68.王子とチャラ男 希望
……異世界でもファンタジーでもハーレムでもない話が続いてますが、どうか読んでください……
(扇羽 司視点)
……また、今日も学校か……
……嫌だ……でも……行かなきゃ……格好良くない
「ハァ……いや、この溜め息も格好良くない……」
「お、そこに居るのは登校中の司チャンっしょ？」
「ん？……ああ、正義君か……」
……正義君は、こんなボクでも仲良くしてくれる……
しかも、ボクの汚名を無くしてくれるとも……
「……大丈夫っしょ？」
「うん、大丈夫だよ……って言っても、ボクの心はお見通しなんだろ？」
「まあ……辛いんなら、わざわざ学校に行かなくても良くね？」
「ううん。……ボクは常に格好良く居たいんだ……そのためなら、どれだけ酷い目に遭わされても……」
「そ、そんなの間違ってるっしょ！」
「何だい？……正義君もボクの信念を否定する気かい？」
……ボクは"格好良い王子様"に憧れたんだ。
そのためなら、どれだけ辛くても頑張らないと……
「その信念は否定しないっしょ。……でも、今の司チャンは楽しそうじゃないっしょ！」
「楽しそうじゃない？」
「楽しそうじゃないから、今の司チャンは常に悲壮感が漂ってる訳で……ぶっちゃけ格好良くないっしょ！」
「……はは、そうか……」
今のボクは格好良くない、か……
……そうかもね。
「……俺チャンは、司チャンの味方っしょ。……でも、司チャンに無理をさせたい訳じゃ……」
「いや、大丈夫さ……」
「それが駄目だって俺チャンは言って……」
「いいや……本当に大丈夫だよ。……でも、確かに格好良くはないか……」
「司チャン？」
無理をしても、格好良い訳じゃない……
なら……どこまでも泥臭く行こうじゃないか！
「正義君、多分義泥君は近い内に行動を起こす。……だから、いつでも動ける様にしておいてくれないかい？」
「え、それはつまり……」
「あ、いくら何でもまだ盗まれた下着は荷物に仕込まれないと思うよ。……少なくとも、それをされたらボクは警察に捕まって退学必至だ。……でも、それは義泥君からしたら都合が悪い。」
「確かに、それは司チャンが義泥とやらの手の届かない所に移される事を意味してるっしょ！」
「……だから、義泥君はその前に何かしらの行動を起こすと思うんだ。……正義君なら分かるよね？」
「……考えたくはないけど、何となく分かるっしょ……」
この手の下衆が考える事は、何となく分かる。
……となれば、この後に義泥君がやる事は……
「……じゃあ、頼むね？」
「司チャン……必ず、司チャンの事は俺チャンが守るっしょ！」
「本当に君は……見た目に反して熱いね……」
「……俺チャンは、当然の事をしてるまでっしょ……」
ああ、正義君にとってはそうなんだろうね。
でも、ボクは……
「じゃあ、また放課後に会おうね？」
「そうするっしょ！」
こうして、ボクは司チャンと別れた。
でもまさか……あんなすぐ、義泥君が行動を起こすなんて思いもしていなかった……
数時間後……
「お～いおいおい、変態王子サマ～？」
「ん？……何だい、義泥君？」
「放課後、誰にも言わずにこの場所に来やがれやァ。……キャハハハハ！」
「……ハァ、早速行動してきたか……」
教室に人が少ない時間帯を狙って、義泥君はボクにとある場所を書いたメモを渡して来た。
「おっと、誰かに助けを求めても無駄だぜ？……この学校の奴等は、俺には逆らわねぇ……」
「ふむ……」
確かに皆、見て見ぬフリをしている。
流石に義泥君が犯人とは思ってないんだろうけど、ボクを助ける気もなさそうだ。
「家族に助けを求めるのも駄目だぜ？……もし家族が介入なんてして来たら、親父に頼んで家族の職を失わせるからなァ。……キャハハハハ！」
「……分かったよ。……家族にも、この晩華高校の生徒にも助けは求めないよ……」
「それで良い。……じゃあ、ちゃんと来いよォ！キャハハハハ！」
家族には助けを求められない。
晩華高校の生徒に味方は居ない。
でも……ボクにだって、頼れる味方は居るんだよ！
更に数時間後、メモにあった場所に来たボクは……
「ハァ……人気のない場所か……となると、次に来るのは……」
ーブゥゥゥ～ン！……キキィィィィ！……ガチャ！
「おい、あの男みてぇな女だ！拐え！」
「「「「「へい！」」」」」
……ふむ、今時珍しいまでの構図だね……
目出し帽を被った複数人の男で誘拐……
まさか、本当にする奴が居るとは……
「……にしても、本当に助けを求めぇとはな！」
「義泥さんの言う通りだったな！」
「ほら、さっさと来い！」
……多分、事前に助けを求めてたりしても無駄だったのだろう。
警察は起こってもいない事には対応出来ない。
この後に誘拐されるとか言っても、イタズラにしか聞こえないだろうし……仮にこいつ等が捕まっても、口を割らずに大蔵山家から圧力がかかって釈放って流れになるだけだ。
「……大人しく従うよ。……それとも、君達はボクに乱暴をするのかい？」
「いや、義泥さんからはなるべく無傷で連れて来いと言われてる。……何でも、自分の手で傷付けたいんだとよ。」
「へぇ～……」
この会話を最後にボクは頭に袋を被せられ、視界を失った。
でも、きっと正義君なら……
そう思いながら、ボクは車に揺られたのだった……
そして数十分後……
ーバサッ！
「……やあ、義泥君。……誘拐なんて思い切ったね？」
「いつまでもお前が屈しねぇからなァ。……にしても、まだ自分が助かるとでも思ってんのかァ？」
「……人数、多いね？」
「まあ、この辺のゴロツキをかき集めたからなァ！ざっと60人は居るぜ？」
「いや、集め過ぎでしょ……」
「だ、黙れ！……声かけたゴロツキのグループが思った以上に大所帯だったんだよォ！」
「そ、そうさね！……ったく同じ女としちゃあ、これからお前が受ける苦しみには同情すんよ。……ま、実際は今から笑みが浮かんじまってるがな！」
いくら何でも、60人のゴロツキは集め過ぎだ。
義泥君は、何処かのグループとでも喧嘩するつもりだったのかい？
後、義泥君の彼女らしき娘も義泥君の隣に居たけど……見た目は良いのに性格が終わっていた。
「ここは……何処かの廃工場かい？……62……いや、ボクを入れて63人になるのに、まだかなりスペースが余ってるね……」
「あ～、ここは親父が買い上げた廃工場でなァ。都合が悪いことすんのに持ってこいなんだよォ！キャハハハハ！」
「そうかい。……なら、これから起こる事は誰にもバレない訳か……勿論、警察にも？」
「そうだぜ？……まあ、そういう訳だ。大人しくこいつ等に好き勝手されて、女としての絶望を味わい尽くして貰おうかァ！キャハハハハ！」
……なるほど、この60人のゴロツキの役目はそういう事で合ってた訳か……
ボクを複数人で犯す……それこそ、死にたくなる程の絶望だね……
でも……
ーブゥンブゥンブゥゥゥゥゥン！
「あァ？……お前等、まだ仲間呼んでたのかァ？」
「いや、これで全員の筈……」
「じゃあ何だって……」
突然外から鳴った何台かのバイクのエンジン音に、義泥君達は訳も分からず首を傾げる。
……信じていた助けが、意外と早く来た。
「ふむ……義泥君、君は話し過ぎたんだ……お陰で、助けが間に合った……」
「なっ、家族には話すなって……」
「いいや、家族じゃないよ。……そして、権力にも媚びない者達さ……」
ーガラガラガラ！
廃工場の扉が、勢い良く開け放たれた。
そして、そこには……正義君を先頭に、大量の不良達が並んでいた。
「よぉよぉ、よくも俺チャンの友達を誘拐してくれたっしょね……」
「な、お前等は誰だァ！」
「金村 正義……それが司チャンの友達で、今からお前達をぶっ潰す男の名前っしょ！」
狼狽する義泥君に対し、啖呵を切る正義君。
こうして、ボクを騒動の中心にした王子戦争が幕を開けたのだった……
ご読了ありがとうございます。
司と正義の過去、なかなか終わらず申し訳ございません……
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。
