7.茜の秘密とナフリーの気持ち
……この休みはこの作品の更新に捧げます。
代わりに、平日からは更新が不定期になります。
(浅山 藤四郎視点)
「グ……グギャ……」
ードサッ……
「ふぅ……ご主人様~、倒しましたニャン!」
「ああ、ナフリー。ご苦労だったな。」
「いえいえですニャン。」
……ゴブリンキングとオークを倒してから元の世界で言うところの1週間後、俺達は相も変わらずゴブリン退治に精を出していた。
「ハァ~、相変わらず私は暇か~。」
「なら、茜だけ別行動すれば良いだろ?」
「それで魔王軍幹部とかの強敵でも出てきたら目も当てられないでしょ?……だから私がお兄ちゃんやナフリーちゃんと一緒に居るのは2人のためなの。」
「……そうかよ。」
茜は基本的に何もしていない。
俺がナフリーにバフをかけ、ナフリーがゴブリンを倒すのを見てるだけだ。
だが、その理由がナフリーじゃ倒せない敵が現れた時の事を考えてというものなので、何も言い返せねぇ。
「……それより、もう少し移動時間を有効活用したくない?」
「ああ、行きと帰りの静まり返った時間か……」
そう。この平野に来るための片道数時間の道のりは、誰も何も言わないため静まり返っていた。
だって、数時間歩きっぱなしで会話する余裕が全くねぇもん。
「まあ、余裕が無いのも分かるし、会話しようと思ってる訳じゃなくて……【補助全般】に瞬間移動とか空中浮遊とか無いの?」
「無いものは無い。……どうも、どっちも補助魔法じゃねぇみてぇだ。」
「あ~もう、それじゃあまた数時間の道のりか~。」
……茜は移動時間を有効活用……もとい短縮したかったらしいが、そんな便利な魔法は無かった。
いや、一応【高速移動】ってのは有ったが、消費体力は変わらない上に下手に人に当たったら悲惨な事になりかねないという嫌なオマケ付きらしかったので使うに使えねぇ。
「あ、ご主人様にアカネ様!袋に魔石詰め終わりましたニャン!」
「……何から何まですまんな。」
「いえいえ、こんなの朝飯前ですニャン!」
生意気な茜と違って、本当にナフリーは良い子だ。
よほど、親御さんの教育が良かったんだろうな。
いや、別にうちだって悪くはなかったが、両親揃って俺にも茜にも甘かったからな~。
それで茜のアレコレも受け入れてしまう辺り、本当に2人とも優しかった……もしかしたら2度と会えないかもしれねぇと思うと、胸が痛い。
「……人様……ご主……ご主人様!」
ービクッ!
「あ、すまん……」
「……どうして泣いてるいんですニャン?」
「え?……あ、本当だ……」
ああ、俺は泣いてたのか。
……まあ、そりゃそうか。
「お兄ちゃん、どうしたの!?」
「いや……父さんと母さんに2度と会えねぇのかと思ったら悲しくてな。」
「……どうしてこのタイミングで考えたのかは知らないけど、確かにそうだね……」
「え、あっ……お二人のご両親って、お亡くなりになってたんですニャン?」
「いや死んでねぇ……筈だ!少なくとも、最後に会った時は元気だった。」
「うん、元気過ぎたね~。」
どうも、ナフリーは"2度と会えねぇ"って部分で俺達の両親が死んでると思い込んじまったらしい。
「じゃあ、どうしてですニャン?」
「……生きてはいると思うんだが、現状だとどうやっても行けねぇ場所なんだ。」
「……もしかして、魔王城周辺ですニャン?」
「いや、下手したらそれより行くのが困難な場所だな。でも、魔王城周辺と違って魔物は居ねぇ安全……まあ比較的安全な場所だ。」
「そんな場所があるんですニャンね。……もし叶えば、いつかご主人様のご両親に会ってみたいですニャン。」
「ああ、出来れば良いな。……絶対に耳や尻尾をモフられるだろうがな。」
「……そ、そうですかニャン……」
……もし元の世界に帰れるなら、ナフリーを紹介するのも良いかもな。
あの2人なら絶対に秒で受け入れてモフるだろう。
「……思えば、碌な親孝行もしてやれなかったな。」
「……うん、そうだね。」
「結婚して嫁の顔を見せてやる事も、孫の顔を見せてやる事も出来なかった。……まあ、それらに関してはこっちに来なくても無理だった可能性の方が高いんだがな。」
「うん、私も……結婚は出来ないし、孫だって産めないけど……彼女の顔だけでも見せてあげたかったよ。」
「いや、茜に彼女なんて居なかっただろ?」
「お兄ちゃんこそ。」
俺達はお互いに相手が居なかった。
……まさか、それが異世界転移した時に少しばかりの救いになるなど露知らず……
……と、そんな俺と茜とは違い、ナフリーはまるで困惑した様な表情を浮かべていて……
「え、アカネ様……彼女って言いましたニャン!?」
「あ、そういえば言ってなかったな……」
「あ~うん、私も言ってなかったっけ……」
そうだ、ナフリーには誤魔化し続けてたな。
「……ナフリー、単刀直入に言うが……茜の恋愛対象は女性だ。」
「そういう事~。」
「……えぇぇぇぇ~!?ほ、本当ですかニャン!?」
まあ、ナフリーにとっては衝撃の事実だろう。
「だから言っただろ?……狼なのは男だけじゃねぇ、ってな。」
「そ、そういう意味だったんですニャン……」
「まあ、安心して。……ナフリーちゃんを襲うつもりは無いよ。」
「ほ、本当ですニャン?」
「そ~そ~。……ナフリーちゃんには、既に想い人が居るっぽいしね~。」
「えっ!?ナフリー、本当か!?」
「そ、そそそそそそそそんな訳ないじゃないですかニャン!」
「それ、本当の時のリアクションだぞ?」
何か、何気にショックなんだが……
いや、よく考えたら奴隷として買ってから俺か茜としか居ないよな?
まさかちょろっと会っただけの兼人か?それとも奴隷になる前に会ってた人物か?……まさかルルネンさんとか言わないよな?
……と、俺が不安になっていると……
「……す、好きというのはやはり違いますニャン。あくまでも、これはお慕いしているというだけですニャン……」
「えっと、誰をだ?」
「……ご主人様ですニャン。」
「……ん?」
何か今、ナフリーが滅茶苦茶俺に都合が良い事を言わなかったか?
「……ご主人様をお慕いしていますと言ったニャン。」
「そ、そうか……」
ま、まあお慕いレベルだったら別に良いよな。
ここで惚れたとか言われたら割と困ったが……
別に嫌じゃねぇし、何なら好みなんだが……下手に大事な人とか作ったら、後々元の世界に帰れる事になった時に別れを経験しなければならなくなるしな。
「……面白くないな~。ナフリーちゃんを私の恋人に出来ないなら、せめて2人の濃密な恋愛ドラマ見せて欲しかったのに~。」
「茜は黙ってろ!……まあ、慕うのは自由だから良いと思うぞ。」
「あ、ありがとうございますニャン!」
「……で、ナフリーちゃん。本当のところはどうなのかな?」
「茜……ナフリーも茜は基本的に無視しろな?」
「あ、はいですニャン……」
「いや、酷くない!?」
こうして俺達は会話を終え、魔石が入った袋を持って3人揃って帰路についた。
だが、これ以降ナフリーとの会話が少しぎこちなくなってしまったのは別の話である……
ご読了ありがとうございます。
ナフリーとの関係は、もう少し話をかけて進めたいです。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。