9.ナフリーの欲しかったもの
今日最後の更新です!(多分)
(浅山 藤四郎視点)
「今日も張りきって行こ~!」
「お~……ハァ……」
「承知しましたニャン!……ハァ……」
「うわっ!?2人とも辛気臭いよ!?」
あのお慕い宣言の翌日、俺達はまたもやゴブリン退治に来ていた。
……もうかなりの金額を稼げてはいるものの、限界ギリギリまで貯めておこうという訳だ。
……だが、あのお慕い宣言以降俺とナフリーの会話は気まずくなっており、連携出来るかは不安だった。
「ナフリー、行けるか?」
「だ、大丈夫ですニャン!」
「グギャギャ!」
「グギャギャ!」
「グギギギギ……」
「グギャァ!」
「……ん?何かいつものと違う奴等が居るな?」
普段通りゴブリンを倒そうとした俺達だったが、ゴブリンの群れに通常種と異なるゴブリンが2体程居るのを見つけた。
1体は剣を携えて革の鎧を着ているゴブリン、もう1体は杖を握ってローブを羽織ったゴブリンだった。
「あれは……剣を持ってる方がゴブリンソルジャーで、杖を持ってる方がゴブリンメイジですニャン!」
「やっぱりそういうのも居るのか……行けるか?」
「所詮、ゴブリンキングよりも弱い相手ですニャン!でも、やっぱりこの辺に出るのはおかしい奴等ですニャン!」
「……やっぱり、何か異変が起こってるって訳か。」
こりゃ、確実に面倒事の臭いがするな……
「ご主人様!」
「あ、今バフをかけてやる。……【補助全般】!」
「グギャァァ!」
「グギギギギ……」
「ごちゃごちゃうるさいですニャン……まだですかニャン!」
「今かける!……【体力増強】、【攻撃力上昇】、【魔力上昇】、【HP自動回復】、【MP自動回復】……」
「あ、せっかくご主人様に【魔力上昇】と【MP自動回復】をかけて貰ってる訳ですし、ちょっと基礎的な魔法も使ってみますニャン。」
……特に何も考えずにかけていた【魔力上昇】と【MP自動回復】だが、よく考えたらナフリー魔法をこれまで使ってねぇじゃねぇか!
俺、何やってんだ……
「グギィ!」
ーボンッ!
「あっ……」
……俺が勝手に項垂れてると、ゴブリンメイジが火球を撃ってきた。
しかし……
「そっちがそのつもりならこっちだって行かせて貰いますニャン!……【火球】ですニャン!」
ーボンッ!……ドーン!
「……う、打ち消した……」
「でも、威力に難ありって感じだね。」
ナフリーが放った【火球】によって、ゴブリンメイジの火球は相殺された。
……とはいえ、それは辛うじて相殺に持ち込めたというレベルの弱い魔法だったらしく、茜からの評価は"難あり"との事だった。
「……うん、やはりあたしに魔法は向いていないですニャン。……【獣化】!」
ーヒュン!……ザシュ!
「グ……ギギギ……」
ードサッ……
魔法を相殺したナフリーは自身が魔法に向いていないとこぼしながら、ゴブリンメイジの喉元を爪でかっ切って討伐した。
「グギャァァ!」
「ハァ……お前に至ってはもはや消化試合同然ですニャン。」
ーザシュ!
「グ……ギャ……」
ードサッ……
「……ふぅ、それじゃあ次のゴブリンは前に出て来てくださいニャン!」
……ゴブリンメイジを討伐したナフリーは、そのままゴブリンソルジャーの喉元もかっ切って討伐した。
しかもそれで殆んど消耗していないらしく、ナフリーは他のゴブリンを急かしていた。
なお、この後に繰り広げられたのは完全なナフリーによる蹂躙であった。
「グギャギャ!」
ーザシュ!……ドサッ……
「グギャ!」
ーゴキッ!……ドサッ……
「グギャァァ!」
ーブシャッ!……ドサッ……
「な、何度見てもえげつないな……」
「やっぱり、ナフリーちゃんってRPGの職業で言うところの"武闘家"枠だよね?」
「……あれを武術と読んで良いならな。」
「あ~……まあ武術でしょ。」
茜はこう言ったが、俺は断じて武術とは認められなかった。
だって、型と呼べるものがねぇし……
「ご主人様!終わりましたニャン!」
「あ、ご苦労だったな。」
「えへへ……もっと褒めてくださいニャン!」
「……ぐぬぬ、お兄ちゃんズルい……」
「もはや俺への嫉妬を隠さなくなってきたな……」
「だって羨ましいもん!私だってナフリーちゃんを褒めまくりたいんだよ~!」
ゴブリン退治を終えたナフリーから褒めてと言われ、それを見た茜に俺が嫉妬されて……
何でこんな目に遭わなきゃいけねぇんだ……
「ハァ……ナフリーは茜と違って優しくて偉いな~。」
「えへへ……あたし、役に立ててますニャン?」
「ああ、立ててるぞ。……少なくとも、茜は魔石ごと爆発させちまうし……」
「え、あ~……そ、そうですかニャン……」
まあ、それだけ聞くと意味不明だよな……
「まあそれは置いておいて……ナフリー、何か欲しい物は有るか?」
「え?」
「ほら、ゴブリン退治って殆んどナフリーにして貰ってるだろ?それが流石に申し訳なくてな。」
「そ、そんな事は気にして貰わなくて良いんですニャン。」
「いや、俺が気になるんだよ。……何というか、惨めな気分になるというか……」
本当に、妹と同年代の少女に色々とやって貰いっぱなしなのは気になるを通り越して惨めな気分になるんだよな~。
「わ、分かりましたニャン。」
「……で、何が欲しい?」
「そ、そうですニャンね……」
「……もしかして、何もないのか?」
「ええ……元々あたしの一族って狩猟を生業としてきた一族なので、あまりそういう俗世的な娯楽は求めない傾向にあるんですニャン……」
「な、なるほど……」
……これ、かなり難しいな……
ナフリー本人は何も欲しがってないと来ると、もはや何も出来そうには……
「……それに、ご主人様には既にあたしが欲しかったものをいただいておりますニャン。」
「いや、俺何もあげた覚えはないが……」
「故郷の皆の仇を討てる強さ。……それがあたしの欲しかったものですニャン。」
「あっ……」
……そうだ。
ナフリーは故郷を魔王軍幹部、欲豚将軍 タブルドに滅ぼされたんだっけか……
だから強さを求めるし、魔物に対しても初めは過剰な敵対心を向けていた、と……
「……だからこそ、一時的とはいえ莫大な力を授けていただけるご主人様をお慕いしているんですニャン。」
「あはは、そうか……」
つい今日まで無駄なバフかけもしてた俺としては、複雑な気持ちだ。
……というか、茜は十中八九気付いてたよな?
「……ご主人様に力をいただければ、あの憎きタブルドすら屠れる気がするのですニャン……」
「……まあ俺のスキル、【補助全般】はある意味チートだもんな……」
「チート……ですニャンか?」
「いや、何でもない。」
所詮俺の能力はバフかけ、あまり調子にならないようにしねぇとな……
調子に乗ってバフかけて、それでも相手の実力に届かなかったら目も当てられない。
と、ここで今まで黙っていた茜が声をかけてきて……
「……そこはもっと甘々なやり取り見せて欲しかったな~。」
「うるせぇ黙れ!」
「実の妹に対して酷くない!?」
「実の妹だからだ!」
茜は恋愛対象から察せる通り、ブラコンじゃねぇ。
……それどころか、兄である俺に対する扱いは悪友って感じだ。
だからこそ、こういう時に普通に罵倒し合う関係性が構築されている。
「え、あっ……ご主人様にアカネ様、喧嘩は辞めてくれませんでしょうかニャン!」
「ん?……ああ、いつもの事だから気にすんな。」
「うん、これが私達兄妹なりのコミュニケーションだからね。」
「そ、そうなのですニャン?」
やっぱり、この罵倒し合うところを見たら困惑しちまうよな……
ま、慣れてくれるとありがてぇな。
「そうそう。……だからまあ、切り替えて魔石回収でもするか。」
「賛成~。」
「承知しましたニャン!」
……こうして魔石回収を始めた俺達は、今回も大量の魔石を回収出来たのであった……
ご読了ありがとうございます。
ナフリーによって雑魚として処理させられるゴブリン達を書いてると、魔王軍幹部との戦いは相当盛らないといけないと思わされます。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。