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63.先代勇者物語 結成

先代勇者は何人か居ましたが、その内魔王を倒せたのはミツエのパーティーのみでした。

(エルリス・フルウィール視点)


「んんっ……」


ーパチリ……


「……やっぱ夢かいな……」


ウチが目覚めると、そこは馬車内部にあるウチの部屋やった。


「何で今更……いや、メサイアはんの墓参りが近い訳やし、夢に見てもおかしないか~……」


……メサイアはん、やっぱ黄泉の国から帰って来るなんて無理やったんやろな……


「……って、ウチは本気にしとらんちゅうに……」


あかん、涙が出てくるわ……


親友、仲間、そして悪友……


……ウチの人生、得ては喪っての連続やん……


「……あ~もう馬鹿らし。……朝飯でも食べよか……」


そんなこんなでウチは部屋を出た。


……溢れる涙を拭いながら……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(浅山 藤四郎視点)


タルコスを発ってから数日後……


「トウシロウはん、おはようさん。」


「あ、エルリスさんか……」


エルリスさんが起きて大広間に来た。


……ただ、他の皆は部屋に籠ってるのでエルリスさんと2人っきりになってるが……


「ん?……何や気まずそうやな?」


「だって、この組み合わせだぞ?……あんまり絡みねぇだろ……」


「まあ、そうやな~。」


……ここは1つ、話の種を考えよう。


……。


…………。


……………………。


「……な、なあエルリスさん……」


「どないしたん?そんな改まって……」


「あ~……そういやこの馬車って、都市の外で夜を越す時ってどうしてたんだっけ?」


「ハァ?何を今更な事を聞いてんねん。……この馬車には停止中に結界を任意で張る機能が付いてるんやよ。」


「あ、そうなんだな……」


「逆に、何で今更聞いたんや?」


「は、話の種になるかと思って……」


基本、夜営は寝ずの番が必要になるのだが、この馬車は小規模な結界が張られるらしいので全員中で寝ているのだ。


……なお、俺はその状況に全く違和感を感じてなかったのは誰にも言えねぇ。


だが、話の種になるかと思っていざ言ってみたのだが……やはり駄目だったか……


「……ハァ、話の種ならウチが言ったるわ……」


「何かすまん……って、そういやエルリスさん……いや、何でもねぇ……」


エルリスさんの目元をよく見ると、何故か涙を拭った跡が有った。


……あのエルリスさんが泣くって、よほどの事なんだろうな……


「……涙の跡、気付いてもうたか?」


「ひぃっ!?」


「いや、食ったりせんから安心しよし……ちょっと、昔の夢見てもうたんや……」


「昔の夢?」


「……先代勇者パーティーの皆と旅した夢や……」


「あっ……」


エルリスさんが語った夢の内容は、かつて先代勇者パーティーのメンバーと旅をした時の光景だったらしい。


そして、それを語るエルリスさんの表情はどこか寂しげで、悲しそうだった。


「まあ、もうちょい気楽に聞いてくれたらええで。……ついでに言うと、他の皆にも聞いて欲しいから呼んで来てくれへんか?」


「いや、何で……」


「何回も話すんは辛いやん?」


「……分かった分かった、呼んで来るよ……」


そうして俺は、他の皆を呼ぶために部屋を回る事になるのだった……



そして数分後……


「ご主人様、何の御用ですニャンか?」


「トウシロウ、いきなり呼んで何ですの?」


「トウシロウ殿、どういった用件ですかな?」


「お兄ちゃん、何の用~?」


「藤四郎さん、何なんですか?」


「藤四郎君、ボクに何の用だい?」


「藤四郎チャン、何の用件っしょ?」


……ナフリー、メアリー、ロウルさん、茜、兼人、司、正義(ジャスティス)の7人を呼び出した俺は、全員から何の用件だと言われていた。


「いや、エルリスさんが過去話したいらしくて……」


「……そんな言い方せぇへんでも……まあええわ。まずこれ見てくれへん?」


ーカチャ……


「これは……ロケットペンダントか?」


エルリスさんが取り出したのは、写真を入れるタイプのロケットペンダントだった。


「僕が調べた情報によるとこの世界、数百年前から魔法を使った写真撮影の技術があるらしいですからね。こういうのがあってもおかしくありませんよ。」


「あ、兼人……解説ありがとう……」


「……で、その写真なんやけどな?」


ーパカッ……


「これが……先代勇者パーティーか……」


エルリスさんのロケットペンダントに入っていた写真には、4人の人物が写っていた。


1人は言わずもがなエルリスさん。


1人は青紫色の長髪が特徴的な修道女(シスター)


1人は屈強な虎獣人の戦士らしき男性。


そして最後の1人は……黒の長髪と髪の毛を束ねる豪華絢爛な(かんざし)が特徴的な女性だった。


修道女(シスター)がメサイアはん、虎獣人の戦士がタイガーラはん、そんで黒髪の女性が……ミツエはんや……」


「そ、そうなのか……」


やはりと言うべきか、ミツエさんは日本人顔だった。


「……この4人で旅して、先代魔王の堕天魔王 サタゴーラを討ち倒したんやで。」


「でも、確かその戦いでミツエさんは……」


「死んでもうたよ。……後、今から40年前にタイガーラはんも80歳で病死したし、今から10年前にはメサイアはんも110歳で大往生したわ……」


「……エルリスさんだけが残っちゃったんだね……」


エルリスさんの言葉に、茜がそう返す。


……というか、メサイアさん長生き過ぎねぇか?


「なあ、エルリスさん。……メサイアさんって本当に人間か?」


「人間やけど?」


「……だとしたら、長生きし過ぎだろ。」


「やっぱり、人間はこれで長生きなんやな……」


……長命のエルフ故の苦悩、ってやつか……


まあ、エルリスさんは後百年以上生きそうだしな……


「……で、エルリスさんは何を話したかったんだ?」


「せやな~。……まずはミツエはんとの出会いから語らせてくれへんか?」


「ああ、良いが……」


ミツエさんとの出会いか……これ、長くなる感じか?


「あれはそう、金貸しもやっとった頃のウチからかなりの大金を借りといて、元金どころか利息分すら返せんかった債務者を借金奴隷にしようと思てた時や……」


「何処の世界にもそういう奴が居るんだな……」


いきなり強烈なエピソードだな……


……というか、金貸しもやってたのか……


「で、どうなったの?」


「ん?そこにタイミング良くミツエはんとタイガーラはんが来たんよ。……あ、タイガーラはんはそのちょいと前にミツエはんが金で雇ってた冒険者らしいんやけど、詳しい経緯はウチもよう知らへんわ。」


「そこはサラッと流すんだな……」


タイガーラさん、何か扱いが不憫だな……


「……で、ミツエはんは自分が魔王討伐の旅に出るにあたって、仲間になれそうな人材を探しとった訳や。」


「あ、それでエルリスさんを勧誘しに来たって事?」


「アカネはん、ちょいと惜しいわ~。……最初に勧誘を受けたんは、ウチに搾られとった債務者の方やよ。」


「え、何で!?」


「見た目やな。……分かりやすく聖職者(・・・)()()()()()()()から、僧侶ポジションに置こう思たんやろ。」


「ん?それってつまり……」


何か、点と点が繋がっていくんだが……


「そうやよ。……そのウチに搾られとった債務者が、メサイアはんやったんや……」


「いや、マジかよ……」


「何でも聖都 ラフロンスから出て来たはええけど、金が無かったらしくてな?……結果、後先考えずに金借りまくって借金奴隷寸前になっとったらしいわ。」


「……ああ、そう……」


メサイアさん、第一印象最悪なんだが?


「……とまあ、そんな感じでメサイアはんの借金は山程あったんやけど、全額ミツエはんが肩代わりして事なきを得たっけな……」


「いやいや、よく払えたよな……」


「一応、王家から軍資金は出てたからな。……とはいえ、ウチも少し申し訳なくなってしもてな?……ミツエはんの旅に同行する事にしたんよ……」


「……要は金で雇った戦士と、借金奴隷寸前だった女僧侶と、罪悪感を感じた商人魔術師って訳だろ?……ミツエさん、もう少し何とかならなかったのか?」


「ウチも未だにそう思っとるよ……」


こうして俺達は先代勇者の1人、ミツエさんのパーティー結成秘話を聞かされたのだが……


……ぶっちゃけ、知らない方が良かったと思う事になったのだった……

ご読了ありがとうございます。


ミツエパーティーを端的に言うと、天然の勇者、脳筋の雇われ冒険者、散財癖のある元債務者、しっかり者の元債権者という、何とも言えない面子となっています。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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