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依頼③


 数日後。

 叶の元には志穂から今回の正式な依頼書や関係書類等と共に御守り等も同封されて送られて来ていた。

 同封されていた小さな御守りを片手に取り、叶は眉根を寄せながら首を傾げて呟く。


「これ何?ふざけてんの?」


 同封されていた御守りが真剣な物なのか、それとも何時ものおふざけなのか、志穂の真意が掴めない叶はやがて御守りを握り締めて小さなため息をついた。


「ふぅ、まぁ有難く頂いときますよ志穂さん」


 そう言って御守りを鞄にしまうと、送られて来た書類に目を通す。

 そこには廃病院に関する概要が記されていた。


――廃病院について。

 その廃病院は大戦中から軍事施設の病院として使用されており、戦時中は非公式で非人道的な実験が行われていたのではないか等と様々な噂がついてまわる。

 戦後は大きな総合病院として運営されていたが高度経済成長期とされる昭和中期に突然閉院し、その後は手付かずで放置される事となっていた。

 いつしかその廃病院では『兵士の霊を見た』『誰もいない筈なのに医者が巡回している』『とある病室からうめき声の様なものが聞こえる』等と噂がたち、地元では有名な心霊スポットとして周知されるようになっていった。

 尚、数年前にはこの廃病院に突撃する事を予告していた動画配信者がその後、行方不明になるという事もあったが、その動画配信者が廃病院を訪れたか否かは定かではない。


 廃病院に関する概要を一通り見た叶はため息を漏らす。


「ありきたりな話よね。ただ、志穂さん絡みの依頼だしちゃんと準備はしといた方がいいかな」


 そう呟きもう一枚同封されていた書類を取り出し目を通す。そこには斗弥陀グループについて記されていた。


――斗弥陀グループや家族について

 斗弥陀グループは斗弥陀(とみだ)義将(よしまさ)が一代で築いた総合商社であり、義将が現在会長としてトップに君臨している。

 義将の長男である貴之(たかゆき)が代表として就いており、いずれ義将の後を継ぐものと思われている。

 貴之の他にも次男である義人(よしひと)や三男秋義(あきよし)もいるが、まだ学生のようで職には就いていないようだ。


 その他、斗弥陀グループの足跡等も記されており、叶は書類を整理しながら準備を進めていく。そんな中、書類に必要事項を記載しているとスマホから軽快な電子音が響いた。

 徐にスマホを手に取り画面に目をやると幸太からのメッセージが届いていた。

 叶は僅かに口角を上げるとメッセージを開く。


(叶さんお疲れ様。仕事の準備は順調ですか?俺なりに斗弥陀グループや廃病院について調べてみたからまた時間がある時見てみて)


 叶はメッセージと共に添付されていた写真をタップすると志穂が送って来てくれた廃病院や斗弥陀グループについての概要と同じような内容が書かれていた。


 幸太が調べた情報は既に志穂からもたらされていた情報とさほど変わらなかった。だが幸太が必死に自分の為に頑張ってくれた事を思うと自然と笑みがこぼれてしまい、叶は込み上げる感情を抑えつつ、幸太へすぐにメッセージを返した。


(幸太君ありがとう。仕事の準備で精一杯だったし助かるよ。たぶん数日のうちに相手と連絡取って現地に行く事になると思うからまた決まったら連絡します)


 そうメッセージを送り叶はにんまりと微笑む。


「本当にありがとう、君のおかげで大丈夫な気がしてきたよ」


 そう呟き、叶は再び準備へと戻った。

 叶は書類を整え、その日のうちにポストへ投函すると、すぐに志穂へ電話をかける。


「もしもし志穂さん?」


「あっ鬼龍ちゃん書類届いた?」


「ええ、もう必要事項書いて今ポストに投函しました。色々と忙しいんで早く仕事に掛かりたいんですが」


「あら、早いわね。急にやる気になっちゃってどうしたの?まぁこっちからしたら有難いけどね。OK、先方には連絡しとくからちょっと待ってて。すぐに連絡するからね」


「お願いしますね。ではお待ちしてます」


 電話を切ると夕暮れの街を叶は一人歩いて行く。

 

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