64.思い出と冥界勝負
今、かなり筆が乗ってます!
(浅山 藤四郎視点)
「……まあ、どういう経緯でパーティーを結成したかは分かった。……で、次は何の話をするんだ?」
俺達は、尚もエルリスさんの話に耳を傾ける。
「う~ん、せやな~……」
恐らく、思い出は無限……とまではいかなくとも、かなりあるのだろう。
エルリスさんは、思い出を取捨選択するために黙り込んでしまった。
「べ、別に無理して出さなくても良いんだが……」
「いや、思い出は出て来るんよ?……例えば、道中立ち寄った街でメサイアはんが変な鳴き声出す鳥の玩具買った事があってな?」
「あ、そういう玩具こっちの世界にもあるんだな……」
「当然ウチは無駄遣いすんなって怒ったんやけど、ミツエはんはその鳴き声がツボやったらしくて爆笑し始めて、反対にタイガーラはんはすぐに他人のフリし始めて……ホンマに訳分からん状況になっとったっけ……」
「混沌な状況だな……」
何か、想像したら吹き出しそうな光景だな……
「他には……4人で魔物を討伐しとった時に、何やかんやあってウチとメサイアはんが媚薬成分を出す魔物に襲われた事あってな?けど、その間に何があったかミツエはんもタイガーラはんも教えてくれへんくて、メサイアはんと一緒に首傾げたって思い出?もあるけど……」
「……ちなみに、2人は何か言ってたか?」
「ん?……いや、考えたくなかったから無視しようとしてた言葉があるんやけど……『2人とも、本当に仲が良いでありんすね……』……って、ミツエはんが言ってたんやけど……」
「……つまり、そういう事だろ……」
「……やっぱり、そうなんかな~……」
……媚薬成分を浴びたエルリスさんとメサイアさんが何をしたかは……まあ、考えないようにしよ……
「ちなみにエルリスさんはノーマル?それともレズビアン?どっち!?」
「おい茜ぇぇぇぇぇぇぇ!?」
俺は出来る限りスルーしようと思ってたのに、茜が変な所を深掘りしようとしてやがる!
「……何を想像してその結果に行き着いたんかは考えたくないんやけど、ウチもメサイアはんも間違いなく異性愛者やよ……」
「ふ~ん……つまり脈なしか~……」
「おい、茜はシトラ一筋なんじゃ……」
「いやいや、私だってお兄ちゃんみたくハーレム築きたいに決まってるでしょ!」
「……マジかよ……」
茜、お前ハーレム築きたいのか……
「ちなみに、今私が惚れてる相手はシトラちゃんに加えて、ラビリンスが幽閉してる名前も知らない妖精ちゃんも居るんだけど……」
「……初耳だが?」
「言ってなかったからね。……ちなみに、姿はラビリンス分身体のモデルにもなってるらしいから美人だし、ラビリンスと違って性格も優しいらしくて……」
「分かった分かった……ただ、取り敢えず茜のハーレム計画にエルリスさんを巻き込むな!」
茜、もう完全に本性を隠さなくなって来たな……
「あ、今思い出したんやけど……昔、メサイアはんの好みのタイプ聞いた事あってな?」
「ん?エルリスさん、何のはな……」
「その特徴、トウシロウはんがドンピシャで当てはまってるんよ~。」
「……いや、マジで何の話だ!?」
メサイアさんが好きなタイプが、俺そのもの……
……だから何だって話なんだが……
「ん~?てっきりトウシロウはん、もっとあたふたするかと思たんやけど?」
「生憎、今生きてる相手だったらそっち方面に動揺しただろうが、そのメサイアさんはもうお亡くなりになってる故人なんだろ?……だったら、別に気にする必要もねぇし……」
それこそ、エルリスさんのタイプが俺とか言われたらマジでヤバかった。
だが、メサイアさんは今は亡き故人だ。
動揺なんて、する要素がないのだ。
「お兄ちゃん、それ完全にフラグっぽいんだけど……」
「そうは言うが、そのフラグはどう回収されるんだ?……それこそ、幽霊か死者蘇生ぐれぇしか……異世界だと割とあり得そうなのが困るな……」
「……多分、ウチもないとは思うとるけど……メサイアはんの最期の言葉が"いずれ黄泉の国から戻って来る"とかいうもんやったしな……」
「ま、マジかよ……」
このフラグ、回収されないよな?
そんな事を考えながら、俺はエルリスさんの話を聞き続けたのだった……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(??視点)
「ぐ、ぐぬぬ……」
「……どうしたガルか?」
「現世でエルリスが好き勝手言ってたのじゃ!いやまあ、確かにタイプではあるし、ぶっちゃけ現世行けたらお付き合いしたいのじゃが……」
「いや、だから何の話ガルか?」
むぅ、タイガーラは察しが悪くて困るのじゃ……
……とはいえ、改めてここも便利じゃの~。
何せ、望んだ現世の人物1人を中心とした光景を見れる上に、姿は全盛期の20代のままなのじゃから。
「もっとも、1人決めたらその人物の周囲しか見れなくなるのは考えものじゃがのう……」
「……1人で延々と何言ってるガルか?」
「エルリスが妾のタイプど真ん中の男に対して、妾のタイプに当てはまってるとバラシよったのじゃ!」
「……そりゃまあ、エルリスの中でお前は既に死んだ奴扱いだからガルな……」
そ、そりゃそうなのじゃが……死者にもプライバシーはあるのじゃ!
……よく考えたら、現在進行形でエルリスのプライバシー侵害しとる妾が言えた立場じゃなかったのじゃ……
と、そこへ……
「カ~タカタカタカタカタ……さあ、今日も現世へ行くチャンスのお時間でヤンスよ~!」
「お、待ってましたのじゃ!」
「……俺は興味ねぇガルが、メサイアを現世に送り出すために今日もやってやるガル!」
現れた死神が言った"現世へ行くチャンス"。
かつて冥界に来たばかりの妾がこの死神相手に現世に戻るのを頼みに頼んだ結果、妾とタイガーラの2人でこの死神を倒せたらどちらか片方が現世にゴーストとして舞い戻れる権利を得られるという条件で承諾されたのじゃ。
もっとも、死んでから10年も戦っておって未だに勝てておらんのじゃが……
後、タイガーラは妾が巻き込んだだけで本当なら勝負する必要ないんじゃが……
……まあ良いじゃろ!
「さ~て、今日こそあっしに勝てるのか!?……10年もあっしと戦って未だに勝ちを諦めないのは凄いでヤンスね~!」
「……確かに、10年で何千回と負けてるけど……それでも、妾には現世に置いてきた悪友が居るのじゃ!」
「……俺は現世に戻るつもりはねぇガル。そもそも、俺の武器は今や俺の子孫が使ってやがるし、そもそもエルリスの仲間でしかなかった俺よりも悪友のメサイアの方がエルリスに会うべきだガル!」
「まあ、もしこの冥界にミツエが居れば違ったんじゃが……やはり、異世界人の魂はこの冥界には来ないようじゃな……」
「……あっしと戦う度に同じ事を言ってるでヤンスね。ま、今回もこてんぱんにしてやるでヤンスよ!」
「ふん、今日という今日こそ負けんのじゃ!」
「俺もだガルァ!」
……そうして、妾とタイガーラは死神に何千回目かの勝負を挑んだのじゃ。
一応、この勝負においては死神の攻撃で妾達が消滅する事はないのじゃが……それでも勝てぬのじゃ……
じゃが、妾は諦めんのじゃ!
「ガルァガルァガルァガルァガルァガルァガルァ!」
ーバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシ!
「う~ん、これは圧され気味でヤンスね~……」
「妾も行くのじゃ!……【光の矢】じゃ!」
ーヒュンヒュンヒュン!
タイガーラの拳による連続攻撃と、妾の光魔法……
この攻撃なら、なんて考えは駄目なのじゃ。
「ふむ、まあまあでヤンスね……」
ースパッ!
「ガルァ!?」
「のじゃ!?」
……やはり、こうなったのじゃ。
妾達が気付いた時には、死神の大鎌で上半身と下半身が真っぷたつにされておった……
「い、いくら死なねぇとはいえ……変な気分だガル……」
「は、早く再生させるのじゃ……」
この冥界では、魂は切り刻まれても再生可能……なのは分かってるとはいえ、やはり気分が悪くなるのじゃ。
「これで今日のチャンスは終わりでヤンス!」
ーフッ……
「く、悔しいのじゃぁぁぁぁ!」
「……ま、気長にやるガル……」
こうして、今回も妾達が負けたのじゃ。
じゃが、いつか絶対にエルリスと再会してやると心に誓うのじゃった……
ご読了ありがとうございます。
冥界で現世戻りを賭けた勝負をしているメサイアが、この先どう関わるか……楽しみにしていてください。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。