84.潜入からの戦闘開始
さて、ようやく第3章の山場です!
(浅山 藤四郎視点)
装備屋を出た俺達はあの後、色々な露店を回った。
ナフリー、メアリー、ロウルさんは満足の行くまで楽しんでくれた様だった。
そして夕方になり、馬車に戻ると……
「……っちゅう訳で、ツカサはんとジャスティスはんには教皇の居るマクセリス教本部に侵入して貰おうと思てるんやけど……」
「いや、もう1回説明してくれ……」
エルリスさんから聞かされた話は、何かもう訳が分からなかった。
魔王軍幹部のシトラが内情を話して、謎の狐獣人が教皇にメープシーが【憑依】してると話して……もう、何を信じりゃ良いんだよ……
後、この街の宗教はマクセリス教っていうのか……
「ん?……せやから、斯々然々で……」
「……で、その狐獣人は何処だ?」
「いや、一通り話し終わった後にどっか行きはったけど……」
「……じゃあもう1つ。……何でシトラがまだここに居るんだよ!?」
「居たら悪いガルか?」
あ~もう、話を聞きてぇ狐獣人は居ねぇし、代わりに本来なら敵の筈のシトラが何故か居残ってるし……
「悪くはねぇが……もう良い。……それより、何で司と正義なんだ?」
「勿論、今回の相手と相性がええからや。……ツカサはんの【汚れ無き世界】は汚れだけやのうて病原菌も無効化出来るし、ジャスティスはんのスキルならメープシーの洗脳にも対抗出来ると思たんや……」
「……だからって、2人だけで行くのは……」
これまでの魔王軍幹部を見てると、流石に2人だけで対応出来るかは心配である。
タブルドは圧倒的な防御力を誇っていた。
ラビリンスは次から次に配下の魔物を召喚していた。
シトラは何かもうひたすら強かった。
ミノガルは物理攻撃が即死級だった。
バーバは魔法攻撃が即死級だった。
……そんな奴等と同格の相手を、この2人だけで出来るのだろうか……
「……トウシロウはんが心配するんも分かるけど、魔王軍幹部を単独で撃破出来ん訳とちゃう。……現に、メアリーはんは単独でバーバ倒しとるし……」
「あれ、1歩間違えば私死んでましたわよ?」
「……まあ、それでもメアリーはんが単独撃破出来た事には変わりないし……」
「……エルリス、言っておいて不安になるのは止めるのじゃ……」
なあ、マジで本当に大丈夫なんだよな!?
「……司も正義も、本当に良いのか?」
「ふむ……ボクは構わないよ。……既に戦う覚悟は出来ているし……もし名も知らない狐君の言葉が嘘だった場合に、汚名を被る覚悟も出来ている……」
「俺チャンもっしょ。……いつでも命をかけられるし、誤解だった場合は素直に汚名を受け入れるっしょ!」
「……本当に、お前等勇者らしいよな……」
命をかける覚悟はともかく、もし狐獣人が嘘ついてた場合には素直に汚名を受け入れるとか……
「ああ、勿論嘘だった場合はボク達の独断という事にするから、君達に害は及ばない筈だけど……」
「ま、もしもの時はすぐにこの街を出発して欲しいっしょ!」
「ほんま、苦労させてまうな~。……確か、今日付き合ったばっかなんやろ?」
「……ハァ!?」
「本当ですニャン!?」
「そ、そう来ましたの……」
「めでたいですな!」
つ、司と正義が付き合い始めた?
いやまあ、別に自然っちゃ自然だが……そうか、この2人がな……
「じゃあ、ボク達はもう行くよ……」
「吉報を待ってると良いっしょ!」
そうして、2人は潜入へと向かって行った。
……俺は、その成功を祈る事しか出来なかった。
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(1時間後、扇羽 司視点)
「【意識改変】……俺チャン達を通して、その存在を黙認するっしょ……」
「はい、分かりました……」
今、マクセリス教本部に潜入したボク達は、出くわした警備兵全員に【意識改変】をかける事で事なきを得ていた。
それにしても、いつ見ても正義君のスキルは悪人が使うスキルにしか見えないね……
「……さ~て、このまま奥に進むっしょ!」
「うん、そうしようかい……」
そうして警備兵に【意識改変】をかけてマクセリス教本部の奥に進むボク達だったけど、やけに人気のない場所まで来た時に"それ"は来た。
「チュッチュッチュゥゥ~!……侵入者とは恐れ入ったっチュね~!」
ーサ~ッ……
「「「「「「「チュ~チュ~チュ~!」」」」」」」
「っ!?……正義君!」
「うん、何か来るっしょ!」
謎の声と大量の鼠の鳴き声が聞こえて来た、その次の瞬間だった。
ーサ~ッ!
「っ!……こ、これは……」
「……鼠の大群っしょ……」
ボク達の前に現れたのは、大量の鼠の大群。
そして、それ等が1つの場所に集まり始めて……
「チュッチュッチュ~!……ここまで来た事は褒めてやるっチュが、まさか2人だけとは……気でも狂ったっチュか?」
「う、うわぁ……」
「き、キモいっしょ……」
その姿は、気持ち悪いとしか言えなかった。
……というのも、大量の鼠が寄り集まって人の形を無理矢理作ると、ボロボロの白衣や手袋、ブーツ等が生成された。
そして、極めつけに本来なら頭に該当する場所にはズタ袋が被せられていて、右手の手袋はランタンを掲げていた。
そんな……手に掲げているランタン以外の全ての中を大量の鼠が蠢き、無理矢理人の形を保っている様子は……気持ち悪いとしか言えなかった。
「何が悪鼠将軍だ……ホラーゲームに出て来る敵キャラじゃないか……」
「……まさか、こんな見た目だとは想像してなかったっしょ……」
てっきり、ボクとしては人型の鼠かと思ってたら……鼠が集まって人の形を保ってるとか……
「チュッチュッチュ~!……お前達はここで皆殺し……にしたいのは山々っチュが、そこの金髪だけは先に進むっチュ!」
「え、何でっしょ?」
「メープシーの奴が、お前を手駒に欲しがってるからっチュ!……もっとも、これを聞いたところでお前に為す術はないっチュがな!」
「……司チャン、こいつは……」
「正義君は先に進んで欲しい。……こいつには、多分ボク達の魅了も洗脳も効かなさそうだし……」
「チュッチュッチュ~!……その通りだっチュ!……俺様は【病原菌生成】以外にも【完全自立命令系統】のスキルを持ってるっチュ!」
「……ラビリンスと同じって訳か……」
「……なら、尚更俺チャンも一緒に……」
「いや、ここは手分けして各個撃破が望ましい……」
「……分かったっしょ……」
こいつは正義君と相性が悪いし、致死性の病気を蒔かれても厄介だ。
「……さあ、チューグロスだったか?……ボクの格好良さを引き立てるための踏み台になってもらおうか?」
「チュッチュッチュ~!……醜い死体になるのはそっちだっチュ!」
「司チャン……俺チャン絶対に勝つから、そっちも絶対に勝つっしょ!」
ータッタッタッ……
「フッ……当然じゃないか……」
そうして、ボクはチューグロスと向き合う。
さて……どうしたものかな……
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(金村 正義視点)
俺チャンは足を進めた。
司チャンなら勝てると思いながらも……やっぱり心配ではあった。
「そもそも、今のままじゃ勝てないっしょ……強いて言えば、告白の時に思い付いたパワーアップ手段をたった数時間で実用出来るまで持って行ければ或いは……」
そう。
あのパワーアップを実用化出来れば勝ち目はある。
……と思っていると……
「ん?ここは……聖堂っしょ?」
「いかにも。……ここは聖堂だメェ~……」
「っ!?」
突如として俺チャンに話しかけて来た相手は……白い長髭とスキンヘッドが特徴的な老人だった。
ただし、口調は思いっきり正体を示していたが。
「フォッフォッフォ……今更正体を隠す必要もないメェ~からのう……もっとも、これでも見た目は変装しておったのメェ~じゃがのう……」
ーズズズッ……
「……何っしょ……」
老人の体が闇に包まれる。
そして、その闇が晴れると……
「さあ、お前も儂の手駒にしてくれるメェ~!」
白かった長髭は黒くなり、頭には羊の様な角が生え、目も白目が黒く、黒目が黄色くなっていた。
「……メープシー、お前は俺チャンがここできっちりと倒すっしょ!」
「出来るものならやってみるメェェェェェ!」
そうして、俺チャンの戦いも始まった。
だが、このメープシーが一筋縄では行かない相手だと知るのは、このすぐ後だった……
ご読了ありがとうございます。
チューグロスとメープシーは直接的な戦闘は苦手ですが、どちらも搦め手が強力です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。