8.ナフリーの過去
どんどん更新どんどん更新!
(ナフリー視点)
「最近はナフリーも狩りが上手くなって来てて、儂は本当に嬉しいニャン。」
「も~、貴方ったら本当に子煩悩ニャンね~。」
「いや、兄である俺から見てもナフリーの狩りは上手いニャン。」
……あれ、これは夢ニャンか?
だって、皆はあの日……
……何があったっけニャン?
上手く思い出せないニャン。
「そうだ……ナフリー、最近は魔王軍が各地で猛威を振るっていると聞くニャン。……だから、今度の狩りも遠くには行かず儂から離れない事を約束して欲しいニャン。」
「わ、分かったニャン。……あたし、弱くてごめんニャン。」
「全然気にしてないニャン。……きっと、ナフリーは将来儂達を越える実力を出せるようになるニャン。」
「そうだな。……俺すら越える戦士になると俺は踏んでいるニャン。」
「ええ、私もそう思ってるニャン。」
「お父様、お兄様、お母様……ありがとうニャン。」
きっと、これはあたしにとって幸せな時間ニャン。
……ん?あたしは何を考えてるニャン?
と、その時だったニャン。
「敵襲ニャン!敵襲ニャン!……オークの軍勢が我等の里を……ゴバッ!?」
「ブヒィィィィィ!」
「ブヒブヒ……」
「ブヒヒヒヒ……」
突然、里がオークに襲われて……っ!?
これは、あの日の夢ニャン!?
「お父様、お母様、お兄様、今すぐ逃げるニャン!」
「いや、儂は救援に向かうニャン!」
「私だって戦士の端くれニャン!お供するニャン!」
「俺も行くニャン!」
……ああ、あの日もこうだったニャン……
ただのオークの軍勢だと侮っていたお父様達は、オークの軍勢に立ち向かって……
「お父様、あたしもお供するニャン!」
ん!?あたし、何を言ってるニャン!?
……いや、これは恐らく夢ニャン。
だから、あたしが何を考えてもそれを反映させる事は出来ないニャン……
「いいや、ナフリーは逃げろニャン。」
「ええ、今のナフリーには荷が重いニャン。」
「代わりに、オークを皆殺しにした俺達を迎えてくれれば良いニャン。」
「……ぶ~、分かったニャン……」
駄目ニャン!
あいつ等には敵わないニャン!
……いや、これがあたしの夢である以上はどうにもならないニャン。
それでも、夢だけでも皆には……
「じゃあ、行ってくるニャン。」
お父様がそう言うと、皆は出て行ったニャン。
……結局、夢の中でも変えられなかったニャン……
そして、そこから数分程度経過したニャン……
「……暇ニャン……やっぱり、お父様達の様子を見に行くニャン!」
……あの日もそう呟いたあたしは、静かに家を出たんだったニャン……
それが、あたしの心にトラウマを刻むと共に、命を繋ぐ事に繋がるとは知らずに……
「……あれ?やけに静かニャンね……ん?あっちはまだ騒がしいニャン!」
てっきりお父様達が少し苦戦してるのか程度に感じていたあたしは、騒がしい方へと足を進めたニャン。
そこで待ち受けてた光景を見るまでは……
「ブフォォォォォ!……オ゛ドゴ……ゴロズ……オ゛ンナ……オガスゥゥゥゥゥゥ!」
「ブヒヒヒヒ!」
「ブヒィィィィィ!」
「……え?」
その時にあたしが見た光景は、想像を絶するものだったニャン……
首から上を潰され、横たわるお父様……
腹を裂かれ、うつ伏せで倒れるお母様……
全身がミンチ状になり、所持品らしき物で何とか判別できたお兄様……
他にも大量の仲間の死体が山積みになり、鼻をつんざくような臭いを発していたニャン……
「ニャ……ニャン……うっぷ……」
あたしは何とか吐きそうになったのを我慢するなり、反対方向に向けて走り出したニャン。
途中、他の仲間の家に入るオークも見かけたから、きっとあのまま家に残ってたら確実に殺されてたニャン。
だから、家を出たまでは命を繋ぐ事に繋がったニャンけど……そこからは愚策だったニャン。
「ブヒィ!」
「ブヒブヒ!」
「ブヒヒヒヒ!」
考え無しに走った結果、3体のオークに気付かれてしまったのニャン。
不幸中の幸いか、3匹は仲間に知らせず独占するつもりだったらしく、結果的にはそれ以上追手が増える事はなかったニャン。
そしてそこから記憶は一時的に途絶え……
「ええ、そうなのねん。やはり全滅……欲豚将軍に気付かれる前に去るのが良さそうなのねん……」
「……ん?」
場面は切り替わり、あたしはルルネン様の背中で目を覚ましていましたニャン。
「ああ、気が付いたのねん!……私はルルネン、しがない奴隷商なのねん!」
「……貴方が……助けてくれたニャン?」
「……いや、貴女がオーク3体を倒して気絶した場面に遭遇しただけの、ただの通りすがりなのねん。」
「っ!?あたしがオーク3体を倒したニャン!?」
ルルネンさんから聞いた話では、遠出した商売の帰り道、偶然あたしがオークを倒した瞬間に出くわしたらしいですニャン。
怪しさ満載ですが、不思議とこの人の言葉から嘘は感じませんでしたニャン。
「……とはいえ、火事場の馬鹿力だったのねん。現に、今だって意識が朦朧としてるのねん。」
「うん……多分、すぐ気絶するニャン……」
「この後の事は私にお任せなのねん。王都ネルフラにあるデルレン商会で保護を……」
「いえ……奴隷にして欲しいニャン……」
「っ!?何を言ってるのねん!?」
……この時のルルネンさんの顔は驚きと共に、ああまたか……という諦めにも似た表情も浮かんでましたニャン。
「……頼むニャン……」
「……理由は何となく察せるねんが、どうしてなのねん?」
「……あたしも17歳で充分な年齢ニャン。でも、あたしの実力じゃ冒険者をやっても最低ランクの魔物としか戦わせて貰えないニャン。」
「当然なのねん。」
「それじゃあ皆の仇を取れないニャン!あたしは、魔王軍の魔物を許せないニャン!」
「……それで、奴隷になるのねん?」
「基本的に……奴隷は魔物との戦闘で使い潰されるって聞いたニャン……」
「その分、早く強い魔物と戦える……そう思ったってところなのねん?」
「……そうニャン。」
……普通に冒険者をやるより手っ取り早く強い魔物と戦える……その一点だけで、あたしは奴隷になる事を決めたのニャン……
「……分かったのねん……獣人はいつもそう言って死に急ぐのねん……」
「余計なお世話ニャン……あ、もう限界ニャン……」
そうして、あたしは再び意識を失い、5日間も生死の狭間をさまよったニャン……
でも、この時のあたしは想像してなかったニャン。
目覚めた後に奴隷になって、ご主人様に買われるまで誰にも見向きもされずに過ごす事なんて……
ーパチリ……
「ん?……夢から醒めたニャン?」
ようやく長い悪夢から解放されたあたしは、宿屋の床で目を醒ましたニャン。
「……この感覚、故郷を思い出して良いニャン……」
故郷では床に直接横たわって寝る事が多かったあたしは、宿屋でも同じ様な事をしてたニャン。
……ご主人様からはベッドを譲られるけど、あの柔らかい感覚は逆に落ち着かないニャン……
「……ご主人様、よく寝てるニャン……」
この人のお陰で、あたしはオークやゴブリンキングを倒せる力を得たニャン。
……最初は何とも思ってなかったけど、今はもうかなり慕ってるニャン。
「……ご主人様、あたしはいつまでも……例え皆の仇を討ってもご主人様の奴隷で居続けるニャン……」
真夜中の誓いは誰にも聞かれず……されど、あたしはその誓いを一生守ると決め、再び眠りについたのだったニャン……
ご読了ありがとうございます。
ナフリーは、自身に力をくれたために藤四郎を慕っています。……ですが、それは本人の自覚してる感情で、実際は恋慕に片足突っ込んでいます。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。