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陸奥方志穂②

「まぁまずは私達の事から行きましょうか。先程も言いましたが私は嵯峨良探偵事務所で嵯峨良先生の秘書を務めております陸奥方志穂です。我々嵯峨良探偵事務所は普通の探偵と違って主に扱ってるのは心霊関係です。まぁ鬼龍叶さんとの絡み等を考えたら少しは察しがついていたかと思いますが」


 そう言って含みのある笑みで幸太を見つめると「まぁ確かにそうですね」と言って幸太も頷いていた。

 志穂はにこやかに笑うと更に続ける。


「我々も仕事が立て込んでたので今回鬼龍叶さんに仕事を頼んだんですが、三日前に〝今から廃病院の調査に入る〟と彼女から連絡があったっきり連絡が途絶えてしまいました。その後クライアントでもある斗弥陀グループからも廃病院に向かった者達が帰って来ないと連絡を受けました。彼女の性格を考えると、何日も連絡を疎かにするなんて考えられないので何か不測の事態があったんじゃないかと我々は考えてます」


 志穂は落ち着いた口調で淡々と話していた。だが志穂の口から発せられた〝不測の事態〟という言葉を聞き、今の状態が悲観的な状況であるとあらためて理解した幸太は俯き唇を噛む。


「……やはり叶さんは廃病院からまだ帰って来てないって事でしょうか?」


 不安な感情を押し殺し幸太が問い掛けると、志穂は笑みを浮かべてゆっくりと頷く。


「ええ、恐らく。そして一応確認の為に彼女のマンションに立ち寄った時に貴方に出会ったんです、倉井幸太さん」


 そう言って志穂が話し終えた時、注文したサンドウィッチやコーヒーが運ばれて来る。


「ひとまず食事としましょうか。腹が減ってはなんとやら、と言うでしょ?」


 そう言って志穂はサンドウィッチを一つ掴むと口に運んだ。今の状況であまり食欲も湧かない幸太だったが、昨日からろくな物を口にしていなかったのも事実であり、有り難く目の前の食事を頂く事にした。


 空腹だった身体に食欲が満たされ、幸太は少し落ち着くような気がした。二人はそのまま食事を続ける。


「ご馳走様でした」


 運ばれてきたサンドイッチを完食し、満足気に手を合わせる幸太を見て志穂が語り掛ける。


「疲れきった顔をしてましたが、少しはマシになりましたかね?心配なのはわかりますが、貴方が倒れても意味がないですよ倉井幸太さん」


「あっ、はい、ありがとうございます。あのこれからは――」


「ひとまず廃病院に向かいましょうか。続きは車の中で」


 幸太の言葉を遮り志穂が席を立つと、幸太も慌てて席を立った。その後再び車に乗り込み、志穂が車を走らせて行く。


「あの、陸奥方さん。廃病院の場所は分かってるんですか?」


「ええ、大丈夫ですよ。それに嵯峨良先生が先行して現地に行ってますし」


 そう言って穏やかな笑みを浮かべながら志穂はアクセルを踏み込み車は加速して行く。


 食事も取り、会話を重ねるうちに少し落ち着いた幸太は何気なく志穂に話し掛ける。


「陸奥方さんは車好きなんですか?」


「ええまぁね。何でそう思いました?」


「いや、ナンバー見てすぐ分かったんですけどこの車レンタカーですよね?普通、レンタカーでミッション車なんて選ばないと思うんですよ。わざわざスポーツタイプのミッション車選んでますし、乗ってても振動とかもなくて運転上手いから、普段から乗り慣れてるのかなって」


 幸太の言葉を聞いて、志穂は口角をぐっと釣り上げる。


「ふふふ、良い観察力です。何より運転を褒めてくれるとは……普段から乗ってる男なんかそんな気の利いた言葉、一つも言いませんからね。ふふふ、このまま二人でドライブを楽しみたくなるじゃないですか」


「えっ、いや、光栄ですけど今は廃病院に向かってほしいです」


「ふふふ、わかってますよ。それに鬼龍叶さんを怒らせたくないですしね」


 志穂がニヤリと笑って一瞬幸太の方を見ると、幸太も苦笑いを浮かべた。志穂は楽しそうに笑みを浮かべて車を更に加速させて行く。

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