76.喧嘩する程仲が良い
……人の機微って上手く書けません……
(エルリス・フルウィール視点)
「……メサイア……はん?」
……信じられへんかった。
せやけど、ウチの目の前に現れた人物が本物なんは直感で確信出来てしもた……
ウチがかつて所属しとった先代勇者パーティーの一員で、ウチの悪友やったメサイアはん。
「そ、そんな訳あらへん……メサイアはんは、10年前に死んだ筈や……」
そのメサイアはんがウチの目の前に居るなんて、ウチは夢でも見とるんかいな……
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(浅山 藤四郎視点)
「そ、そんな訳あらへん……メサイアはんは、10年前に死んだ筈や……」
エルリスさんは声を震わせながらそう呟いた。
「……妾は確かに言った筈じゃぞ?黄泉の国から舞い戻ってやると……まあ、10年もかかってしもうたのは流石の妾でも計算外じゃったが……」
「いや、メサイアはんの人生は計算外ばっかやん……って、ほんまに本物なんやな……」
「そうじゃと言っておろうに……」
「何やねん……どんな手を使ったんか知らへんけど、ほんまに有言実行して戻って来る奴が居るかいな……」
ーポタポタポタ……
「……エルリス、泣いておるのか?」
メサイアさんが本物だと確信したらしいエルリスさんは、静かに涙を流し始めた。
「う、煩いわ!……にしても、今のメサイアはんってどんな状態なん?……ずっと浮いとるし……」
「多分、高位のゴーストじゃな。……魔力で肉体も形成しておるから、物だって触れるのじゃ!」
「そ、そうかいな……まあ、そうやないと今のメサイアはんが20歳頃の見た目な理由が分からへんし……」
「まあ、そういう事じゃな!」
どうもメサイアさんは高位のゴーストとして現世に戻って来たらしく、ずっと宙に浮いていた。
……とはいえ物質に触る事は出来るらしいので、やはり魔力は凄いとしか言えねぇな……
「……そこまでして現世に戻って来るとか、まだやりたい事でもあったんかいな……」
「それも死ぬ前に言った筈じゃぞ?……エルリスを1人にさせんため、それだけじゃ……」
「本気で言っとるんか?」
「本気も本気じゃ!……現にお主、この戦いが終わったら死ぬつもりじゃったろ?」
メサイアさんの言う事はもっともだった。
少なくとも、エルリスさんが命を捨てようとしているのは本当だからな……
「な、何でそない事が……」
「冥界は便利でのう……任意の相手1人のみなら、その動向を見守れるのじゃ!」
「……そうかいな……」
つまり、エルリスさんのプライベートはメサイアさんに筒抜けだったと……まあ、嫌だろうな……
「まあそういう訳じゃから、妾はエルリスが寿命で死ぬその日まで隣に居てやるのじゃ!」
「……余計なお世話や……」
ーポタポタポタ……
「……やはり、妾では泣く程嫌じゃったか?」
「そんな訳あらへんやろ!」
……メサイアさん、本当にエルリスさんの事が大切なんだな……
死ぬまで一緒とか、男女だったらプロポーズだぞ?
「……すまんのう。……もし冥界にミツエが居れば良かったんじゃが……」
「居らへんかったんか?」
「どうも、異世界からの転移者はこの世界の冥界には居ないようなのじゃ……」
「……そうなんか……」
おっと、何気に気になる情報だな。
もしそうなら、俺が死んだ時に魂は何処へ行くんだ?
「……まあ、暗い話はここまでにするのじゃ……」
「暗くしたんは何処の誰や。……それはそうと、どうやって戻って来たか、後でええから説明してな?」
「分かっておるのじゃ。……ただ、それはそれとしてずっと気になっておった事があってのう……」
「……何か、嫌な予感がするんやけど……」
メサイアさんの視線は、何故か俺に向けられていた。
そして、次の瞬間……
「トウシロウとやらよ。……エルリスを通して見ておったが、なかなか妾好みの男ではないか……」
ージュルリ……
「えっと、メサイアさん?……今、俺見て舌舐めずりしたか?」
メサイアさん、完全に俺を狙ってやがる……
「なっ……メサイアはん、やっぱりトウシロウはんに手ぇ出すつもりかいな!?」
「あ、エルリスさん!もっと言ってく……」
「そっちがその気なんやったら、ウチもトウシロウはんに手ぇ出したるわ!」
「いや、何でだよ!?」
ここで言う"手を出す"が、性的なものであるのは俺でも分かった。
つまり、俺を狙う獣が1人から2人に増えた事を意味していた……
なお……
「何でお兄ちゃんばっかりモテるの!?……世の中理不尽じゃないかな!?」
……と喚いている茜はこの際無視する。
「何でって……そりゃウチがトウシロウはんの事を好きやからやけど?」
「だが、前は関係を進展させる気がないって……」
「そんなん撤回や撤回!……メサイアはんがウチと一緒に生きてくれるっちゅうんなら、ウチも刹那的な恋に身を焦がしたるわ!」
あっ……何かメサイアさんの復活が、エルリスさんの恋愛スイッチを押しちまったようだな……
「なっ……妾は確かにエルリスが死ぬまで一緒に居てやると言ったのじゃ……じゃが、それでここまで意見を変えるかのう!?」
「煩いわ!……メサイアはんこそ、復活早々トウシロウはんを口説くとかええ根性やんけ!」
「エルリスにだけは言われたくないのじゃ!」
ーガシッ!
「それはこっちの台詞やわ!」
ーガシッ!
「「ぐぬぬ……」」
……エルリスさんとメサイアさんが、俺を巡って頬を引っ張り合ってる……
もしかして、本当は仲悪いのか……
……と、俺が思っていると……
「「ぷっ、ふふふふふ!」」
「え、笑い出した?」
突然、頬を引っ張り合っていたエルリスさんとメサイアさんが揃って笑い出した。
「ハァ……こうしてウチ等が頬を引っ張り合うんもいつぶりやろうな~……」
「少なくとも、妾が老人になってからはしておらんかったからのう……本当にいつぶりじゃ?」
頬を引っ張り合っていた手を離し、2人で思い出話を始めるエルリスさんとメサイアさん。
……やはり、仲が良いのか?
「……ま、何だかんだ言うたけど、メサイアはんが決めたんならウチは何も言わへんよ……」
「妾の方こそ、エルリスが決めたのなら何も言わないのじゃ!」
「ほな、後はトウシロウはんの恋人3人に許可貰わなあかんな~?」
「……という訳で、どうか妾達もトウシロウと交際させて貰えんかのう?」
「……俺の意思は?」
俺より先に、俺の恋人達に確認取るとかどう考えてもおかしいだろ!?
そう思っていたのだが……
「あたしは別に構いませんニャン!」
「私も別に構いませんわ!」
「私めも歓迎しますぞ!」
「……だから、俺の意思は!?」
俺の意思を除けば、割と外堀がどんどん埋められていやがる。
……というか、基本的にこの3人は相手の性格がよっぽど悪くねぇ限り認めるしな……
「……ちゅう訳や。……せやけど、最後に尊重するんはトウシロウはんの意思やよ。……どないする?」
「いや、もっと早く確認すべきだろ……後、エルリスさんはともかくメサイアさんはよく分からねぇし、ぶっちゃけエルリスさんもよく分からねぇ……」
「ほな、取り敢えず保留やな?」
「……すまん……」
こうして、俺がエルリスさんやメサイアさんと付き合うかどうかは保留となった。
なったのだが……
「お兄ちゃん、ここでちゃんと断らないからハーレムメンバーが増えるんだよ?」
「藤四郎さん、押しに弱いですからね……」
「藤四郎君、ボクが言うのも何だけど……本気で保留が通ると思ってるのかい?」
「藤四郎チャンが保留って言ったら、それは確実にハーレム入り確実っしょ……」
「ご主人様、早く決断してあたしの家族を増やしてくださいニャン!」
「トウシロウ、もはや私の口から言う事はありませんわね……」
「私めも同感ですな……」
……何というか、皆からしたら俺が2人をハーレム入りさせるのは既に確定しているらしいのだった……
ご読了ありがとうございます。
……という訳で、メサイア加入です!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。