70.王子とチャラ男 終幕
いよいよ、司と正義の過去も終わりです。
(金村 正義視点)
あの誘拐から数日が経過して……
「……やあ、正義君。ようやく会えたね!」
「ハァ……こっちは謹慎食らいかけたけど、理由が理由だったんで何とか厳重注意だけで済んだっしょ……」
本当なら謹慎だったが、理由が理由だったので厳重注意のみで済んだのは本当に運が良かった。
俺チャン、普通に謹慎するつもりだったし……
「……本当に色々して貰ってすまなかったな……」
「別に、俺チャンが好きでした事っしょ!……ま、それはそれとして親父からは滅茶苦茶叱られつつも褒められたけど……」
「え、何でだい?」
「どうも、今回誘拐の現場になった廃工場から、色々とヤバい物がわんさか見つかったらしくて……大蔵山家の悪事が白日のもとに晒す事が出来るとか何とか言ってたっしょ……」
「……ああ、そういえばそういう事に使う場所って義泥君も言ってたね……」
あの時の義泥の慌て様は、自分だけでなく一族の悪事がバレそうだったかららしい。
まあ、そんな所を使うなと言いたいが……
「……にしても、よくボクが連れて行かれた場所が分かったね?GPSでも仕込んでたのかい?」
「いや、それだとバレたら困るから遠方からの監視っしょ。……俺チャンの舎弟の1人に、徹底的に司チャンの動向を監視させてたっしょ!」
「ふむ、そういう事か……」
「で、司チャンが捕まったと同時に複数人で追跡を開始して、何とか辿り着いたって感じっしょ!」
「……本当に、感謝するよ……」
……今思えば、成功したのも運要素がデカい。
途中で車を見失ってたら?
ゴロツキが銃とか持ってたら?
警察すら抱き込まれてたら?
……そんな、博打みたいな方法だった。
まあ、俺チャンはその博打に勝ったけど……
「そういや、あれから司チャンはどうよ?」
「うん。……取り敢えず、下着泥棒の被害に遭ってた女子生徒を含めた複数人の生徒から謝られたよ。……後、担任の教師は懲戒解雇されたね……」
「……ま、当然っしょ!」
晩華高校は腐っていた。
多分、俺チャンが介入しなきゃ……司チャンは行く所まで行ってたっしょ……
「……ただ、ボクはもう晩華高校でやって行くのは無理だね。……あそこはもう、生徒も教師も信じられなくなってるのさ……」
「まあ……いくら司チャンが格好良く居たくても、あんな環境じゃそれも無理っしょ……」
「ふむ、何とも情けない事だが、ボクは転校する事にした。……真に信じられる友と教師の居る新天地に行こうと思っているんだ……」
「それが良いっしょ!……となると、今後はこうやって会うのも難しくなる感じ?」
「……どうだろうね……」
司チャンは、あやふやな答えを返して来た。
まあ、場所によっては、って感じか……
「……俺チャンはいつでもウェルカムっしょ!」
「ふふ、ありがたく受け取っておくよ。……それはそうと、まさか君が鬼不山高校で四天王とやらの座に就いてる強者だったなんて、思いもよらなかったな……」
「……喧嘩とは無縁の生徒達を纏めてたら、いつの間にか四天王の一角にされてただけっしょ!」
「……にしては、他の四天王との仲は良好そうだったね?」
「まあ、下手に突っついて敵対されても困るだけっしょ!」
「……そういう所が抜け目ないんだよね……」
結果的に他の四天王3人と良好な立ち位置に居るために、鬼不山高校で最も敵に回してはいけない男扱いされてる節はあるが……
……まあ、それで誰も突っかかって来ないから良いんだけどな……
「……というか、今回の件が王子戦争とか鬼不山高校で言われてて、割と気まずいっしょ……」
「え、あれって戦争と呼べるものだったかい?」
「60人のゴロツキ相手に戦ったり、影響がデカかったり、とにかく噂がえらい事になってる訳よ……」
「それは……ご愁傷様としか言えないね……」
この件はしばらく尾を引きそうだ。
……というか、王子戦争って何だよ……
「あ~もう、辛気臭い雰囲気は辞め辞め!……とりま、今日もゲーセン行くっしょ!」
「うん、晩華高校の扇羽 司として最後の挑戦を受けてくれるよね!」
「勿論、今日も本気で勝負するっしょ!」
「望むところさ!」
そうして俺チャン達は、今日も今日とてゲーセンで勝負をしまくった。
数十分後、とあるゲームの最中……
「……司チャン、ちょっとずつ上手くなってね?」
「ふむ、昔からボクは要領が良くてね。……大抵の事は何となく出来たのさ!」
「へぇ~、いやそれ凄くね!?」
司チャンは、意外と要領が良かった。
ま、そうでもないと"格好良い王子様"なんて出来ないんだろうが……
「……でも、今回みたいな事にはどうにも出来ないのが欠点でね。……だからこそ、正義君はボクにとっての英雄なのさ……」
「……司チャン、そんなネガティブな事は言わないで欲しいっしょ。……どうせなら、いっその事ナルシストくらいには尊大でも……」
「ふむ……前まではそれも難無く出来てたんだけど、元に戻すのには時間がかかりそうだね……」
「……ま、ファイトっしょ!」
俺チャンは、どこまでも司チャンの味方だ。
だからこそ、司チャンを"格好良い王子様"にするためなら心を鬼にだってするつもりで居る。
「……正義君はボクにとっての英雄で、ボクは正義君にとって"格好良い王子様"……お互いを高め合えそうな関係だね!」
「いや、俺チャン抜きで勝手に話を進めないで欲しいっしょ……」
……こんな会話をしながら、俺チャンと司チャンはゲーセンのゲームを楽しみ尽くした。
そして、数時間は遊んだ後……
「……結局、最後までボクでは勝てなかったね……」
「でも、最後の方は割とヒヤヒヤしたっしょ!」
「そうかい?……ありがたいね……」
「じゃ、そろそろ解散と行くっしょ!」
「うん、それではまた会おう。……ボクだけの英雄!」
「こっちこそっしょ。……俺チャンだけの"格好良い王子様"!」
こうして、俺チャン達は別れた。
少なくとも、俺チャンはまた会える日を願って……
でも……その日は思いの外すぐに来た……
数日後、鬼不山高校の教室にて……
「ハァ……やっぱ、少し寂しいっしょ……」
結局、あれから司チャンには会えてない……
「……司チャン、元気にしてると良いっしょ……」
ーガラガラガラ……
「お~い、全員席につけ~!……それと、いきなりのサプライズだが転校生だ!」
「え!?」
「マジ!?」
「この時期に!?」
「しかも女子だぞ~!」
「「「「「ウエェェェェェイ!」」」」」
教室は、担任から告げられた季節外れの転校生女子の話題で沸騰した。
……ほんと、全員単純だな……
「それじゃあ、入って来ると良い!」
「ああ、そうさせて貰おうか……」
ーガラガラガラ……
「……え?」
担任の言葉に続き教室に入って来た転校生女子は、白髪のボーイッシュヘアーが特徴的な……"格好良い王子様"という言葉が似合う人物で……
「……やあ、正義君。また会ったね!」
「つ、司チャン!?」
転校生は、司チャンだった。
いや、何で!?
「そう!正義君だけの"格好良い王子様"……いや、やはり万人からもキャーキャーは言われたいからこの挨拶は考え物かな……」
「な、ナルシストに戻ってるっしょ……」
「べ、別に良いじゃないか!……コホン……それより、どうしてここに、という顔だね?」
「と、当然っしょ!だって……」
「……正義君はボクを助けた。……なら、当然責任も取って貰わないとね……」
「せ、責任!?」
……司チャン、割かし大胆になってね!?
「……うん。今はまだ言わないけど、いずれ伝えたい事があるのさ。……だからそれまで、親友として一緒に居てくれないかい?」
「……勿論、良いに決まってるっしょ!」
他の生徒達を置いてけぼりにしながら、司チャンの言葉を承諾した俺チャン。
そうして俺チャン達2人はこの後も色んな事をしまくって行くんだけど……それはまた、別のお話……
ご読了ありがとうございます。
まあ、また気が向いたら2人の過去書くかもしれません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。