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86.羊とチャラ男

メープシーの過去があきらかになります。

(メープシー視点)


あれは、100年程前だったかメェ~……


「ん?……こ、ここは何処だメェ~……」


「お主、魔界の悪魔か?」


「っ!?……あ、貴方様は誰ですかメェ~?」


かつての儂は、とあるお方によって現世に召喚されたメェ~。


そのお方とは……


堕天魔王(・・・・) サタゴーラ(・・・・・)……それが、お主を召喚した者の名だ。」


この出会いは、儂にとって転機だったメェ~。


洗脳しか使えない儂は、魔界では低級悪魔として虐げられていたメェ~。


でも、サタゴーラ様の部下として人間を滅ぼしていた時は、自分が特別な存在に思えたメェ~。


「さあ泣き喚くメェ~!……儂が仕えるサタゴーラ様による人間絶滅の礎になるメェ~!」


適当な人間に【憑依】し、その周囲の人間を【夢遊の誘い】で洗脳して争わせ、皆殺しにしたメェ~。


確か、大都市の結界が【憑依】で無力化出来ると気付いたのもこの頃だったメェ~。


「勇者は……会わぬが吉だメェ……」


勇者が召喚されていたという話も上がり始めた時は、流石に儂では勝てんと判断して身を隠しながら蹂躙を続けたメェ~。


この頃は、とても楽しかったメェ~。


「こんな日が、いつまでも続けば良いメェ~……」


本当に、儂は幸せだったメェ~。


でも……その日は突然やって来たメェ~。


「なっ、魔界に引き戻されるメェ~!……まさか、召喚主たるサタゴーラ様が……死んだ……メェ?」


現世に召喚された悪魔は、召喚主が死んだら魔界に戻されるメェ~。


つまり……儂が魔界に引き戻された事は、サタゴーラ様の死を意味していたメェ~……


「わ、儂に虐げる側の立場をくださったサタゴーラ様が、死んだというのかメェ!?……あ、魔界に引き戻され……」


ーどぷんっ!


そうして、儂は魔界に引き戻されたメェ……



そして、100年と少し経った頃……


「シュルルルルル……ドラグ様、悪魔メープシーの召喚は成功でシュル!」


「ほう……よくやった。……余が直々に褒めてつかわしてやろう……」


……儂は、とある者に召喚されたメェ~。


儂を召喚したのは、身の丈が人間の倍以上もあり、目の様な紋様が書かれた布を顔に被った巨大なラミアだったメェ~。


そしてもう1人、ラミアから少し離れた玉座に座る男が居たメェ~。


その男は全身を黒い鱗に覆われ、頭には鹿の様な角が生え、腰からは黒い鱗と黒い毛で覆われた尾が生えていて……まるで、(ドラゴン)とは別に東方の国に居るとされる"龍"と人間が合体したような若い見た目の青年であったメェ~。


……更に奇妙だったのは、その男の両手両足と腹の計5ヶ所に、魂で生成されたと思われる楔の様な物が刺さっていて玉座に固定されていた事だったメェ~。


「……メープシーさん、貴方は先代の魔王である堕天魔王 サタゴーラに仕えたと聞きまシュル。……ならば、今代の魔王であるドラグ様に仕えるのもまた必ぜ……」


「条件次第だメェ~……」


「ほう……余に意見する事そのものが万死に値するとしてもか?」


「だとしても、儂がこれまで忠誠を誓ったのはサタゴーラ様ただお一人……お前の配下になんぞ、下る訳がないメェ~!」


儂が仕えるのは、サタゴーラ様だけだメェ~。


だから、お前の様な青二才に忠誠なんぞ誓う訳がないんだメェ~!


「なら、そう豪語するお主が余の配下にに下る"条件"とは何だ?」


「……堕天魔王(・・・・) サタゴーラ(・・・・・)様の復活(・・・・)だメェ~!」


「ほう……」


「ど、どうしまシュルか?」


勿論、儂としては藁にもすがる思いだったメェ~。


だが……


「クックック……良いぞ。……ただまあ、復活の方法なんぞ余も知らぬがな……」


「……やはり無理なんだメェ!」


「落ち着け……代わりに、余からはこれをやろう。……この魔王城に残されていたサタゴーラの残留魔力……とも辛うじて呼べる代物だ……」


ドラグなる魔王から受け取ったのは、禍々しくも懐かしい魔力の塊。


……ああ、お会いしたかったですメェ……


「ドラグ様、これは?」


「先代魔王城跡地に残っていた、微かな魔力を寄せ集めたものだ。……何かに使えるかと思い回収して1つに纏めておいたが……復活が可能かは知らん。……それこそ、意思なき動く骸になるだけかもしれんぞ?」


「それなら、その骸に仕えるまでだメェ~……儂は、サタゴーラ様の無念を晴らすために戦うメェ~!」


そうして儂は、あのドラグとかいう青二才の配下として幾つもの集落や都市を100年前と同じ様に滅ぼしていったメェ~。


そして……


「……くっ、儂をどうするつもりじゃ!」


「別に……ただ、儂が【憑依】するための"器"になってくれればそれで良いメェ~……」


儂は旅人に【憑依】して聖都の結界を突破し、そこから警備兵に【憑依】し直して教皇に接触したメェ~。


「……そんな事はさせんのじゃ!……この地位は、儂が先代教皇のメサイア様から受け継いだもの!……お前の様な悪魔に明け渡す訳には……」


「なら、この場でこの男を殺すだけだメェ~……」


「くっ……」


「隙ありだメェ~!……【憑依】!」


「うがっ!?」


【憑依】していた警備兵の男の命をちらつかせれば、驚く程簡単に隙を見せたメェ~。


あ、その後警備兵の男は手駒として今も手元に置いているメェ~。


……こうして、儂は聖都 ラフロンスの教皇として活動を始めたんだメェ~。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(金村 正義(ジャスティス)視点)


「……とまあ、その後は従魔として一緒にラフロンス入りしていたチューグロスと協力して、サタゴーラ様復活の準備をしてたんだメェ~!」


「……あっそう……胸糞悪い話っしょ!」


俺チャンは、何故かメープシーの半生を聞かされた。


その全てが胸糞悪い話で、何度吐き気を催したか……


「おや、賛同はしてくれないメェ~か……」


「どこに賛同する要素があった訳よ!?」


「フォッフォッフォ……儂とて、素直に手駒になってくれるなら手荒な真似はせんという事じゃメェ~……」


「だったらお断りっしょ!……お前みたいな邪悪の配下になるとか、死んでも嫌っしょ!」


俺チャンは、メープシーの誘いを一蹴した。


「ハァ……分かっておるかメェ~?……お前、今絶賛ピンチの真っ只中だメェ~よ?」


「ぐっ……」


そう。


今の俺チャンはピンチだった。


何せ……


「私はメープシー様の配下であり、サタゴーラ様の下僕です……」


ーガシッ……


「俺はメープシー様の配下であり、サタゴーラ様の下僕です……」


ーガシッ!


「チッ……洗脳した人間を潜ませてるって気付かなかった俺チャンが悪いとはいえ……ヤバいっしょ……」


俺チャンは今、メープシーに洗脳された警備兵や神官、そして修道女(シスター)に全身を掴まれて身動きがとれなくなっていた。


「フォッフォッフォ……やはり、手駒共の肉体に関するリミッターを外しておいて良かったメェ~……」


「道理で力が強い訳よ……」


「さて、儂としては同じ洗脳スキル持ちで分かり合えるかと思ったメェ~が……勇者は何処まで行っても勇者だったメェ~か……」


……悔しいけど、洗脳された人間を無傷で抑えるのは不可能みたいっしょ……


ハァ……


「じゃあ1つ質問っしょ……その体の元の主であるタイボルド教皇猊下は、今どんな状態な訳よ?」


「フォッフォッフォ……心配せんでも、()()()()()()()メェ~……」


「その方が、タイボルド教皇猊下を苦しめられるからっしょ?」


「ほう……鋭いメェ~!」


「……本当に胸糞悪い話っしょ……」


この手の悪役が元の人格を消していない理由として考えられるのは、人質か愉悦目的かの2択だ。


その内、最悪な方を選んだけど……まさかのビンゴだったとは……


「今こうしているこの時も、教皇の精神は苦しんでいるメェ~……まあ、自分の体で悪事を働かれているんだから当然だメェ~……」


「じゃあ、1つ質問っしょ。……その体になってから、人を殺した事はあるっしょ?」


「う~む………いや、ないメェ~。……まあ、バレても洗脳すれば良いだけだし、そもそも下手に人を殺せば疑いの目が……」


「なら、その教皇猊下はまだやり直せるっしょ!」


善人の精神は、自身の体が人を殺した事実に耐えられない。


でも、まだ洗脳だけで人を殺していないなら……


「……まさか、教皇を救うつもりだメェ~!?」


「俺チャンの新技、見せてやるっしょ!」


俺チャンは、全身を洗脳された人達に掴まれながらも啖呵を切った。


この糞ったれな悪魔に、引導を渡すために……

ご読了ありがとうございます。


メープシーは今の魔王であるドラグに忠誠を誓っておらず、かつての主を復活させる事だけを目的としています。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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