66.王子とチャラ男 遭遇
遂に、司と正義の過去が明らかに!
(金村 正義視点)
「ほんと、藤四郎チャンはやけに色んな女性からモテるっしょ……」
「ふむ、ボクも1周回って見るのが楽しくなって来たよ。」
藤四郎チャンは、また新しい女性から好意を寄せられていた。
ま、エルリスさんを新しい女性に入れても良いかは分からないけど……
……って、また脳内思考が素に戻ったっしょ。
「……例え脳内でも、いつもの口調は崩さないようにしないといけないっしょ……じゃないと、いつポロッと出しかねないか……」
「……正義君、そこまでする位なら普通に素の話し方をしたらどうだい?」
「いや、俺チャンはこうじゃないと気が済まないっしょ!」
「でも、だいぶ話し方不自然だけどね?」
「そこはご愛敬で頼むっしょ!」
俺チャン、素の話し方よりこの見た目に合った話し方の方が好きっしょ。
もっとも、チャラ男の語彙なんて知らないから言葉遣いが破綻しまくってる訳だけど……
……って、言った側から!
「まあどんな話し方であれ、正義君がボクを救ってくれた英雄である事には変わりないけどね?」
「……いや、司チャンが濡れ衣を着せられる前に知り合えてたら、司チャンが孤立する事もなかった訳で……」
「そんなの、結果論以前に机上の空論でしかない。……君は、確かにボクを救ってくれたんだから……」
「わ、分かったっしょ。……司チャンがそこまで言うならそういう事にしてあげるっしょ。」
「ふむ、それで良いんだよ。」
……思えば、司チャンと知り合ってからまだ1年弱しか経っていないっしょ……
こんな機会だし、ちょっと思い出してみるっしょ!
あれは1年前になるかならないかの頃だったか……
「お、近頃噂の"王子様"チャンじゃね?」
「……誰だい?このボクに話しかけるのは……」
俺チャンは、偶然見かけた司チャンに初対面とは思えない話しかけ方をしたっしょ。
「俺チャン?俺チャンは金村 正義!キラキラネームなのはご愛敬っしょ!」
「……癖が強いね。」
「"王子様"チャンにだけは言われたくないっしょ!」
俺チャンは司チャンの事を、噂程度に聞いていた。
下着泥棒をした晩華高校の同性愛者……
……そんな噂だった。
でも……
「……君も、ボクを罵るのかい?」
「……いや、そんな事はしないっしょ……」
……司チャンを見て、噂は嘘だとすぐに気付いた。
それ程までに、司チャンから悪意は感じなかった。
俺チャンは普通、何かしらの悪事をする人間から少なからず悪意を感じていた。
だけど、司チャンは悪意が全くなかった……
「ふふふ、ボクも落ちぶれたものだね……で、何の用だい?」
「いや、偶然見かけたから確かめただけっしょ……」
「初対面でかい?……ボクとしても最初はいかがわしい事をするつもりかと疑ったけど……今はそんな風にも見えないし、正義君が何をしたいのか分からないな……」
「ん?……じゃ、とりまゲーセンでも行くっしょ!」
「いや、何で?」
こういうのは、相手に有無を言わせない間に話を進めるのが良い訳よ。
俺チャンをただのチャラ男とは思わない事っしょ!
「まあ、良いから良いからっしょ!」
「う、うぅ……」
司チャンが精神的に参ってたのも相まって、俺チャンはあっさり司チャンを俺チャンの独断場に引き摺り込む事に成功した。
数分後……
「ほらほら司チャン、右の守りが甘いっしょ!」
ーダダダダダ……
「ふふ、かかったね!」
ーダダダダダ……
「それも想定内な訳よ!」
ーダダダダダ……
「なっ!?」
ーダダダダダ……
俺チャンと司チャンは、ゲーセンで対戦型ガンシューティングゲームをしていた。
……戦績は言わずもがな、俺チャンの全勝利だった。
「……何か、ごめんっしょ……」
「いや、気にしていない。……どうせボクは、負け犬がお似合いなのさ……」
あ、これ駄目なスイッチ入れちゃった感じ……
「いいや、違うっしょ!……司チャンが無罪なのは、見れば分かるっしょ!」
「でも、誰も信じてはくれない……」
「俺チャンが信じるっしょ!……いや、信じるだけじゃなくて、その汚名も綺麗さっぱり無くすっしょ!」
「……本気かい?」
司チャンは半信半疑だった。
まあ、この反応は想定内。
「ま、俺チャンを信じなくても良いっしょ。……あくまでも、俺チャンが勝手にやるだけだから……」
「……胡散臭いけど、まあそういう事なら……」
そうして俺チャンは司チャンを納得させた。
……そして、ここからが反撃の時間だった……
翌日、俺チャンが通ってた鬼不山高校にて……
「……正義の兄貴、例の"王子"に会ったんですか!?」
「ん?……まあ、会ったっしょ……」
「ど、どうでしたか?」
「……白だったっしょ……」
「やはり、ですかい……」
……こっちの世界で俺チャンを慕ってた舎弟?相手に司チャンに会った事を報告すると、そいつも無罪は察してたらしく納得の反応を見せた。
「……とりま、この件は俺チャン1人でどうにかするっしょ。……じゃないと、司チャンに会わせる顔が……」
「分かってますぜ。……今回、俺達は正義の兄貴から指示が下るまで動きやせん。……指示を下さらないならそれで良し、指示が下れば即座に結果を出しますぜ!」
「……なら、その方向で頼むっしょ!」
「へい!……"コマンダー正義"チーム、全員に報告しときますぜ!」
ータタタタタ……
「……スマホで連絡してるとこ悪いけど、普通にチーム名ダサいっしょ……」
当時、この鬼不山高校は不良漫画の舞台みたいな事になっていた。
当然、その不良を束ねる四天王的立ち位置の奴等も居て、何故か俺チャンもその1人に数えられていた。
「剛腕の津山、俊敏の丸川、耐久の杉森と並んで頭脳の金村って呼ばれてるんですから、当然チーム名はコマンダーが良いかと思ったんですがねぇ……」
「だからダサいし、そもそも俺チャンは不良じゃないっしょ!」
何で俺チャンが不良呼ばわりされてるのか……
あくまでも俺チャンの見た目は"チャラ男"でしかない筈なのに……
「よく言いますぜ。……津山、丸川、杉森の3人を相手に上手く立ち回って、完全中立の第4勢力を立ち上げておきながら……」
「そりゃ、この鬼不山高校は別に不良だけの高校じゃないからっしょ!……普通に女子生徒も居るし、不良とは縁のない真面目な生徒や弱い生徒だって……」
「それでこの勢力図を完成させた事が凄いんですって。何せ、他の3つの勢力がこのチームだけを攻撃しないなんて本来ならあり得ないんですぜ?」
「それは分かってるっしょ……」
ただ、不良や喧嘩と無関係な生徒を守りたかった。
それだけなのに、まさかこんな事になるとは……
「……で、話を戻しやすが、早速情報が上がって来ましたぜ?」
「いや、俺チャンは動くなって……」
「それが、どうもチームメンバーの中に下着泥棒事件の被害者の姉の友人の弟の家庭教師の妹の……とまあ、繋がりがある者が居たらしく……」
「いやいや、そこまで行ったらもう他人っしょ!」
逆に、その遠さでよく情報が集まったもんだ……
「……どうも、被害者は本気で"王子"が犯人だと思い込んでるみたいなんですぜ……」
「……つまり、被害者も本当に被害者で……しかも、犯人でも何でもない司チャンを犯人だと思い込まされてるって訳か……」
ーピキピキピキ……
「あ、あの……正義の兄貴?」
「……司チャンだけじゃなくて、その被害者も騙してるとしたら……本気で胸糞悪い話っしょ!」
……犯人、マジで許せねぇ……
「あ~……じゃあ、俺達は待機してるんで、いつでも頼ってくだせぇ!」
「……そうさせて貰うっしょ……」
その後、俺チャンは本格的に犯人捜しを始めた。
そして……これが後に王子戦争と呼ばれる事件に発展するのだが、この時の俺チャンは全く予想だにしていなかった……
ご読了ありがとうございます。
なお、鬼不山高校の不良四天王に関しては、別に深掘りする気はございません!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。