瞳で見つめていた。そして自分を見送ってくれていた叶がそこにいない事を確認すると、人知れず口角を上げ再び歩き出した。


 部屋に戻った叶は幸太が座るソファに腰を下ろした。


「ねぇ幸太君、あの子どう思った?」


 微笑を浮かべて問い掛ける叶を見つめ、幸太は一瞬考えてから口を開いた。


「なんて言うかな。何かを訴えたいんだろうけど、上手く伝えられてないというか……難しいな。ただ、まだ本心は隠してる様な気がする。まだこっちを、叶さんを探ってる様にも思えた」


 幸太の答えを聞き、叶は口元に指を添えながら視線を彷徨わせた後、そっと目を閉じた。


「……う~ん、なるほどね……」


 叶は思案する様に微かに唸ると、テーブルに置いてあった珈琲に手を伸ばし一口飲む。


「珈琲も冷えちゃったね、いれ直そうか」


 そう言って立ち上がりポットの方へと歩いて行くと、部屋の外から女性の騒ぐ様な声が耳についた。


 気になった叶は珈琲カップを一旦テーブルに置くと扉を開け外の様子を伺う。

 すると再び女性の声が響いてきた。声の感じからして階下で三条が騒いでいる様に聞こえ、叶は部屋の外に出て吹き抜けから階下の様子を覗き込む。

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