94.それぞれの旅立ち
迷走中です!
(浅山 茜視点)
あのスカルサタゴーラとの戦いの翌日……
「……もう、行っちゃうんだね……」
「まあ、確実に何か言われるだろうガルからなァ……」
シトラスちゃんは、今日魔王城に戻るらしい。
……正直に言うと、私も一緒に行きたい。
「ねぇ、私も……」
「一緒に来るのは辞めといた方が良いガル。……少なくとも、アカネだけでどうにかなるとは思えねぇガル……」
「そっか……」
そもそも、シトラスちゃんと次に会った時は敵同士らしいし、魔王城でも味方はしてくれないんだろうね。
……もう、嫌だな……
「さて、そろそろ出発するガルかァ……」
「あ、そういえば気になってたんだけど……」
「ガルァ?」
「シトラスちゃん達魔王軍幹部って、どうやって魔王城を行き来してるの?……やっぱり徒歩?」
前々から気になってたんだけど、徒歩じゃ明らかに日数がかかり過ぎるし……
どうしてるんだろ?
「あ~……ここだけの話だガルが、ラビリンスの力だガルなァ……」
「え、そんな力あるの!?」
「そうガル。……ラビリンスはどうも、1度行った場所なら転移させられるらしいガルよ?」
「……いや、それ普通にヤバいんじゃ……」
つまり、ラビリンスさえ居れば魔王軍は何処にでも転移して来るって訳で……
……早急に潰すべきだね。
「ま、そうガルなァ……」
「……うん。……いつかは倒さないとね……」
でも、今は倒せない。
本体が居るのは、まだ先だから。
「それじゃあ、オレはもう行くガル……」
「うん、ばいばい……」
「ああ、さらばだガル……」
そうして、シトラスちゃんはラフロンスを立ち去って行った。
……次会う時は敵同士というのさえ無ければ、再会を待ち望めたのに……
私は敵を愛する事を何とも思わない程、精神が狂ってはいないのだ。
「こんなのって、あんまりだよ……」
ーポタポタポタ……
もしかしたら、私はシトラスちゃんと殺し合いをしないといけないかもしれない。
そう思うと、涙が止まらなかった……
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(青谷 兼人視点)
「ハァ……どうしたら良いんでありんしょ……」
「……再会、意外と早かったですね……」
「っ!?」
僕としてはまたいつか会えたらと思っていましたが……まさか翌日に会えるとは……
「……ミツエさん、でしたか……」
「……そ、そうでありんす……」
「どうしてこんな薄暗い物陰で体育座りしているんですか?」
「それは勿論、死神でありんすから……人に出来る限り見られないように……」
……いや、聞いてた話とキャラが違い過ぎないですか!?
「あの……エルリスさん達から聞いていた話では、もっと勇者らしいお方だった筈では……」
「それは"勇者"の仮面を被っていたあちきでありんす……少なくとも、素のあちきはあんまり明るくないんでありんすよ……」
「……そ、そうなんですか……」
確かに、人という生き物は場面に応じて様々な顔を使い分けると言いますが……勇者らしいミツエさんも、その1つだったという事ですかね?
「……だから、エルリスやメサイアには会いたかなかったんでありんすよ……こんなあちきを見られたら、失望されると思って……」
「……で、失望されたんですか?」
「別に気にされなかったでありんすよ。……『寧ろ、そんな暗い性格なのに民のために命を捨てたんか?』って驚かれたでありんす……」
「まあ、そりゃそうですよ……」
「そうでありんすか……」
多分、ミツエさんもまた勇者らしく罪無き民のために命を捨てられる人間なのでしょう。
僕だってそうしますから。
「……で、そんな貴女がどうして未だにラフロンスに居るんですか?」
「死神長から言われたんでありんすよ……『しばらく、勇者の旅に同行して欲しいでヤンス……』って……」
「……どうしてですか?」
「そんなの、あちきが知りたいでありんすよ……」
理由も分からず勇者の旅に同行を命じられるとは……ある意味では、先代勇者らしいと言えなくも……
……言えないですね。
「まあ、それならそれで早く合流しませんか?」
「い、嫌でありんす!……あちきはもう、かつての勇者としての力……はまだ持ってるでありんすが、下手に現世のアレコレに介入出来ないんでありんす!」
「それがどうしたんですか?」
「……あちきは、ただのお荷物にしかならないんでありんすよ!」
……死神は、現世のアレコレに介入出来ないらしい。
つまり、どう頑張っても自分はお荷物にしかならない、とでも考えているんですね……
「まあ、その気持ちは僕も分かりますよ?……僕のスキルである【図書館】は知識こそ広げられますが、現状ではエルリスさんが既に知っている知識ばかりで、僕は何の役にも立てていない事の方が多いですから……」
僕だって、殆んど皆さんの役には立てていないのが現状です。
ですが、それはミツエさんが望んだ返答ではなかったようで……
「違うんでありんす!……あちきは……あちきには皆を助けられる程の力があるのに、死神の規則で介入が出来ないんでありんすよ!」
「あっ……」
「いくら勇者でなくなったとはいえ、あちきの実力は落ちてないでありんす!……なのに、何も出来ないのが辛いんでありんすよ!」
そうか。
この人は、僕とは違う。
ミツエさんは、なまじ力があったが故に苦悩してたんですね。
「……まあ、その苦悩も折り合いをつけていくしかないですよ……」
「そうは言うでありんすけど……」
「……というか、こうして会話するのは介入にならないんですか?」
「……ならないみたいでありんすね……」
いまいち、介入とされる基準が分からないですね……
「まあ、これ以上考えても答えは出ませんし、そろそろ皆さんと合流した方が良いですよ……」
「そ、そうでありんすね……」
「後、エルリスさんとメサイアさんは多分かなり喜びますよ?」
「だと良いんでありんすが……」
こうして、僕はミツエさんを連れて馬車へと向かう事にしたのでした。
まあ、どうせまだ誰も居ないでしょうが……
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(メアリー・ズンダルク・レブラトラ視点)
「それで……今回の騒動、貴女の時間軸ではどうなっておりましたの?」
『……勇者ツカサと勇者ジャスティスが、チューグロスとメープシーを相手にして死にましたわ……』
「……そうですの……」
マクセリス教本部の修復を手伝っていた私は、周囲に人が居ない事を確認してメア……別の未来の私に問いを投げかけましたわ。
そして返って来たのは、勇者ツカサと勇者ジャスティスが死んだ未来……
『少なくとも、トウシロウというパーティーメンバーが死んだ後のお二人では、スキルを上手く発展させられなかったらしいのですわ……』
「まあ、あのお二人ならそうなりますわよね……」
片や"格好良い王子様"を、片や"英雄"を自称している以上、仲間が死んでまでそれを維持するのは厳しいですわよね……
『だからこそ……こうなって良かったですわ……』
「ですが……この後も、まだ色々な困難が立ち塞がっているのですわよね?」
『……まあ、私なら分かりますわよね……』
少なくとも、これで終わりではありませんわ。
「まだ魔王軍の将軍は5体も残っておりますし、それに加えて宰相のスネイラと魔王のドラグまで残っていますし……」
『なら、諦めますの?』
「まさか。……私達は、どんな相手だって勝ってみせますわ!」
この先、どんな困難が来ようと……私達が負けるなんて、絶対にありえませんわ!
『……なら、早急に旅立つ事をお薦めしますわ……』
「……理由は分かりませんが、分かりましたわ……」
早く向かわなければいけない何かがあるというなら、それに従ってあげますわ。
何せ……私達は、いずれ魔王を討ち倒して世界を救うのですから……
ご読了ありがとうございます。
文章がもう滅茶苦茶です……
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。