90.初めての共同作業
スカルサタゴーラ戦、開幕です!
(??視点)
「おやおや……結局、復活しちゃったでござるよ?」
拙者は、マクセリス教本部に佇む堕天魔王 サタゴーラの成れの果てを見ながら、横に居る人物に話しかけたでござる。
「……でも、まだ不完全な状態でありんす……」
「だから良いって訳ではないでござるよ?」
「それでも……かつてあちき達が戦った時に比べたら充分弱体化しているでありんすよ……」
拙者の横に立つ人物は、漆黒のローブ、骸骨の仮面、身の丈と同じ大きさの大鎌等が特徴的な女性でござった。
まあ、要するに死神でござる。
「それにしても、変な因果でござるな~。……かつて魔王を討ち倒した先代勇者が、今や死神とは……」
「あちきの魂は、この世界の冥界では異物でありんした。……だから死神長様から出された選択肢は、このまま消滅するか、若しくは死神になるか……」
「それで死神になるとは……よほど、邪神を倒したかったんでござるな?」
既に役目を終えた彼女が死神となってまで自身を存続させたかった理由は……魔王を生み出した邪神を倒すため以外にはあり得ないでござる。
「……まあ、真の黒幕が居ると死神長に聞いた瞬間に死神になるのを決めたのは事実でありんすが……」
「ハァ……どうしても、あの2人とは会わないつもりでござるか?」
「……あの2人が見ていたのは勇者としてのあちきでありんす。……今の死神となったあちきでは……」
「……そうでござるか……」
……とはいえ、下手にお互いを詮索しないのが身のためでござるか……
「それに、あの2人は前よりも強くなってるでありんすし、心強い仲間も居るでありんす。……あちき達が出る幕は、無いかもしれないでありんすよ?」
「……そうだと良いんでござるが……」
拙者としてらは、不安だらけでござった。
けれども、隣の女性……死神ミツエの言う事を信じてみようと思ったのでござる……
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(浅山 茜視点)
私達は、怨念魔王 スカルサタゴーラが佇むマクセリス教本部の前に居た。
「ハァ……ったく、どうせチューグロスとメープシーの仕業だろうガルが、本当に面倒なのを復活させてくれたガルなァ……」
「……となると、もしかして司ちゃんと正義君は負けちゃったのかな?」
「いや、逆だと思うガル……じゃねぇと、こんな不完全な状態で復活させねぇガルよ……」
「だよね?……多分、大気中に排出された魔力を使って復活させたんだろうけど……普通に魔力が不足してたっぽいし……」
十中八九、司ちゃんと正義君は勝った筈だ。
……そう思いたい。
と、次の瞬間……
「お、そこに居るのは茜チャンじゃね!?」
ーざわざわざわ……
「ん?……って、正義君!?」
「司チャンも居るっしょ……」
マクセリス教本部から、正義君が多数の人物を連れて外に出て来た。
後、よく見たら正義君の背中には司ちゃんがおぶられていた。
「え、何がどうなって……」
「とりま、チューグロスとメープシーには何とか勝ったっしょ……ただ、置き土産として先代魔王が復活しちゃった訳よ……」
「やっぱりガルか……」
「……で、正義君達の状況は?」
「司チャンは意識不明、俺チャンも後数時間は戦えないっしょ……」
「分かった。……後はこっちに任せて!」
司ちゃんと正義君は一時戦線離脱か……
……となると、エルリスさんの計画通りに進めるしかないよね……
「……私とシトラスちゃん、初めての共同作業と行こうかな!」
「ガルァ……恐らく、これが最初で最後になるだろうガルがなァ……」
……シトラスちゃんは、好き勝手出来る権利が後1回しかない。
つまり、この件が無事に終わった瞬間に敵同士って訳だよね……
「……事件が終わっても、すぐには襲わないでね?」
「分かってるガルよ。……ま、無駄口もこんぐれぇにしてさっさとやるガルよ……」
今、スカルサタゴーラの注意はシュラメルクさんが引いてくれている。
でも、それも長くは保たない……
「ふぅ……【戦乙女】の神器12番、【蒼天の翼】!……そして【戦乙女】の神器2番、【雷神の大槌】!」
ードンガラガッシャーン!……バチバチバチ……
「ガルァ!?……アカネ、やる気満々だガルなァ……」
折角シトラスちゃんと協力するんだ。
私のありったけ、敵にぶつけてあげる!
「ハァ……ハァ……多分、私は行けて1回が限界……」
「……オレはある程度余力を残しとくガル……その方が、何かあった時にも対応可能だガルし……」
「うん……分かった……」
不甲斐ないな~。
ここまでしても、まだシトラスちゃんの本気には届かない……
と、その直後……
「グゴォォォォォォォォ~!」
ーゴゴゴ……
「なっ……」
「マズいガルなァ……あいつ、両手から何か発射する気だガル……」
スカルサタゴーラは両手の掌に魔力を溜め始め、何かを発射する準備を進めている。
……うん、私達の役目はここだね。
「ねぇ……あの攻撃をキャンセル出来たら、相手に隙って生まれるかな?」
「ガルァ?……多分、生まれ……」
「じゃあ決まり!……行くよ!」
「……分かったガルァ!」
シトラスちゃんは素早く、私の考えを汲み取ってくれた。
なら、私達の仕事を実行しようか!
「じゃあ私は相手の左腕を潰すから、シトラスちゃんは右腕をお願い!」
ーバッサバッサ……ヒュン!
「了解だガル!」
ータッ……タッ……ヒュン!
私は【蒼天の翼】による飛翔で、シトラスちゃんは単純に跳躍で、それぞれスカルサタゴーラと同じ高さに辿り着いた。
「「いっせ~の~……」」
「せ!」
「ガルァ!」
ーブンッ!
私はスカルサタゴーラの左腕に右回りで【雷神の大槌】をぶん回して、シトラスちゃんは右腕に左回りで巨大トゲ付きハンマーをぶん回した。
その結果……
ードゴォォォォォォォォォォォ~ン!
「グゴォォォォォォォォ!?」
ーバキバキバキバキ……
「よし!」
「ガルァ!」
私達の攻撃は、スカルサタゴーラの両腕に多くのヒビを入れた。
そして……
ーパラパラパラ……
……スカルサタゴーラの両腕を構成していた骨格は、ヒビが拡散する様にして崩れ散った。
「ぐ、グゴォォォ……」
「お、効いてるガル!」
「両腕を壊されて、酷く悶絶してるね……」
見るからに自我は残ってなさそうだけど……それでも、痛覚は残っているらしい。
だからか、えらく悶絶してる……
「グゴォォォ……グゴォォォ……」
「おいおい、次の作戦はまだガルかァ!?」
「……まだ、隙って呼べないのかも……」
「だったら、オレがとことん注意引いてやるガル!」
私はもう無理……シトラスちゃんも、後どれだけ保つか分からないし……エルリスさん、早くして……
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(エルリス・フルウィール視点)
「ほな……ウチ等も行くか……」
「そうじゃな。……妾が言うのも何じゃが、倒せるかのう……」
「倒せるか倒せへんかやない。……倒さな終わる、それだけや……」
「……じゃな……」
この勝負、死んでも負けれへん……
だって、ここで負けたら……ミツエはんの死がほんまに無駄死にになってまう……
「ふぅ……怨念魔王 スカルサタゴーラ……誰1人として犠牲者は出させへんで!」
「同感なのじゃ!」
そうして、ウチ等は戦闘に挑む。
……かつての親友の死を、無駄にせぇへんために……
ご読了ありがとうございます。
スカルサタゴーラ、生前よりはかなり弱体化していますが、それでも軽く魔王軍幹部上位クラスの実力は有しています。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。