79.茜とシトラス
第3章、思ったより長くなりそうで展開悩んでいます。
(浅山 茜視点)
「ふっふふ~ん……ふっふふ~ん……ん?」
お兄ちゃん達と別れて行動を始めた私は、リズムを口ずさみながら露店を回っていた。
だけどそんな時、私の目にとある光景が写った。
「え~ん!え~ん!……おじちゃ~ん!おばちゃ~ん!どこ~!」
「あれは……迷子かな?」
見た感じ5歳と思われる女の子が、1人で家族を探して泣いていた。
「え~ん!」
「パパやママじゃなくて、おじとおばが連れて来たって感じかな……ま、考えるよりまず動こうかな……ん?誰かあの子に近付いてる?」
私が迷子の女の子の方に行こうとしたのと同じタイミングで、女の子に近付く人影があって……
「え~ん!え~ん!」
「……おい、お前迷子ガルか?」
「……おねぇちゃん、だれ?」
「お姉ちゃんは……シトラスっていうガル!」
「しとらす……おねぇちゃん?」
「そうだガル!」
……シトラスって名乗った見た感じ若い女性は、と~っても見覚えのある虎獣人だった。
「しとらすおねぇちゃん……わたしのおじちゃんとおばちゃん……しらない?」
「知らんガルなァ……ただ、オレもお前の家族を探してやるガル!」
「え、ほんと!?」
「本当だガル!……とはいえ、こんなちっこいと見つかるもんも見つからねぇガルなァ……よし、よっこいガルァッと!」
「うわ~っ、たか~い!」
「これで遠くまで見えるガルよな?」
「うん!」
シトラスちゃんは迷子の女の子を肩車して、周りから見えやすくしてた。
……うん、やっぱりそうだよね……
「さて、これで探し行くガ……」
「やっほ~、シトラスちゃんだっけ?」
「……あ、アカネ……」
「あ、やっぱり私を知ってるんだね?」
はい確定~!
シトラスちゃんの正体はシトラちゃんでした~!
パチパチパチ~!
「……念のため言っとくガルが、こっちの方が本名だガルからな!」
「へぇ~、シトラスちゃんか~……ちなみに名前に意味はある感じ?」
「ん?……多分そこまで深い意味はねぇガルよ?」
「そっか~……」
……やっぱり、私達の世界にある柑橘類のシトラスとは関係ない感じか~。
と、ここで……
「……おねぇちゃん、だれ?」
「ん~?……私は茜っていって、シトラスちゃんのお友達だよ~?」
「そうなんだ~!」
「……まあ、今はそれで良いガル……」
一応、私も迷子の女の子に名前を言っておく。
ああ……それにしても、本当にシトラスちゃんは可愛いな~。
ま、それはそれとして……
「……ねぇねぇ、シトラスちゃんの身の上を……」
「それは言えねぇガル!」
「……なら、私をどう思ってるか……」
「好敵手だガル!」
「……この街には何しに……」
「ただの観光だから気にするなガル!」
うぅ、難敵だな~。
せめてもう少し、心を開いてくれないかな~。
ただ観光だっていうのは嘘じゃなさそうだし、シトラスちゃんは特に何か企んでたりしなさそうだね。
「……なら、同僚の兎が幽閉してる妖精について……」
「……知らねぇ話だガルな……」
ん?
知らない?
「え、シトラスちゃん知らなかったの!?」
「……というか、他の同僚については表面上の情報しか知らねぇガル……オレはただでさえ外様な上に、兎や羊と違って非協力的な外様だガルからな……」
「そっか……やっぱり、シトラスちゃんは魔物じゃない純粋な虎獣人だったんだね……」
何で、虎獣人のシトラスちゃんが魔王軍幹部のシトラとして活動してるのか……
きっと、今の私じゃ教えて貰えない。
「……で、兎の話は何なんだガルか?」
「ああ、実はちょっと前に兎から聞いたの。……ワンダーランドの妖精を幽閉してるって……」
「ハァ……まあ、それはオレの方でも調べといてやるガルよ!」
「え、良いの!?」
「あの兎の事だガル。……絶対、胸糞な話だと思うガルからな……」
「……まあ、十中八九そうだよね……」
ラビリンスは性格が悪い。
……いくら見た目がタイプでも、あんな内面の持ち主は範囲外だよ。
「あ、おねぇちゃんたち!」
「お、家族を見つけたガルかァ?」
「あのわたあめ、ほしい!」
「なっ!?……ちゃんと家族を探すガル……」
「まあまあ……わた飴、私が買ってあげるよ!」
「ほんと、おねぇちゃん!」
「うんうん、可愛いって正義だよね~……」
「ガルァ……」
あれ?
何かシトラスちゃんが呆れてる……
ま、良いか!
……とまあ、そんなこんなでわた飴を買って……
「おねぇちゃん、ありがとう!」
「えへへ、どういたしまして~!」
「……何か、子供っぽいガルなァ……」
「人間、誰しも子供のままだよ。……特に、子供と話してる時は特にね?」
「……そうガルかァ……」
……やっぱり、訳ありなんだろうね……
シトラスちゃん、やけに悲しそうだもん。
「……ま、今は何も聞かないであげるけどね……」
「……感謝するガル。……そういやお前、名前は……いや、下手に聞いて情が移っても嫌ガルから、聞かないでおくガル……」
「じゃあ、私も聞かないでおくよ……って、そうもいかないでしょ!」
「ん~?」
シトラスちゃんは子供の名前を聞かないつもりで居るみたい。
……って、そういう訳にもいかないでしょ!
「……名前聞かないで、どうやって迷子探しするつもりなの?」
「うぐっ……そこはまあ……あ、そういやおじやおばを探してやがったが、パパやママじゃねぇガルか?」
「……パパもママも、びょうきでねこんでる……」
「ああ、そういや5ヶ月前から前例のねぇ病気がここラフロンスで流行ってるって聞いたガルなァ……確か、体内の魔力を体外に常時排出しつつも、決して死にはしねぇ病気……まるで、何かに飼い殺しにされてる様な病気だガルなァ……」
「確かに……魔力を体外に放出し続けてたら、魔力切れを通り越して死んじゃいそうなのに……」
「……嫌な想像しちまったガル……」
「ん?どうしたの?」
何か、シトラスちゃんの顔色が一気に青ざめた。
「いや、オレの同僚の鼠が、オリジナルの病原菌を生成する能力を持ってやがるんだガル……」
「え?」
鼠って、悪鼠将軍 チューグロスの事かな?
……にしても、オリジナルの病原菌か……
「そいつは"鼠の王"っていう、多くの鼠が集合して合体したみてぇな魔物なんガルが……まあ、ここの結界はそれこそ純粋な獣人のオレぐれぇしか遠さねぇガルし関係ねぇガルだろ……それこそ、兎の分身体ですら入れねぇガルのに……」
シトラスちゃんは、魔物の侵入者が居ない前提で話してる。
でも……
「……あのさ、魔王軍の魔物が結界をすり抜ける方法ってある?」
「ん?……まあ、あるとすれば誰かの従魔になるぐれぇだろうガルなァ……もっとも、そんな物好きは魔王軍に居やしねぇガルが……」
「……じゃあさ、魔王軍のメンバーで【憑依】するタイプの敵って居る?」
「ガルァ?……それなら、羊が該当しやがるが……どうしてだガル?」
羊……老羊将軍 メープシーの事かな?
「……ここの結界……だけかは分からないんだけど、少なくともここの結界は【憑依】した敵を弾かない……」
「……マジで言ってるガルか?」
「うん。……ねぇ、その羊って碌に縁の深くない相手でも【憑依】出来ちゃう感じ?」
「多分、そうだガル……」
……線と線が繋がって行く。
【憑依】持ちの羊、【憑依】じゃ作動しない結界、オリジナルの病原菌を生成する鼠、従魔化すれば通り抜けられる結界……これだけの情報があれば、馬鹿でも真相に辿り着ける。
「ねえ、その2体って今何してるか分かる?」
「いや、オレは口が軽いガルから何も聞かされてねぇガル……でも、言われてみれば確かに5ヶ月ぐれぇ前から見てねぇガル!」
「……ビンゴだね……」
もう、確実に魔王軍幹部が関わってる。
……とまでは言い切れないけど、可能性は高い。
「……おねぇちゃんたち、さっきからなんのおはなししてるの?」
「あ、わた飴食べ終わった?」
「うん!……あと、おじちゃんたちいた!」
「え、何処!?」
「むこう!」
「よし、行くガルよ!」
「そうだね。……で、その後にエルリスさん達の所に行かないと!」
……その後、私達は迷子の女の子を親戚のもとに送り届け、急いでエルリスさん達が居そうな公営賭博場を探すのだった……
ご読了ありがとうございます。
ちなみに、シトラスは魔王に忠誠心なんて欠片も持っていないので、普通に情報を喋りまくります。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。